26 しかし、待てども仗助達は戻って来ない。 (大丈夫かなぁ、あの2人…どこまで行っちゃったんだろう) とりあえずこのままではマズいので九龍は承太郎に連絡を取って状況を説明し、到着したバスに乗り込んだ。 電話の向こうで承太郎が口癖のやれやれだぜ、をいつもの数倍増しに呆れた様に呟いたのは、最早お決まりのパターンだ。 九龍が東方家に到着すると、朋子が庭で水やりをしていた。 近くに仗助達が隠れている気配は無い。 このまま億泰の所に行こうか、と九龍が歩き出そうとした時… 「あら、貴方は確か…」 「!」 九龍の姿に気付いた朋子は水やりに使っていたホースを投げ出し、九龍の元に駆け寄る。 「この前の!ジョセフの孫の、名前は九龍君、よね?仗助から聞いたわ!」 「こ、こんにちは…」 ──捕まってしまった… 「ケーキは好き?折角買ってきたのに仗助の奴、今日は帰り遅くなるっていきなり言うんだもの。九龍君食べちゃって」 「いえ、いいです、お構いなく。仗助に悪いから…」 朋子にもてなされながら、仗助が帰りが遅くなると言った原因は、ジョセフの為だろう。 その仗助とジョセフは現在行方知れずになっている事を、朋子は知らない。 「承太郎さんは、まだこっちに居るのよね?」 「うん…」 九龍に訊ねる朋子の目は熱っぽい。 先日の様子といい、どうやら承太郎に強く関心を持っている様だ。 あの後も仗助が、朋子が承太郎達の事を強く追及してきて困ったと愚痴を零していたのを九龍は思い出す。 「承太郎、結婚してるから。子供もいるから」 「あら!そうだったの?」 念の為に釘を刺しておくと、朋子は驚いたのち、残念ね…と、がっかりした様に肩を落とす。 その様子に、九龍の中である疑問が生まれる。 「…朋子…は、どうしてジョセフを好きになったの?」 「えっ?」 「だってジョセフ、朋子が出会った時はもうおじいちゃんだったでしょ?子供のホリィには承太郎がいたんだよ?」 九龍の言葉に、朋子は微笑む。 「そうよね。でも、ジョセフが…とても素敵な人だったから。だから、好きになっちゃったの」 そう言い切ると朋子が九龍の顔を覗き込む。 「九龍君は『お祖父ちゃん』が嫌い?」 「今は…許せない。ホリィも承太郎もスージーも好きだから、皆と仗助と朋子を困らせるジョセフは、好きじゃない…」 本当の家族じゃない九龍を受け入れてくれた、大切な人達。 彼女達が悲しむのは、嫌だった。 「大好きなのね、お祖父ちゃん達が。九龍君を困らせて…ごめんね」 違う、と九龍は口を開こうとした。 すると、優しい温もりがそっと九龍を包む。 「朋子は、悪くないよ」 ──ホリィと同じ匂いがする。 抱きしめられながら、思い出すのはいつかの出来事。 (あったかい…お母さんって、皆こんな風なのかな) †††††††† 「ただいまー」 迎えに来た承太郎と共にホテルに戻り、九龍はジョセフが泊まる隣の部屋に入る。 そこで見たモノは──… 「…ジョセフまた隠し子?」 「ち、違うわい!こら、待つんじゃ九龍!九龍〜!」 >>主人公が男女関係に潔癖なのは無意識にDIO様からの反面教師。 |