忠誠
イタリア某所、深い森に囲まれ、妙に殺気立った城にその女はいる。
裏社会トップのマフィアであるボンゴレファミリーが抱える特殊暗殺部隊ヴァリアー。
齢14にしてその組織に所属する暗殺者、獄寺絵美。
彼女は1つに特化した隊員が多いヴァリアーの中でも非常に特殊な、幅広い分野をそれなりにこなす暗殺者だった。
彼女はヴァリアーの幹部ではないものの、卒なく全てをこなすことから、幹部候補として皆から一目置かれていた。
しかし、ヴァリアーはとある事件により暗殺稼業の一切を自粛していたため、彼女が実践でどれほど役に立つのか計ることができず、彼女は現状幹部のレヴィ・ア・タンの部下という扱いになっている。
「レヴィさん、ご用件は…って何で泣いてるんですか!?」
「ボォッ…ボスがっ!!ボスが戻られた!!」
「っ!!」
鼻水と涙で顔をぐちゃぐちゃにしたレヴィは絵美に抱きついた。
彼の行動には一切の害意がなかったため、絵美の反応はワンテンポ遅れ、筋肉に圧殺されそうになった。
「ちょっ…レヴィさん!!苦しいです!!」
レヴィは我に返って、彼女から手を放し一歩距離を取った。
「あ、すまない…。とにかくボスが戻られた!お前はこの8年で唯一新規入隊した隊員だからボスに挨拶せねば!」
ボスとはヴァリアーのトップであり、ボンゴレファミリーの現ボスである9代目の嫡子のことだ。
8年前、ボンゴレファミリーを乗っ取ろうとクーデターを画策し実行したところ、父たる9代目に敗北し身柄を拘束されヴァリアーの隊員達とは引き離されたと、絵美は聞いている。
つい昨日まで釈放の目処は立っていなかったはずだが、仮にもこの猛者達のボスなのだから、自力で脱出した可能性もある。
「わかりました。ボスはどちらにいらっしゃいますか?」
「ボスは自室にいる。俺が紹介しよう。」
そう言ったレヴィに絵美は早速ついて行った。
そしてずっと手入れはされていたものの主人が不在だった部屋の前に近づくにつれ、異様な殺気を感じた。
「(ヴァリアーの中でもピカ1の殺気だ…)」
レヴィは部屋の前に着くと気が逸っているのか、早速ノックをした。
「誰だ?」
「ボス、俺だ。先程話した新隊員を連れてきた。」
先程までのぐちゃぐちゃな顔はすっかり治り、彼は今仕事の顔をしていた。
絵美は中にいる人物の反応を待ちながら、1度深呼吸した。
「…入れ。」
「「失礼します。」」
緊張からか、レヴィと絵美の声は見事にハモった。
目的の人物は部屋の奥のソファに座っていた。
立たせた黒い髪に、端が二股に分かれた独特の眉、全てを壊しそうな赤い目。
座っているため正確な身長は分かりにくいものの、明らかに長身であることがわかる。
そして見た目よりも特徴的なのが強い殺気だった。
絵美は一瞬でこの男には自分を含めヴァリアーの誰も敵わないと悟った。
絵美はレヴィに倣い、彼の前に着いてすぐ胸に右手を当て、頭 を垂れた。
「ボス、この者が4年前に入隊した獄寺絵美だ。」
「お初にお目にかかります。獄寺絵美と申します。」
圧倒的な殺気に絵美は緊張しながらも、違和感なく普通の挨拶をした。
「………」
ボスと呼ばれた男は黙って絵美を見上げていた。
ソファに座っている分、男の方が目線が低く見上げる形となっているにも関わらず、絵美は彼に見下されている気分だった。
「(この人にはどんなに頑張っても絶対に敵わない……なんていうか、私は誰かにこんな強い何かを向けられない………きっと……私はこの人に一生ついていく。この人以上に従うべき存在にはもう出会えない気がする。まさに私のボスだ………)」
絵美がそんなことを思っていると、徐ろに男が口を開いた。
「……ベルより幼いとは聞いていたが、女だとは聞いてねぇ。」
「女だが能力は高い。ボスの役に立つはずだ。」
「……女、テメェは何ができる?」
「剣、暗器、銃、毒、爆弾は扱い慣れています。武道は柔道と空手を9歳まで嗜んでいました。パワーはありませんが柔軟性と俊敏性に優れた体を持っていると自負しています。」
「テメェはそれなりの家柄の出身だな?」
絵美は首を横に振った。
「いいえ、私の家柄については胸を張れるようなものではありません。」
「俺の言葉を否定するな。言葉や所作から育ちの良さが滲み出ている。本当に俺の下につく気があんのか?」
男の殺気と猜疑心が強くなったことに、絵美は危機感を覚えた。
彼女は素早くその場に跪いた。
「もちろんです。私はあなたに絶対の服従を誓います。ボスの命令は絶対だと教わりましたし、そのつもりで今日まであなたの帰還をお待ちしておりました。」
「証明できるか?」
絵美は頷いた。
「何をすれば信じていただけるでしょうか?」
「そうだな…」
男は絵美の全身を目線で舐め回すように見た。
「俺の靴を舐めろ。」
意外な言葉に絵美は目を見開いた。
彼女はてっきり命を差し出せやら、腕を差し出せやら言われると思っていたのだ。
「ボスの靴を汚しても良いのですか?」
「汚れたら捨てればいい。」
「でしたら、遠慮なく。」
絵美は男まで距離を詰めて跪いた。
その薄ら桜色に色付いた唇が彼の靴に届く場所に。
彼女は緩い癖毛の銀髪を右手で軽く掻き上げて、顔を靴に寄せた。
靴に唇で触れ、少しだけ口を開き、彼の靴をゆっくりと赤い舌で舐めた。
それは酷く扇情的な光景だった。
男は少しだけ目を見張った。
レヴィも少し驚きつつ、顔を赤らめて唾を飲んだ。
絵美が上目遣いで男を見上げ、目が合うと彼は薄っすらと笑みを浮かべた。
「ハッ…本当にやるとは。気に入った。絵美、今夜またここに来い。」
「?…わかりました、ザンザス様。」
絵美は驚愕しながらも頷いた。
これが生きるために手段を選ばない女・獄寺絵美と自身の野望を阻む全てをかっ消さんとする男・ザンザスの出会いだった。
裏社会トップのマフィアであるボンゴレファミリーが抱える特殊暗殺部隊ヴァリアー。
齢14にしてその組織に所属する暗殺者、獄寺絵美。
彼女は1つに特化した隊員が多いヴァリアーの中でも非常に特殊な、幅広い分野をそれなりにこなす暗殺者だった。
彼女はヴァリアーの幹部ではないものの、卒なく全てをこなすことから、幹部候補として皆から一目置かれていた。
しかし、ヴァリアーはとある事件により暗殺稼業の一切を自粛していたため、彼女が実践でどれほど役に立つのか計ることができず、彼女は現状幹部のレヴィ・ア・タンの部下という扱いになっている。
「レヴィさん、ご用件は…って何で泣いてるんですか!?」
「ボォッ…ボスがっ!!ボスが戻られた!!」
「っ!!」
鼻水と涙で顔をぐちゃぐちゃにしたレヴィは絵美に抱きついた。
彼の行動には一切の害意がなかったため、絵美の反応はワンテンポ遅れ、筋肉に圧殺されそうになった。
「ちょっ…レヴィさん!!苦しいです!!」
レヴィは我に返って、彼女から手を放し一歩距離を取った。
「あ、すまない…。とにかくボスが戻られた!お前はこの8年で唯一新規入隊した隊員だからボスに挨拶せねば!」
ボスとはヴァリアーのトップであり、ボンゴレファミリーの現ボスである9代目の嫡子のことだ。
8年前、ボンゴレファミリーを乗っ取ろうとクーデターを画策し実行したところ、父たる9代目に敗北し身柄を拘束されヴァリアーの隊員達とは引き離されたと、絵美は聞いている。
つい昨日まで釈放の目処は立っていなかったはずだが、仮にもこの猛者達のボスなのだから、自力で脱出した可能性もある。
「わかりました。ボスはどちらにいらっしゃいますか?」
「ボスは自室にいる。俺が紹介しよう。」
そう言ったレヴィに絵美は早速ついて行った。
そしてずっと手入れはされていたものの主人が不在だった部屋の前に近づくにつれ、異様な殺気を感じた。
「(ヴァリアーの中でもピカ1の殺気だ…)」
レヴィは部屋の前に着くと気が逸っているのか、早速ノックをした。
「誰だ?」
「ボス、俺だ。先程話した新隊員を連れてきた。」
先程までのぐちゃぐちゃな顔はすっかり治り、彼は今仕事の顔をしていた。
絵美は中にいる人物の反応を待ちながら、1度深呼吸した。
「…入れ。」
「「失礼します。」」
緊張からか、レヴィと絵美の声は見事にハモった。
目的の人物は部屋の奥のソファに座っていた。
立たせた黒い髪に、端が二股に分かれた独特の眉、全てを壊しそうな赤い目。
座っているため正確な身長は分かりにくいものの、明らかに長身であることがわかる。
そして見た目よりも特徴的なのが強い殺気だった。
絵美は一瞬でこの男には自分を含めヴァリアーの誰も敵わないと悟った。
絵美はレヴィに倣い、彼の前に着いてすぐ胸に右手を当て、
「ボス、この者が4年前に入隊した獄寺絵美だ。」
「お初にお目にかかります。獄寺絵美と申します。」
圧倒的な殺気に絵美は緊張しながらも、違和感なく普通の挨拶をした。
「………」
ボスと呼ばれた男は黙って絵美を見上げていた。
ソファに座っている分、男の方が目線が低く見上げる形となっているにも関わらず、絵美は彼に見下されている気分だった。
「(この人にはどんなに頑張っても絶対に敵わない……なんていうか、私は誰かにこんな強い何かを向けられない………きっと……私はこの人に一生ついていく。この人以上に従うべき存在にはもう出会えない気がする。まさに私のボスだ………)」
絵美がそんなことを思っていると、徐ろに男が口を開いた。
「……ベルより幼いとは聞いていたが、女だとは聞いてねぇ。」
「女だが能力は高い。ボスの役に立つはずだ。」
「……女、テメェは何ができる?」
「剣、暗器、銃、毒、爆弾は扱い慣れています。武道は柔道と空手を9歳まで嗜んでいました。パワーはありませんが柔軟性と俊敏性に優れた体を持っていると自負しています。」
「テメェはそれなりの家柄の出身だな?」
絵美は首を横に振った。
「いいえ、私の家柄については胸を張れるようなものではありません。」
「俺の言葉を否定するな。言葉や所作から育ちの良さが滲み出ている。本当に俺の下につく気があんのか?」
男の殺気と猜疑心が強くなったことに、絵美は危機感を覚えた。
彼女は素早くその場に跪いた。
「もちろんです。私はあなたに絶対の服従を誓います。ボスの命令は絶対だと教わりましたし、そのつもりで今日まであなたの帰還をお待ちしておりました。」
「証明できるか?」
絵美は頷いた。
「何をすれば信じていただけるでしょうか?」
「そうだな…」
男は絵美の全身を目線で舐め回すように見た。
「俺の靴を舐めろ。」
意外な言葉に絵美は目を見開いた。
彼女はてっきり命を差し出せやら、腕を差し出せやら言われると思っていたのだ。
「ボスの靴を汚しても良いのですか?」
「汚れたら捨てればいい。」
「でしたら、遠慮なく。」
絵美は男まで距離を詰めて跪いた。
その薄ら桜色に色付いた唇が彼の靴に届く場所に。
彼女は緩い癖毛の銀髪を右手で軽く掻き上げて、顔を靴に寄せた。
靴に唇で触れ、少しだけ口を開き、彼の靴をゆっくりと赤い舌で舐めた。
それは酷く扇情的な光景だった。
男は少しだけ目を見張った。
レヴィも少し驚きつつ、顔を赤らめて唾を飲んだ。
絵美が上目遣いで男を見上げ、目が合うと彼は薄っすらと笑みを浮かべた。
「ハッ…本当にやるとは。気に入った。絵美、今夜またここに来い。」
「?…わかりました、ザンザス様。」
絵美は驚愕しながらも頷いた。
これが生きるために手段を選ばない女・獄寺絵美と自身の野望を阻む全てをかっ消さんとする男・ザンザスの出会いだった。
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