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仗助の元を訪れた奇妙な兄弟。

彫りが深い顔立ちの大柄な兄の方は少し仗助と似ていて、歳の離れた義理の弟は小学生くらいなのに、どこか大人びた雰囲気を持つ綺麗な少年だ。
全く似ていない2人だが、見るからに西洋人の血を引く兄弟は同じ緑の瞳を持っていた。



「…と、いう訳で君にはいずれ、ジジイの財産の3分の1が行く事になる」

バスを降りた承太郎達は住宅街を歩きながら話を続ける。
何故承太郎達が仗助に接触しに来たかは、バスの中であらかた説明し終えた後だ。


「ジジイの浮気がバレて今、ジョースター家は大騒ぎさ」
「え!大騒ぎ…なんですか?」

それまで、出生や遺産の話には現実味が無いのか淡白な反応だった仗助が焦る。
仗助の変化に承太郎は悪戯めいた笑みを浮かべ…

「ああ、おばあちゃんのスージーQが結婚61年目にして怒りの頂点ってヤツだ」
「承太郎、悪い顔ー」
「そ、そんな…」

すると、唯一承太郎の言葉を真に受け、顔面を蒼白させた仗助が勢いよく頭を下げる。

「す、す、すみませんです──ッ!俺のせいでお騒がせしてッ!」
「おい?ちょっと待ちな。一体、何をいきなり謝るんだ?」

次に、仗助から予想もしない言葉が飛び出した。

「いえ…えと…やっぱり家族がトラブル起こすのはマズイですよ」
「へ!?」

(そ…そっちの心配するワケェー!?)

知らなかったとはいえ、今まで息子を放置しておいていきなり相続問題の為に身内を寄越してきた身勝手な父親への怒りをぶつけるでもなく、逆にこちらの家庭を気遣う仗助に九龍は面食らう。

まあ、実はジョセフも息子と16年間知らずに苦労を掛けさせた浮気相手を酷く気にしていて、本当は自分が彼らに会いに行きたがっていたらしいが。
無論、止められたのは言うまでもない。

「オレの母は真剣に恋をしてオレを産んだと言ってますし、オレもそれで納得してます。オレ達に気を遣わなくていいって、父親…えーとジョースターさんに言って下さい」

遺産は法律が絡むのでその時に相続権利を放棄でもしないとどうにもならないが、仗助は実の父親と今更関わりを持とうとは思ってないらしい。


(真剣に恋、か…)

九龍を産んだ女性も、同じだったのだろうか。

九龍の父…DIOの糧となった女性達は皆、自ら望んで血と命を捧げていた。
皆、満足そうに殺されていった。
つまり、真剣に彼に恋をして死んだという事なのだろうか。

実の母を知らない九龍は、実の母が自分を産んだ後にどうなったのか知らない。
生きているのか、他の餌同様に殺されてしまったのか。
特に関心を持った事も無かった。

『母』は九龍の中でホリィただ1人だったから──…


「あっ、仗助君だわっ!」


九龍が物思いに耽っていると、どこから現れたのかキャピキャピした少女達がいつの間にか仗助を取り囲んでいた。

「仗助くーん」
「一緒に帰ろーっ」
「今日も髪型カッコイイわよっ」
「え…あ…仗助ー」

これでは話が出来ない。

「オイ仗助、まだ話は終わってない。くだらねー髪の毛の話なんて後にしな」

承太郎の持ってきた話は安易に部外者の一般人に広める訳にはいかない内容のモノだ。
大人になっても気の短い部分の残る承太郎は邪魔者の登場に苛立ち、仗助に女子高生達を遠ざけろと伝える。

しかし、その時…

仗助の雰囲気が変わる。
まるで先程と同じ様に。

「テメー、オレの髪の毛がどーしたと?」

(かみ…のけ…?)

「ヤバイよアイツ…」
「仗助は髪型貶されるのが1番嫌いなんだからね!」

仗助の事を知る女子高生達の発言に、九龍はハッと目を見開く。
そうだ、不良をブチのめした時も仗助は頭の事を言われて豹変したのだ。

仗助のスタンドの拳をスタープラチナが受け止めると、仗助のスタンドはようやくその全身を現した。

「コイツがッ!この仗助のスタンドかッ!」

凄いパワーだ…
だが、スタンドでの戦闘経験は圧倒的に承太郎が上。

「何ッ!?」

時を止め、背後を取った承太郎は自身の拳で仗助の顔を殴った。

「きゃあー仗助っ!」
「仗助君っ!」
「喧しいッ!俺は女が騒ぐとムカつくんだ!」

なんて理不尽な…

「承太郎。こういうの、大人げないって言うんだよ…」

兄に対し九龍は呆れるが、一喝された少女達はぽーっとした表情でおとなしくなった。
それでいいのか、女子高生達。


「仗助、お前に会いに来たのには2つ、理由がある。1つは既に話したが、もう1つは…この町には危険なスタンド使いが潜んでいる」

そう言って承太郎が取り出したのは、複数枚の写真。
どれも普通の写真では有り得ない物が写るそれは、何も知らない傍から見ればさながら心霊写真だ。
勿論、心霊写真などでは無い。

「ジジイが息子のお前を念写しようとすると、いつもコイツが写った」

これが念写能力のスタンドを持つジョセフがいながら、名乗られるまで仗助に気付けなかった原因だ。
初めて念写を使ってDIOの存在を見つけてしまった時と同じく、ジョセフの念写はスタンド使いの存在によって左右されやすい。

写真に写る死刑囚もまた、スタンド使いだ。

「オメーには関係ねー事だが、一応用心しろ。俺はコイツを見つけるまで、この町のホテルに泊まる事にする」

脱獄した死刑囚が、スタンド能力を良い方向に利用するとはとても思えない。
ならば結論は1つ、同じスタンド使いである承太郎が彼を捕らえなくてはいけない。

「ちょいと待ちな、この男は一体…」
「明日、また会おう」

自分の用件だけ伝え終わると、連絡先を渡し、承太郎は九龍の手を引いてさっさと立ち去ってしまった。


>>仗助の存在を通して主人公は自分の出生やDIOの事で悩みます。
その為の息子設定です(ゲン○ウ風に)


 



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