同居の提案
結婚してもアリーチェの生活はそんなに変わらなかった。
本人たっての希望でアリーチェの苗字にスクアーロが追加されたが、仕事上ではこれまでの名前を名乗り、いつも通りに観光案内をしていた。
プライベートでもスクアーロと会う時間は一気に増えたが、一緒に住んでいる訳ではないため、人と会う約束の割合が変わったという感じだ。
それからスクアーロと会った時に性行為があることぐらいだろうか。
基本的に2人はスキンシップこそ増えたものの、距離感は高校の時とさほど変わらなかった。
「ええー!?アリーチェ、彼と一緒に住んでないの!?」
口に手を当てショックを受けた様子なのはアリーチェの親友のブルニルダだ。
アリーチェはそんな彼女の様子に困ったように笑う。
「うん、色々あってね。」
「何で?アリーチェは平気なの?」
「うん、平気。会った時は凄く大事にしてくれるもん。急な結婚だったし、お互いの職場に通いやすくて住みやすい物件がなかなか見つからないだけだし。」
実のところ、後者は嘘というか、友人に使っている常套句だった。
アリーチェとスクアーロは契約結婚だったため、2人共敢えて一緒に住む理由がなかったのだ。
お互いに職場までが遠くなるより、時間を抽出してたまに会う方が良いのではないかと考えていた。
「まあ、確かにしばらく男の気配が全くなかったアリーチェが急に結婚したもんだから、私も驚いたよ?」
「あははは、3人連続ダメ男続きで恋愛に疲れちゃったからね。」
アリーチェは遠い目で言う。
実際、その3人はアリーチェを愛したミルコがアリーチェと別れるようにけしかけたものではあるが、実際そういう性質を持っていたのだとアリーチェは改めて結論付けていた。
それにアリーチェにも悪い所があった。
寛容に何でも受け止める態度もそうだが、実際相手を大切にしているつもりはあっても恋愛感情がないことを隠して、相手に合わせて愛の言葉を囁いていた。
相手に嘘を見抜かれ不安がられても仕方のないことをしていた。
だからこそスクアーロとは夫婦だが友人という関係を崩す気がなかった。
お互い一線を引いた方が上手くやれると思ったのだ。
「アリーチェ、未だに旦那紹介してくれないけど、本当に大丈夫な人?本当にダメ男じゃない?」
アリーチェのローマでの恋愛遍歴を知っているブルニルダは何かと飲む度にこれを聞いてくる。
アリーチェはいつものやり取りにちょっとだけ呆れつつも、いつも心配してくれる友人に感謝を覚える。
「大丈夫だよ、ブルニルダ。いつも心配してくれてありがとう。私は素敵な親友を持ったよ。」
「あー、またそうやって誤魔化してー!」
「誤魔化してないって。うちの旦那は本当に忙しいんだから。今も2週間の中期の仕事でイタリアにいないし。」
「そうなの?」
「まあ、だから一緒に住むのもなぁなぁになっちゃうのよね。」
「だとしても結婚して3ヶ月経ってるのよ?別居が長ければ離婚条件成立しちゃうよ?」
「しないってば。離婚のハードルどんだけ高いと思ってるの?それにこういうのは当人達の意志が大事じゃない。」
「そうだけど…………なんか前の男達の時もそうだけど、なんかアリーチェって恋愛に必死にならない所が凄く危うく見えるのよ。」
「そう?そんなことはないと思うけれど……」
「そんなことあるわよ!旦那が浮気しないかとか、心配じゃないわけ!?」
「え、全然。そういうタイプじゃないもん、私の旦那様は。」
「だからそういうところだってば!まだこれが私の旦那は凄く私を愛してくれるから〜なら安心できるのに、相手の性格頼みで自信満々ってどういうこと!?彼のことを凄く信頼してるのは伝わってくるんだけどさ、アリーチェも旦那もお互いを愛してるのかが全然伝わってこないのよ!」
「そう?私は彼のことを愛してるけどなぁ。」
友人として、という注釈がつくが。
しかしまあ、本当によくパーソナルスペースに切り込んでくるし、鋭い友人である。
だからこその親友だが。
「とにかく、彼の都合がついたら絶対紹介してね!アリーチェのこと本当に幸せにしてくれる人か、私が確かめてやるんだから!!」
× × ×
ブルニルダに紹介しろと散々言われた数日後、スクアーロにはアリーチェの家に来ていた。
しかし、いつもとどこか様子が違い、どこか神妙な面持ちをしていた。
アリーチェはエスプレッソを出して、早速尋ねた。
「スクアーロ君、何かあった?」
「アリーチェ……頼みがある。」
「なあに?」
「オレと一緒に暮らさねぇか?」
「え?」
アリーチェはエスプレッソを落としそうになった。
「…嫌かぁ?」
「まさか。スクアーロ君から提案されると思ってなかっただけだよ。」
「そうだろうなぁ。これには事情があるんだぁ…。」
スクアーロは語り出した。
彼曰く、前回の中期の任務で同行した同盟ファミリーの女性の殺し屋がスクアーロに惚れたらしく、既婚だと伝えてもアタックをやめてくれないらしい。
彼女がアタックをやめない理由に、そもそもスクアーロが妻と同居していないことが上がっているらしい。
同居しないなんて離婚を考えているのではと勘繰られているのだとか。
「そっかぁ………まあ、その人がスクアーロ君に惚れる気持ちはわかるよ?素人でもかっこいい剣士だと思うんだもの。もっと細かい技術がわかる殺し屋 なら私よりもっとスクアーロ君の剣に魅了されるだろうね。」
「だが、アイツのあれは度が過ぎてる……何でオレに固執するんだ………」
スクアーロは頭を抱えた。
そもそもアリーチェに同居を提案するほどなのだ、相当困っているのだろう。
「さあ……スクアーロ君の魅力的なところはわかるけれど、固執する理由についてはその女性の人となりがわからないと何とも……」
「一応、高校からの片思いだとは言われた。」
「高校から?じゃあ私も知っている人なの?」
「名前はラウレッタだ。」
「ああー……一応知ってる……」
アリーチェは遠い目をした。
「1年の時に同じクラスになって話しかけたら、『殺し屋でも何でもなく、ただ幹部の娘ってだけでチヤホヤされに来た女と友達ごっこをするつもりはない』って言われたんだよねぇ……」
「その性格多分変わってねーぞぉ………」
「そっかぁ………」
アリーチェは最早彼女の長年の片思いすら疑い始めた。
確か彼女は高校の時に彼氏がいたはずだと。
もちろん、スクアーロを忘れるためにその男と付き合った可能性はあるが、単に強い男が好きなのではないかと思った。
ザンザスは流石に付き合いにくいのでNo.2のスクアーロに目をつけたのではないかと。
「とりあえず事情はわかったよ。次の休みにでも住む場所探してみるから、時間合わせて一緒に内見行こう?」
「いいのかぁ?」
「もちろんだよ。お母様を救出してくれたことに比べれば一緒に住んだり、女避けになったりするくらい、どうってことないでしょ?」
アリーチェは胸を張る。
「要は恩返しっつーことだなぁ?」
「うん、恩を返させて。」
「じゃあ、頼む。」
こうしてスクアーロとアリーチェは約1ヶ月半という短い期間で、なんならアリーチェは仕事が繁忙期だったが、なんとか一緒に暮らす家を見つけ同棲を始めたのだった。
本人たっての希望でアリーチェの苗字にスクアーロが追加されたが、仕事上ではこれまでの名前を名乗り、いつも通りに観光案内をしていた。
プライベートでもスクアーロと会う時間は一気に増えたが、一緒に住んでいる訳ではないため、人と会う約束の割合が変わったという感じだ。
それからスクアーロと会った時に性行為があることぐらいだろうか。
基本的に2人はスキンシップこそ増えたものの、距離感は高校の時とさほど変わらなかった。
「ええー!?アリーチェ、彼と一緒に住んでないの!?」
口に手を当てショックを受けた様子なのはアリーチェの親友のブルニルダだ。
アリーチェはそんな彼女の様子に困ったように笑う。
「うん、色々あってね。」
「何で?アリーチェは平気なの?」
「うん、平気。会った時は凄く大事にしてくれるもん。急な結婚だったし、お互いの職場に通いやすくて住みやすい物件がなかなか見つからないだけだし。」
実のところ、後者は嘘というか、友人に使っている常套句だった。
アリーチェとスクアーロは契約結婚だったため、2人共敢えて一緒に住む理由がなかったのだ。
お互いに職場までが遠くなるより、時間を抽出してたまに会う方が良いのではないかと考えていた。
「まあ、確かにしばらく男の気配が全くなかったアリーチェが急に結婚したもんだから、私も驚いたよ?」
「あははは、3人連続ダメ男続きで恋愛に疲れちゃったからね。」
アリーチェは遠い目で言う。
実際、その3人はアリーチェを愛したミルコがアリーチェと別れるようにけしかけたものではあるが、実際そういう性質を持っていたのだとアリーチェは改めて結論付けていた。
それにアリーチェにも悪い所があった。
寛容に何でも受け止める態度もそうだが、実際相手を大切にしているつもりはあっても恋愛感情がないことを隠して、相手に合わせて愛の言葉を囁いていた。
相手に嘘を見抜かれ不安がられても仕方のないことをしていた。
だからこそスクアーロとは夫婦だが友人という関係を崩す気がなかった。
お互い一線を引いた方が上手くやれると思ったのだ。
「アリーチェ、未だに旦那紹介してくれないけど、本当に大丈夫な人?本当にダメ男じゃない?」
アリーチェのローマでの恋愛遍歴を知っているブルニルダは何かと飲む度にこれを聞いてくる。
アリーチェはいつものやり取りにちょっとだけ呆れつつも、いつも心配してくれる友人に感謝を覚える。
「大丈夫だよ、ブルニルダ。いつも心配してくれてありがとう。私は素敵な親友を持ったよ。」
「あー、またそうやって誤魔化してー!」
「誤魔化してないって。うちの旦那は本当に忙しいんだから。今も2週間の中期の仕事でイタリアにいないし。」
「そうなの?」
「まあ、だから一緒に住むのもなぁなぁになっちゃうのよね。」
「だとしても結婚して3ヶ月経ってるのよ?別居が長ければ離婚条件成立しちゃうよ?」
「しないってば。離婚のハードルどんだけ高いと思ってるの?それにこういうのは当人達の意志が大事じゃない。」
「そうだけど…………なんか前の男達の時もそうだけど、なんかアリーチェって恋愛に必死にならない所が凄く危うく見えるのよ。」
「そう?そんなことはないと思うけれど……」
「そんなことあるわよ!旦那が浮気しないかとか、心配じゃないわけ!?」
「え、全然。そういうタイプじゃないもん、私の旦那様は。」
「だからそういうところだってば!まだこれが私の旦那は凄く私を愛してくれるから〜なら安心できるのに、相手の性格頼みで自信満々ってどういうこと!?彼のことを凄く信頼してるのは伝わってくるんだけどさ、アリーチェも旦那もお互いを愛してるのかが全然伝わってこないのよ!」
「そう?私は彼のことを愛してるけどなぁ。」
友人として、という注釈がつくが。
しかしまあ、本当によくパーソナルスペースに切り込んでくるし、鋭い友人である。
だからこその親友だが。
「とにかく、彼の都合がついたら絶対紹介してね!アリーチェのこと本当に幸せにしてくれる人か、私が確かめてやるんだから!!」
× × ×
ブルニルダに紹介しろと散々言われた数日後、スクアーロにはアリーチェの家に来ていた。
しかし、いつもとどこか様子が違い、どこか神妙な面持ちをしていた。
アリーチェはエスプレッソを出して、早速尋ねた。
「スクアーロ君、何かあった?」
「アリーチェ……頼みがある。」
「なあに?」
「オレと一緒に暮らさねぇか?」
「え?」
アリーチェはエスプレッソを落としそうになった。
「…嫌かぁ?」
「まさか。スクアーロ君から提案されると思ってなかっただけだよ。」
「そうだろうなぁ。これには事情があるんだぁ…。」
スクアーロは語り出した。
彼曰く、前回の中期の任務で同行した同盟ファミリーの女性の殺し屋がスクアーロに惚れたらしく、既婚だと伝えてもアタックをやめてくれないらしい。
彼女がアタックをやめない理由に、そもそもスクアーロが妻と同居していないことが上がっているらしい。
同居しないなんて離婚を考えているのではと勘繰られているのだとか。
「そっかぁ………まあ、その人がスクアーロ君に惚れる気持ちはわかるよ?素人でもかっこいい剣士だと思うんだもの。もっと細かい技術がわかる
「だが、アイツのあれは度が過ぎてる……何でオレに固執するんだ………」
スクアーロは頭を抱えた。
そもそもアリーチェに同居を提案するほどなのだ、相当困っているのだろう。
「さあ……スクアーロ君の魅力的なところはわかるけれど、固執する理由についてはその女性の人となりがわからないと何とも……」
「一応、高校からの片思いだとは言われた。」
「高校から?じゃあ私も知っている人なの?」
「名前はラウレッタだ。」
「ああー……一応知ってる……」
アリーチェは遠い目をした。
「1年の時に同じクラスになって話しかけたら、『殺し屋でも何でもなく、ただ幹部の娘ってだけでチヤホヤされに来た女と友達ごっこをするつもりはない』って言われたんだよねぇ……」
「その性格多分変わってねーぞぉ………」
「そっかぁ………」
アリーチェは最早彼女の長年の片思いすら疑い始めた。
確か彼女は高校の時に彼氏がいたはずだと。
もちろん、スクアーロを忘れるためにその男と付き合った可能性はあるが、単に強い男が好きなのではないかと思った。
ザンザスは流石に付き合いにくいのでNo.2のスクアーロに目をつけたのではないかと。
「とりあえず事情はわかったよ。次の休みにでも住む場所探してみるから、時間合わせて一緒に内見行こう?」
「いいのかぁ?」
「もちろんだよ。お母様を救出してくれたことに比べれば一緒に住んだり、女避けになったりするくらい、どうってことないでしょ?」
アリーチェは胸を張る。
「要は恩返しっつーことだなぁ?」
「うん、恩を返させて。」
「じゃあ、頼む。」
こうしてスクアーロとアリーチェは約1ヶ月半という短い期間で、なんならアリーチェは仕事が繁忙期だったが、なんとか一緒に暮らす家を見つけ同棲を始めたのだった。
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