「好きなコいるよ」
報われない恋を見ていると昔の俺を見せられているようでとても見ていられなかった。だからつい本当のことを言ってしまえば振り返ってキッと睨みつけられる。「、知ってるよ」余計なひと言は重々承知だったがまさかもう知っているとは思わなくて短い強がりのあとで悲しげに伏せられた睫毛を丸めた目で見下ろした。
★
告白の、しかもフラれた現場は俺が使う最寄駅で、その時偶然にも見かけていた。駅のホームで告白とは中々に勇ましいという驚きとかを覚えている。告るやつは人目の少ない場所を好んで選ぶからそんなことを浅からず思ってふとあの帰り道が頭を過ぎりやっぱそうだよなとこの結果に頷いていた。
バッタリ会って(どうしてそうなったかわからないが)そのまま同中組で並んで帰ったあの日。
短くも長くも言えない付き合いの蓮が見たこともない顔をしていて察しの良い俺はすぐにわかった。隣を気にする素振りがチラチラと見えるから俺じゃなくてもわかるヤツにはわかりやすいのかもしれない。(蓮も人の子なんだな)俺と蓮に挟まれて地元の道を呑気に歩いている問題の子は最後までわかっていなかったみたいだけど。
だから結果は始めからそう決まっていた。なのに。なんでだ。
なんでまだ好きでいるんだ。
仁菜子チャンはあの頃の俺を見ているようで時々イライラして苦しくて、なのに綺麗な想いを大事にし続ける表情にグッとくる。
これまで色んなコと遊んできた俺がこんな一喜一憂する顔にドキマギするとか。何だよ・・・俺。誰なんだよ俺は。
「安堂は安堂だよ」
あー誰だっけ。こんなセリフ言ったの。・・・・・・そうだ。蓮だ。あと、それから。
☆
「・・・ぷはっなんだそれ」
「・・・・・・私は安堂のことすきだよ。・・・だから、・・・」
あの時ボロボロになった俺に告げた言葉を思い出す。まだまだガキだった俺に、はるちゃんは一度だけそんなことを言ってくれた。
どう反応していいかすごく困って、真っ先に浮かんだ冗談と捉えて思わず笑い飛ばした。二度三度ぱちぱちと目を瞬かせるはるちゃんも俺の笑い声につられて笑っていた。
あぁやっぱジョーダンだよね。あーよかったよかった、・・・よかったんだよな?
大事なことから逃げているような気になってはるちゃんの変化のない様子を確認したら、ホッとした安心からか鼻の奥がツーンと痛んできてさらに笑って誤魔化した。
「はははっ! ありがと!」
不覚にも嬉し泣きしそうになった俺はおおげさに笑った。
単純に嬉しかった。傍にいる好意じゃなくても、見守る好意がこんなにも嬉しくて。
俺は俺だと、そんな俺をすきだと言ってくれたことが嬉しかった。
★
今にして思えばどっちなのだろうと気になったのは、何とも言えない目を俺に向けてくるからで、えっまさかと怯むような緊張を孕んだ思いが浮かび上がる。
もう進むしかないと決意した途端に目に飛び込んできた仲の良い友達の気持ちがよくわからなくなってどうしようもない。
あの言葉はどういう意味だ。答えを求めたくなったがそれを知ったらダメな気がして『見守ってきた』はるちゃんに告白した。「好きなコができた」恥ずかしくて最後のほうは目を見て言えなくてダサかったけど。
そう告白しても何だか苦しいままだった。だからその苦しさをこぼすように。
「ごめんね」
その想いには応えられなくて。「は?」けど返事は思っていたのと違った。
俺の勘違いで済んでホッとする反面なんか変な気分。勘違いでよかったはずなのに、なんかこう悔しさみたいなのがあって意味がわからない。なんだこれ。
「私もがんばるよ。だからお互いがんばろーね!」
どうやらはるちゃんにも好きなやつがいるらしい。その発言にまた悔しさみたいなおかしな感覚が起きて顔を顰めたら「ノリ悪くない?」と一気に不満顔になったから吹き出して笑った。
(相手は知らねーけど、俺としてはあいつだったら)
いいな。あいつのためじゃなくて、もちろん俺のためにね。
5.5 オリジナルライク
15.0612