「ほら迎えに行ってきたら?」

がっちゃんから聞かされた話を心の中でグッジョブと親指を立てた私はさっきからずっとソワソワしているはるの背中を押してあげた。一緒に来てくれると思っていたのか驚いた顔が瞬時に振り向いてきて、もうひと押しとばかりに突き放すような言い方をすればムキになって進んでいく。そんな後ろ姿を軽いため息まじりに見送った。

確実にお互い意識し合っているのにじりじりと縮めていくじれったい展開に口を挟みたくて仕方なかったがこれでようやく決まるだろう。ひた隠しにしたお節介な性分が顔を出しそうだったけど、やっとこれで・・・・・・・・・

(あれ?)

そう肩の荷が下りたと安堵していた。けれど、もっと時間がかかるかと、むしろ戻って来ないかと思っていたはるが一ノ瀬とともにあっさりと戻ってきた。
外れた予想に一瞬眉間に力が入ったが二人の距離が今までよりも近いような、そう見えて少し目を見開いた。けど手応えを感じない。(あぁ・・・まだなのね)第三者の私ですら見逃しそうなわかりづらい変化に気付いて小さく肩を落とす。その時、見られたような視線を感じて何気なくその視線を探せば寺田くんと目が合ってさっと逸らした。(・・・・・・)

相変わらずゆっくりでじれったい日々になるのか。それを見せられる私はいつまでヤキモキさせられるのだろう。まどろっこしくて見ていられない時が来る前にどうにかならないかな。改善したと思っていた心根はやっぱり変えられないのか、そんなことばかりを考えていればまた同じ視線を感じてチリッと胸に焦げたような痛みが走る。
嫌だけどそのおかげでモヤモヤと巡らせていた思考を落としていた目に入った浴衣に変える。(浴衣・・・浴衣か・・・・・・・・・そういえばあの時は着て・・・・・・)そこまで思うとはっとして、脳裏に流れた映像に嫌気が差してくる。思い出したくないことを思い出してしまった。「なんかアリス好評みたいだよー? アリス目当てのお客さんがいるってー」届いたメールを確認していたはるの声に気のない返事を返した。あーもうっ調子が狂う。

「そだそだ! みんなで写真撮らねー?」
「あっいいねぇ!」

思いつきで出したようなその提案にいいねと笑って同意するはると似た感じの反応をする一ノ瀬と寺田くんを見てクラスメイトの案内係の人にがっちゃんは写真を頼んでいた。(なんかこう、自然にやってるなー)何も考えずの行動なのかどうなのか、知り合って間もないからわからないけど意外と行動派だなと思いながらはるの片腕を抱きしめてぐいっと押しやる。突然押されて驚いた表情をするはるは私の思惑どおりに一ノ瀬と隣り合った。ピタッとくっついて初めて近いことに気が付いたらしい。「! ごめんっ一ノ瀬くん」我ながらナイス。かっと赤らんだはるを見てほくそ笑んだ。

距離を取ろうと私の方に体を押して抵抗しているけど、そうはさせないとばかりに踏ん張って動かないでいれば慌てた小声が聞こえたけど聞こえない。

(これぐらいの手助けは、いいよね)

押し合いが続いたけど折れない私に諦めたはるが恥ずかしそうな顔つきをしている。その隣で一ノ瀬も何だか落ち着かなそうな様子に見える。こんなに間近にいるのになんで気付かないんだろう。今は二人の間はゼロなのに。
そんなふたりを見ていると呆れてしまいそうになった。「寺田ァお前見切れてるー」けれどその呼びかけがまるで引き金のようにトクンと鳴ったかすかな音に自己嫌悪が広がって、それが表に出ていたのかカメラを構えた男子にスマイルを促される。
わかってるよ。ちょっと待って。しっかり笑うから。



見せられた写真の中の私はちゃんと笑ってた。



4.8 白骨化した恋へ
14.0715