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全部全部君のせい。


 青く冴えた、甘い泥濘に沈んでいた。時折こぽりと気泡の弾ける音が、耳を掠めて逃げていく。此処は何処だ。否、何処でも良い。夢である事だけは明白だ。

「貴方が居るから、俺が居る。知っているでしょう」

 魚がすいと移動するような滑らかさで、唐突に人影が眼前に現れた。紺色に染まったそれは生意気にもくぐもった声を上げ、自己を主張し、手を伸ばし、青の首に触れてくる。指先に似ている影の一部が青の首を緩やかに締め付け、呼吸を圧迫する。しかし、嗚呼、残念だ。力があまりにも無さすぎる。大人しく彼の主張を聞こうと思った。

「姉さんが居なくなるのも、全部」
「俺とお前の所為だ」

 共犯だろうが。
 不思議な事に、己の声は厭に明瞭なものだった。幼い影の首元を狙い、定める。両手を上げて、影の首に手を掛ける。指先に、掌に、力を込めて。彼が己であるならば、これは聞かなくても良い話だ。結論は分かっている。彼が言いたい事は。

「お前も、守れないんだな」

 ただ、彼に花を手向けたかった。
 何処へ行っても相容れぬのだろうから、翡翠色の目を持つ少年に、たった一度の別れを告げたかった。