「アデール家は歴史が浅い。そして忌まわしくも近親婚を繰り返し今に至る。先祖共がそうした理由が解るか?」
「え、っと……眼の色を、維持する為、に」
「表向きはそれで正解だ。だが実際は、謀叛者を出さない為に縛りつける目的もあった」
アラステアが少女の左手を捕らえる。己に覆い被さる体勢になった男を見て、リリーエはぎくりと身体を軋ませた。捕らえた少女の掌の非力さを確認するように、親指でなぞる。柔らかく、少しだけ冷たい。自分を慕う少女を組み敷いたアラステアは、幼さを残した無垢な彼女のその指先に唇を寄せた。
「お、おじさま」
「俺も結局は、我々の先祖が遺した呪いを受け継いでいるのだろう。お前だけは、遠くに逃がしてやろうと思っていたのに」
少女の左手の、その整った指先にアラステアは軽く歯を立てた。リリーエの肩が跳ねる。その様は、さながら力を持たない脆弱ないきものによく似ている。少女は忙しなく視線を泳がせて、指先から送られる刺激に無関心であろうとしていた。