もう諦めの境地に入った。ずいぶん前から入っていたのかもしれないけれど、ここまで見れていないとなると友達も同情を通り越して憐れむレベルになりました。「今日3回見かけたのに」「かわいそう」「・・・・・・・・・」
(というか安堂の後ろの席だったなんて知らなんだ・・・・・・)
教科書を借りに行ったあの時そのことを知ってさえいれば! 目に焼き付けておいたのに!
けれど一目見れたには違いない。噂の『蓮くん』と認識していなかったからあんまり覚えていないのが何とも惜しい。
「気を落とすなってはるー」
「そうそう! それに今日これから見れるかもよ?」
彼女が言いたいのは黒板にでかでかと書かれたあの行事。運動会、もとい体育祭を控えた学校は学年全体合同練習が今日から始まる。だから競技練習時に見ることができる、そういうことなのだろう。わかってはいるけど今回もダメな気がしてならないのは今までのことが思い返されたからだ。
「あっ! 次だよ蓮くんの番!」
当日の動きを通して行なったあと競技練習に移った。そして女子一同が待っていたであろう男子学年リレーが開始する。
グラウンドの内側でまとまっていた女子たちが見やすい位置に移動して自分のクラスを応援した。そんな私も応援を忘れない。
そしてついにきた。
「えっどこ? 何列目?」
「むかって右から3番目だよ。ほらあれが『蓮くん』」
隣の友達に小声で聞き、教えられた3列目に立つ人を見つめた。あれが・・・『蓮くん』
私は一体見たことのない彼をどんな風に想像していたのかすっかり忘れてしまった。たしかハマってたドラマのアイドル俳優のような顔をイメージしていた気がする、でも今は俳優のほうが思い出せない。
子供っぽい言い方だけど頭の中はもう『蓮くん』でいっぱいだった。
バトンを受け取って走り出す姿はほかの子たちと同じく目が離せていなかっただろう。次にバトンが渡るまでずっと見ることしかできなかった。
「どう? 初見さん?」
「・・・・・・同学年にあんな子いるんだ」
なるほど。納得。みんなのざわつく気持ちがよくわかった。あれはかっこいい。
14.0128