03 館の2階にある学習室は使う住人がいない為、現在は九龍専用の遊び部屋へと改造されている。 今日も九龍は遮光カーテンが閉じられた部屋の中。 カーペットの上にアルファベットとイラストが描かれた正方形の積み木を広げ、遊んでいた。 「B、I、R、D。…鳥」 「セイカイデス、九龍サマー」 この部屋には九龍1人しか居ない。 ならば、もう1つの声は何なのか。 「H、O、R、S、E…あれ、ねえSはどこ?」 九龍は子供用の机に座る、もう1つの声の主に訊ねる。 「SハAノシタデスヨ」 「Aの…あ、本当。ありがとう」 コンコン… その時、廊下に続く扉がノックされ、ガチャリと開いた。 「──失礼致します、九龍様」 入ってきたのは特徴的な髪型の20代くらいの男。 「ディナーのご用意が出来ました。さ、お片付けをしてDIO様の元に参りましょう」 「うん」 アルファベットの積み木はケースの中。 他のおもちゃは玩具箱の中。 九龍は1体の人形を抱き上げる。 「ヤ、ヤメテ!トジコメナイデッ!オネガイシマスー!」 「………」 突如、喋りだす人形。 だが九龍も男も動じない。 「おや、困りましたねえ」 「ダービー?」 九龍にダービーと呼ばれた男は、冷たい瞳で人形を見下ろす。 「九龍様を困らせる遊び相手は、交換するしか無いな」 「ヒィイ!」 元々、ダービーのスタンド能力で人間から魂を抜き、人形に入れたコレクションの内の1つ。 それをおもちゃとして九龍に与えていた。 「申し訳ございません、九龍様。明日、代わりのお人形を差し上げましょう」 「……うん」 抱いていた人形をダービーに渡し、九龍は扉に向かった。 †††††††† 「…見られているな」 食事中、DIOは不快げに呟いた。 『見られている』 その言葉に九龍もきょろきょろと部屋中を見回す。 しかし、部屋にはDIOと九龍の2人しかいない。 食糧だった女は、既に息絶えている。 「ダディ、誰が見ているの?」 首を傾げ、九龍は父に訊ねる。 「ん?そうか、お前は気付かないのか。このスタンドと同種の能力の持ち主…それが私達を視ていたのだ」 そう言ってDIOはスタンドを発動させた。 腕に巻き付く茨。 DIOの首の傷が薄れ、身体が馴染む程に比例して弱くなっていく、もう1つのスタンド。 恐らく、本来ジョナサン・ジョースターが持っていた潜在能力。 スタンドは同じ血を引く者がその力に目覚めると、呼応する様に血縁者もまた、スタンドを発現させる。 そして、血縁者同士のスタンドは近い能力を持つ場合があるのも特徴だ。 現に、DIOの血を濃く受け継いだ九龍のスタンド能力は──… 「フム…ジョセフ・"ジョースター"、か」 「……?」 ポラロイドカメラから印画された1枚の写真を見て、DIOはそこに写る、逞しい体格を持つ銀髪の老人の名を読み上げる。 ジョセフという名は九龍は知らない。 だが、『ジョースター』という姓だけは父の口から何度も聴いていた。 「ジョースター…ダディの知り合いなの?」 「ああ、パパの敵だよ」 >>DIOの館の見取り図はどうなってるのかよく分からないです。 とりあえず、あの構造だとDIO様は日中トイレに行けない(笑) |