キスを繰り返していく内に、自然と切島くんに胸を押し付ける形になった。切島くんの硬くて熱い身体に自分の胸が押し潰されて、嫌でも自分が女だと思い知らされる。別に嫌ではないんだけど……、余計にヤラシイことをしている、と実感するのが、なんか、恥ずかしい。首元でくしゃくしゃになっていたTシャツは、気付いたら切島くんに脱がされていた。ベッドの下で、落とされてるTシャツが視界の隅で見える。ああ、なんか、ドラマのワンシーンのようだな、と惚けた頭で考えた。

 キスをしながら、態勢を探っているうちに、私は切島くんの膝の上に乗っていた。胡坐をかいた、膝の上。重くないのかな、とか本当はちょっと気になる。でも、こうしている時間の幸福感には逆らえない。切島くんの大きな手が、逞しい腕が、背中に触れて、回されることが気持ちいい。安心して、満たされるのに、気持ちいい。その気持ちを伝えるように、ちゅう、と離れかけた唇を押し付けた。切島くんの腕がより強く私を抱き締めて、私を突き上げた。ずん、と下からの強く突き上げられた。予想もしない刺激に私は高い声を上げそうになる。びっくりして、唇も離れてしまった。

 身長の関係で、この態勢だと私の方が頭は上になる。切島くんから見上げられる形になるから、切島くんに私の顔は丸見えだった。

「…な、…」
「名字……」
「…え、えっと」

 ぐっ、と腰を引き寄せられて…というか、押さえられて、さっきと同じように下から押し付けられる。さっきみたいに、強い刺激はなくとも、私の…たださえない、余裕をなくしていく、には十分だった。

***

「や、だ…」

 可哀想なくらい、顔を真っ赤にした名字を下から見上げるの、めちゃくちゃいい。好奇心旺盛な癖に、いざとなると小さくなる彼女はとてもかわいい。痛いくらいかたくなったものを、疑似的感覚で遊ぶように、下から彼女にぐりぐりと押し付ける。圧迫されて、痛いような、気持ちいいような、興奮してイマイチ分からない。彼女は戸惑った顔をして、視線をぐるぐると回して、最終的に俺の首に抱き着いて来た。乱れた髪から覗く本来なら白い耳に、口を近づける。分かっているくせに、聞くなんて意地悪だろうか。

「名字…」
「…」
「名字のここ、も触りてぇ」
「…さっ、わ…」
「ダメか?」
「…」

 くすぐったい。彼女に首に合わせて揺れた髪からはとても甘い香りがした。名字が受け入れたことが嬉しくて、つい強く抱きしめてしまった。



 彼女のハーフパンツに手をかけると、彼女は今までで一番俺に強く掴まって来た。あくまでも、彼女は膝立ちの姿勢だから、最後までは脱がせなかった。……しまった。この態勢だと、彼女の…、下着が見えない。いや、絶対見てぇ、とか、そういうんじゃないけど…。彼女の太ももに触れて、そのまま滑らせるように手を上へ持って行く。胸とは違う、柔らかさに触れる。触り心地がいい布の感触に、彼女の下着に触れているのだと、分かった。

 …当たり前だが、初めて触れる異性の下着に俺の、ものは余計に硬くなる。

 彼女の丸い尻を包み込むように触れて、つい、欲求のままに、両手で揉んでしまった。彼女の強張っていた身体が、大きく揺れて、彼女が顔を上げる。

「きり、しまくん」
「わ、わるい、痛かったか」
「ち、違うけど……」

 何度も見た表情だった。恥ずかしい、と彼女は言いたいらしい。俺はあることに気付いて、彼女を俺の膝から降ろす。彼女はきょとん、としながらも、ハーフパンツを脱ぎ掛けたまま姿のままで、俺をじっと見つめてくる。うん、名字エロいから、本当。着エロ…だったか?以前上鳴に押し付けられそうになったジャンルを押し退けて、俺は自分のジャージに手をかけた。

「…!」
「……これで、一緒だ。恥ずかしくない」
「……」

 彼女は両手で顔を覆って、身体を小さくするように膝を立てて、丸くなる。何故か、彼女の脱力した空気も伝わってくるような。気のせい…か?

「…切島くん、ほんとに……」
「な、なんだよ」
「いや…色気ないよなって、私が言えることじゃ、ないんだけど…」

 顔を隠したまま、彼女は冷静なツッコミを俺に入れる。ぶっちゃけ、正直…、彼女の言いたいことは分からなかった。分からなかった……けど、若干彼女にバカにされているような、呆れられているような、感じは分かる。怒ったりはしねぇけど、ムッとする。だいたい名字は自分のコトを全然わかっていない。

「そういう名字こそ…」
「え?」

 逃げた分の距離を詰めて、俺は名字へ手を伸ばした。

「どんだけ自分がエロい格好してんのか、自覚あんのか?」
「え、…!?」

 彼女の膝に手を置いて、ぐいっと開けば中途半端なところで彼女の足は止まる。脱ぎ掛けのハーフパンツの所為で、これが限界なのだ。この、中途半端な感じがめちゃくちゃエロい。急なことで、彼女は態勢を崩して、後ろに倒れかける。後ろに両手をついてしまった彼女は自然と俺に胸元も、腹も…、そして見れなかった下着もさらけ出すことになった。

「ま、まっ」
「やだ」

  ずりずり、と彼女の身体を引きずって、仰向けになるように押し倒す。このままだと、ベッドサイドに頭をぶってしまうかもしれない。その隙に彼女のハーフパンツも、ベッドの下へ落とした。彼女がまた何か声を上げて、両手で顔を覆う。今日の彼女は顔を隠して、ばっかりだ。まあ、そんなところも可愛いと思っちまうんだけど。俺も、彼女も着ているものは下着だけ…なのに、彼女の方がめちゃくちゃエロく見える。彼女が頑なに隠したがったものが、目の前にある。そう思うと、物凄く興奮する。

 その事実を確かめるために、薄っぺらい腹を撫でて、わき腹、胸、と彼女の身体の輪郭を辿るように触れた。ぴくぴく、と彼女の腰がもどかしそうに揺れる姿に、俺の下着は変化を示していた。つーか、パンツん中気持ちわりぃ。その不快感を無視して、彼女の手をどかす。自然と身体が覚えたのか。俺も彼女も、流れで目を瞑って唇を重ねることができるようになっていた。成り行きで、彼女の膝を開いて、身体を入り込ませることが出来た。柔い太ももを撫でで、太ももの付け根のところで、指が引っかかる。

「…名字、いい?」
「……今更聞かないで、ください」

 キスの合間に彼女に尋ねれば、彼女は目を逸らして俺の肩を軽く叩いた。

「痛かったら、言ってくれよ」
「…うん」

 俺を見上げて、小さく唇を開く彼女の唇を塞ぎながら、俺は右手をそのまま彼女の下着の上から触れる。中指の先で、湿った感触があった。彼女の舌がぴくり、と動いて、目をぎゅう、と強く瞑った。もう片方の手で恥ずかしがる彼女の頭を撫でる。恥ずかしがる彼女はかわいい。でも怖がって欲しいわけじゃない。彼女の、大切なところの全体を確かめるように、探るように、触れる。何となく、下着越しにやわく、ぬれている場所の形を覚えて、つい窪んでいる部分に指先を押し付けてしまった。余計に濡れた感覚が指に感じて、彼女が目を見開いて、俺と視線が合う。

「…」
「…」
「ん…」
「…」

 彼女の反応が見たくて、もっと知りたくて、でも傷付けたくないし、怖がらせたくない。矛盾する気持ちと興奮を抑えようすると、自分の気持ちを押し付けないように彼女を見つめることに集中を全部注ぐような気分だった。窪んでいる部分を指先でくすぐるように触れると、彼女は俺の肩に掴まって、耐えるように唇を結ぶ。痛い?と聞いても、首を横に振るだけ。怖い?と聞いても、また同じ返事。しばらくして、彼女が俺の耳に唇を寄せた。

「……慣れないから、戸惑ってるだけ。だいじょうぶ」
「そ、そっか…」
「う、ん」

 女子の事情は分からない。ただ俺は男だから、自分の欲を処理することはあるし、戸惑うこともない。彼女は自分でもよく分からないところを、俺に触れられてるのかもしれない。そう思うと、俺は興奮するような、緊張するような、変な感じがする。彼女も知らない、ところを俺が触れている。彼女に許されている、そのことが嬉しいと思った。それと同時に、不安や戸惑っている彼女を安心させたいって思った。俺は名字の腕を引っ張って、身体を起こさせた。

「…き、きりしまくん?」
「……」

 あー……、たしかに…、これ、めちゃくちゃ恥ずかしい。

「お」
「?」
「俺の、も……触って欲しい」
「……きりしまくん、の?」
「……おう」

***

 そこそこ女の子をしてるから、足を広げることに抵抗がある。足を開きっこして手で探り合う、なんて一見子どもが遊んでいるみたいだ。

「んっ…」
「ご、ごめん、…痛い?」
「いや、きもちいい」

 耳元で聞こえる熱い息遣いや低い声に、どきどきする。手の中で、生き物みたいに変化をする熱にも、どきどきする。互いに恥ずかしい所を触れ合っているのに、顔は見えないようにしてるのが変な感じ。切島くんの私の肩におでこを預けていて、私は切島くんの胸元に頭を預けていた。熱くて硬いのに、柔らかい。いや、硬いんだけど、生き物の身体の、柔らかさ。切島くんに教えてもらった通りに指で包むように握って、下から上へと擦る。だんだんと滑りがよくなって、手も動きやすくなる。痛く、はしたくない。でも、まじまじと見つめる訳にも行かなくて、指先の感覚と切島くんの反応を見ながら触れていった。

「…あっ」
「…だ」

 大丈夫か?と続く言葉に頷いて、大丈夫だよって返す。怖くないし、痛くもない。下着も取り払われた、部分は自分でも恥ずかしいくらい、感じていた。ときどき切島くんの意図ではなくて、私の所為で指が滑るような触れ方を感じると余計に恥ずかしくなる。指が入ったりはしなくて、入口辺りを繰り返すように切島くんの硬い指先がこする。親指、かな。一番感じるところ、をくすぐるように優しく触れて、ほんの少し強めに触れられると息がつまって、苦しい。

「名字」
「ん…」

 名前を呼ばれて顔を上げれば、当たり前のようにキスされる。切島くんとキスをすると、すぐにぼーっとして、他のことが考えられなくなる。手も動かしたいのに、動かない。切島くんの手は変わらず、むしろ激しくなっていて、ぐぐっと押されて、気付いたらまた押し倒されていた。切島くんはすぐに押し倒す、癖があるような……気がする。失礼なことを考えたからだろうか。口の中で、触れられたくない上顎のところを舌先で擦られて、腰が浮いてしまう。とろり、と自分の中から溢れ出るような感覚がして、足を閉じようとしたが無理だった。

「……え、え」
「はぁ…名字悪い、ちょっと」

 切島くんが悪いと言うときは大抵恥ずかしい思いをさせられる。そんなこと、もう、知っているのに同じ目に遭ってしまうのだ。惚れた弱みとしか言えない。恥ずかしさから逃げるように、私は目の前の枕に顔を埋めた。


***

 無意識のうちに、喉が鳴る。目の前の名字の態勢にエロいとか思っている余裕はなくて、俺は彼女の背中に覆い被さった。柔い太ももに挟むように、俺の熱の塊をこすり付ける。そこの、とろとろは指で知ってたけど、自身で感じるのとやっぱり違う。彼女の細い首に唇を押し付ける。意識しなくても、勝手に腰が動く。彼女の腰を逃げない様に捕まえると、彼女の肩がぴくりと跳ねた。後ろから見るからこそ、かわいい。彼女の背中と俺の胸板はぴったりとくっ付いてるから、彼女の動きが全て伝わってくる。あー、ほんとに、名字かわいい。えろい。彼女だったら耳を塞ぎたくるような、ぐちゅぐちゅと濡れて交じり合う音が部屋に響く。

「…ふ、…んん、…」
「名字…」
「ひ、そこ…みみ、だから」
「ん、しってる」
「そ、じゃなくて…」

 彼女の耳の輪郭をなぞるように舌先で触れて、欲求のままに彼女の耳の穴に舌を入れる。その光景がまるで、彼女としたい先の行為に見えて、腰の動きが激しくなる。彼女の中に入れたい、という欲求はもちろんある。でも、それは……ちゃんと、してから。自分なりの、ケジメ。……でも、やっぱ、入れたい。その欲求が我慢できずに、彼女の中に触れたいと言う気持ちを、真っ赤になった耳にぶつけてしまう。

「…んんっ、やあ」
「名字っ…」

 逃げるように身体を起こそうとする彼女に体重をかけると、彼女はへにゃりとベッドに沈み込んだ。俺の腕の中に居て欲しくて、投げ出された小さな手のひらに自分の手を重ねて握りしめた。腕一本だろうが、俺の届くところにあってほしい。もう片方の手で、彼女の腰を支える。彼女の感じやすいところを突くように腰を動かした。びくびくと、彼女の腰が揺れて、太ももがぎゅうとしまる。強い刺激に、声がもれた。

「…うっ…、…」

 息を整えていると、彼女の真っ赤な耳が目に入った。彼女の真っ赤な耳は丸くて、柔らかい。噛み応えがよさそうだ、と思った。噛んだら、気持ちが良さそうだと。彼女の身体に指を沈めるのは何処でも気持ちがいい。噛んでも、気持ちがいい。だから、つい、噛んでしまった。躊躇いもなく、がぶりと。




「本当にごめんっ!」
「……」

 あの後、彼女の身体にぶっかけるわ、彼女の耳を噛んで思い切り出血させるわ、で後処理が大変だった。彼女はそもそも事態を把握できず、ただ耳を押さえて痛いと涙ぐむ羽目になってしまったのだ。

「…いや、大丈夫だよ…?
 びっくりしたけど……、それに個性で基本傷は治せるし」
「えっ……」
「な、なんで、そんな残念そうなの」
「いや…、そうだよな。身体に傷はねぇほうがいいよな……悪い、名字。
 俺……、正直…、ちょっと残念に思ってる」
「え」
「……名字に、俺の痕……な、なんでもねぇ!」

 また彼女を困らせるようなことを言いそうになった。口を無理やり閉じれば、彼女は俺のベッドに潜り込んだ。

「じゃあ、今日は切島くんの部屋泊ってもいい?」
「…え、…」
「個性使って帰ったら、どの道消えちゃうし。…ちゃんと皆が起きる前に帰るよ」
「……おう」

(痕のことも、嬉しいけど……。いつも名字が帰ってからの部屋って、あんま好きじゃねぇんだよな…だから名字と朝まで一緒ってのはめっちゃ嬉しい)
(…切島くんに想われてるって思っても、いいのかなぁ。今は仕方ないけど、いつか二人で朝寝坊とかできたら……いやいや現実見よう)

あとがき

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