巡 カラパレ
窓から入り込んだ春風が、机の上に据え置きにされていた一冊のノートを無造作に捲り上げる。パラパラと紙がよじれるようなその音に、一人食後のティータイムを楽しんでいた斎樹巡は顔を上げた。視線の先には、弱まった風に弄ばれるページが天に向かって揺れている。
(あれは……たしか、あの人が大事にしていた)
学生時代、執務室でたびたび目にしたことがある。戦略を練るためのノートなら参考程度に見せてほしいと頼んだものの、これは自分の手記だから、と断られたことは記憶に古くない。
実際に彼女がノートを携えていたのは一、二回ほどしか見ていないから、仕事関係のものではないと言われて納得はした。だが時折楽しそうに見返しているのは同棲し始めてから知った事実であるので、“彼女の大切なもの”。ぼんやりとだが、斎樹はあのノートのことをそう認識していた。
「……折れないように仕舞っておくか」
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