隣の友人が急にそわそわしだした。なんだろうと様子見すると、今度は慌てだした。なんだなんだと視線の先を辿れば、こちらに手を振る男がひとり。そして応えるように振り返す私の友人。

「一ノ瀬くんいたね」
「あー・・・そうね」

適当に相槌を打つその時に、最近見かけることが多くなったと嬉しそうに話していたのは昨日だったかと思い出す。

この際だからはっきり言うが、「全然会わないんだよね」と残念がちに言うけれど私はおかしいと真っ先に思った。なぜならアイツを見かけたことは何度かあるからだ。しかもはるがいるときに。あんたが気付かないだけで。
はるも私と同じように浅い興味しか持っていないとばかり思っていたから今まで見かけても口に出さなかったけど、この目に見えての変化に内心驚きを隠せない。
いつも話題にあがる一ノ瀬を同中だとは初めのころに聞いていた。けどそれだけ。「中学のときもああだった」と懐かしさで笑うぐらいだったから。顔見知りよりも下、そんなふうにはるは思っていただろう。そう捉えていた彼女は変わった。

あの時から明らかな変化を見せていた。教科書を手にして戻ってきて、何もなかったとしか言わないあの時から。

「ねえはるさー・・・」
「なに?」
「・・・・・・・・・顔。にやにやしててうざいよ?」
「!! ひどいったしかに浮かれてるけどしょうがないじゃん!」

真っ赤な顔をして素直な言い訳をする友人を見ていると呆れに似た気持ちが起こって小さく笑んだ。よみがえる苦味がブレーキをかけてくれて、言わないでおこうという考えに落ち着く。
過去の教訓が働いて何も言えなかった私はすっきりしない胸の内に小さな息を吐いた。(言ったところでどうにかなるわけでもないし、・・・)それに、はるが気付かない時に見かけたアイツはこっちを見ていたような、気のせいで終わるちょっとした仕草をしていたように思えたから。確証はなくてモヤモヤするが、ほかの人が何かしなくても大丈夫、そんな気がする。

(はるがんばれ)

単純で複雑な気持ちを知るのも時間の問題と押したい背中に心の中でエールを送る。



2.5 むすんでひらいて恋をした
14.02014