「今朝蓮くん見た!」
「ちょーかっこいいよね!」
2年生の半ば。林間学校がもう少しで始まるころ。しおりを班員分集める保健係の私はそんな朝の会話が耳に入った。
それはここ最近女子たちの話題にのぼる『蓮くん』と呼ばれる同級生のこと。私はこれまで一度も見かけたことはないが相当な容姿の持ち主なのは数々の話を耳にして明白。そして気になるのは女子ゆえの性というべきだろうか。
(どんな人だろう)
今朝の体温を記入してあるかチェックしながらぼんやり考える。1年の時やたらと馬が合ったアイツも黙ってればイケる部類に入るかもと思考は脱線してしまったが、見てみたいという願望は強まった。そんなことを考えている間、周りが水を打ったかのような静けさになったことに気付けなかった。
「今 蓮くん通ったね!」
その言葉を引き合いにわっと盛り上がる教室内でただ一人私はえっえっと状況についていけてなかった。教室の前を例の人が通った事実を知って教室を出た廊下の左右の方向を見るがすでにそれらしき人は見当たらず。「はるってば遅いよー」「もう行っちゃったって」見れるチャンスが素通り。
考えてたらこれかよ!惜しい!廊下の真ん中で佇む私に教室から顔を出す友達がケラケラ笑う。
「ウチの教室見てたねぇ」
「誰かのこと見てたのかな!?」
「それ私のことかも!」
「こらこら思い上がりだぞ。あれは私だね!」
きゃっきゃっうふふと楽しそうな彼女たちの会話を聞いて尚のこと見れなかった残念さで肩を落とす。(まあ、次もあるからいっか)これから林間学校だってあるしイベント行事はいっぱいだ。それに中学生活はまだ1年以上もあるわけだからね、そのうちそのうち。
一休さんのような結論に達した私は担任の机にほかの子たちが重ねたしおりの上に自分たちの班のしおりを置いた。
14.0128