29 あの岸辺露伴が行方不明になった九龍と接触していた。 (間違いねーぜ…アイツが、チビをッ!) 奴なら漫画を描く為だとか下らない理由でやりかねない。 善悪など関係無く、平気で自分のやりたい事をやる男だ。 一戦交えた出来事が記憶に新しい仗助は確信を抱く。 それは、彼のスタンド攻撃を受けた康一と億泰も同じ。 「早く九龍君を助けないとッ!今頃、一体どんな目に遭わされてるか…」 ピーンポーン 「………」 何度呼び鈴を鳴らしても、岸辺露伴は出てこない。 「ああ?留守かぁ?」 「…って決めるにゃーまだ早いぜぇ。特に、あのヤローはな」 静かに怒りを燃やし、仗助はスタンドを出す。 「お邪魔しま〜…ドラララララララララ──ッ!」 ガオン! 「…ぁ〜す」 仗助が破壊したドアから、3人は堂々と玄関から家に上がる。 「騒がしいと思えば…また君達か」 早速、家主が出迎える。 本人の言葉通り、物音に気付いたのだろう。 わざわざ部屋に向かう手間が省けたというものだ。 3人は露伴に詰め寄った。 「岸辺露伴、てんめェーッ!チビをどこにやりやがった!?」 「露伴先生!九龍君を返して下さいッ!」 「返さねぇーとなぁ、おっかねえ九龍の兄貴にボコられるぜぇ!」 億泰の脅し文句に、九龍を返しても返さなくても承太郎が露伴をボコる未来は変えられそうに無いだろうと仗助と康一は一瞬思ったが、訂正しなかった。 オラオラ3ページ超えは確実だろう。 「返す?だが断……何の事かな」 「テメーッ!今誤魔化しやがったなぁッ!?」 「やっぱりアンタが犯人かー!」 言質を取った所で、仗助は露伴をぶん殴り、先日訪れた彼の仕事部屋に駆ける。 「オイ、チビ!?おチビー!いるなら返事しろー!」 勢いよくドアをぶち破り、部屋に乗り込む。 そこで仗助が見たものは──… 「………」 「おチビ?オイ、どうした?なあ!?」 九龍は部屋の中の椅子に座っていた。 だが、いくら仗助が呼び掛けても返事が無いのだ。 目を開けている、呼吸だってしているはずなのに… 虚ろな瞳は仗助を映さず、何処か遠くを見ていた。 起こす為に揺さぶった身体は、恐ろしい程に軽い。 「チビ、しっかりしろ!」 息はある。 けれど、この状況は仗助の中で、祖父を失ったあの日と重なってしまう。 「仗助?」 「仗助君?九龍君は?」 追い付いた2人とすれ違い、仗助が向かうのは自身が殴り飛ばした露伴の元… 「ぐっ…」 胸倉を掴み上げ、仗助は怒りを燃やしながら問う。 「起きろ、岸辺露伴。テメェ…チビに何しやがったんだ?あ゙?」 あの時の様に手遅れにはさせない。 「答えろッ!」 「仗助君!どこ行ってたの!?」 部屋に戻ってきた仗助は机の上にある分厚い紙の束を手に取った。 「………」 露伴が自身のスタンドで奪った、九龍の人生の体験。 幼い頃の記憶に当たるこのページを奪ってから突然こうなったと、露伴は吐いた。 もし、これが原因なら、ページを戻せば九龍を元の生意気な九龍に戻せるかも知れない。 「ゼッテー、じいちゃんの時の様にはさせねぇ…すぐに直してやるからな、おチビ」 仗助は自身のスタンドで破れたページを九龍の中に修復させる。 「う…」 「…あれ?」 数回、ぱちぱちとまばたきをし、九龍は自身の顔を覗き込む人物を見上げる。 「仗助…?」 「だ、大丈夫か?」 怖いくらい真剣な表情をした仗助の問い掛けに、九龍は恐る恐る頷く。 「僕、変なお兄さんに声を掛けられて、目を覚ましたらこの部屋に居て、それから…」 その後の記憶が、無い。 「九龍君は岸辺露伴のスタンド攻撃に遭ったんだよ」 「岸辺露伴…あの人が?」 先日仗助達が遭遇したという、虹村形兆に射られて目覚めたスタンド使い。 存在と能力だけは知っていたが、まさか遭遇するとは思わず、すっかり油断してしまっていた。 「ごめん…仗助が、助けてくれたの?あ、ありがとう…」 「いいって事よ。オメーが無事ならな」 紅潮した顔を俯かせ、九龍が礼を述べると、仗助は九龍の癖っ毛をわしゃわしゃと撫でた。 しかし、もっと九龍を心配している保護者が存在する。 「承太郎ー!」 承太郎の元に帰ったその日から、承太郎の過保護ぶりに拍車が掛かり、九龍の単独行動が制限されてしまったのは最早言うまでもない。 >>仗助君はヤンデレの素質があるなぁ、とつい… |