44 『このワシの攻撃から逃れるなんて…ちくしょう!お、お前!いや、お前らッ!戦い慣れしてるなッ!ちくしょうッ!』 囚われた吉良の父親は写真の中からポラロイドカメラに手を伸ばそうとする。 「おっ!コイツ外に出れますぜ!幽霊だからなあ〜どうします、コイツ?」 仗助は少し楽しそうに承太郎に問う。 カメラのシャッターボタンに老人の指が届きそうな瞬間、スタープラチナの拳がポラロイドカメラを叩き壊した。 ドゴオォン 『ひっ…!!』 これで吉良の父親の戦法は封じた。 「逃げられない様におとなしくしててもらうぜ。この家の中に俺達に『見つけられては困る何か』がある…だからこそ、お前は攻撃してきた。ゆっくりと探させてもらうぜ」 『おぉおおおっ』 承太郎は写真をきっちり半分に内側に折り曲げると、引き出しから探し出したテープで写真をぐるぐる巻きにし、画鋲で柱に突き刺す。 『ギャアーッ』 どこかに刺さったのかも知れないが、それを知るのは本人のみ。 「なるほど、折ってピッタリ面と面を合わせれば出口が無い。こりゃ逃げられんわー」 感心する億泰は柱に磔にされた写真を眺めていた。 「どれ…その見つけられては困る物は当然、このカメラより奥の部屋だな。二部屋しか無い。…億泰と康一君はこの部屋、俺達は右側の部屋を探そう」 その後、隣の部屋を捜索し始めた承太郎達だったが… 「騒がしいな」 億泰と康一が何か騒いでいる。 そちらを見上げながら、仗助はタンスの1番下の引き出しを引いていた。 「少し見てくる」 「うん、分かった」 九龍と仗助に後を任せ、承太郎が康一達の所に向かった。 「承太郎さんッ!に、逃げられた…!!」 慌てて億泰が磔にしていた写真を開くと、写真の隙間から糸が飛び出し、古い壁の隙間に向かって伸びる。 「えっ!?」 伸ばした糸を辿り、写真は壁の隙間に向かって移動していく。 「騙されたな、間抜けがァ〜!」 吉良の父親は自身の服の繊維を解き、糸にしたのだ。 壁の隙間に潜り込み、写真は九龍と仗助の居る部屋に向かう。 それとほぼ同時、九龍と仗助が居る部屋でも異変が起きていた。 「こ…これはッ!何故これがここにあるんだ…まさかッ!」 自分が開けた引き出しの中身を見て、仗助は驚愕する。 「仗助?どうしたの?」 「み、見ろ…『弓と矢』だ。オレ達が回収したはずの…」 仗助が引き出しの中から取り出した物を見て、九龍は目を見開く。 「な、何で…どうして…?」 「い、一体何だッ!?SPW財団で保管してあるはずの『弓と矢』がッ!もう一組あるのか?」 まだ2ヶ月も経っていないのに、酷く懐かしく感じる… 億泰の兄が所持し、音石明に奪われ、その行方を追いながら彼らが目覚めさせたスタンド使いとの出会いと闘い。 スタンド使いを生み出す道具、『弓と矢』がそこには在った。 「九龍!仗助!気を付けろ、吉良の父親が逃げた」 「えっ」 戻ってきた承太郎の言葉に2人は振り向く。 その一瞬の隙に、吉良の父親は仗助から矢を奪い取った。 「何っ!?」 「あーっ!」 「?」 突然、矢が消えた事に仗助と九龍は驚く。 しかし、事情を知らない承太郎は怪訝そうに2人を見る。 「弓と矢だ…何であるんだよォ〜ッ!?弓と矢が何で吉良の家にあるんだァ!」 遅れてやって来た億泰達も仗助の言葉の意味が分からず、不思議そうな顔をしている。 「弓と矢っスよ!それを今、奪われたッ!今、握ってたのによォ〜」 「何の事だ?弓と矢…SPW財団が完全に管理しているが…」 「あったんス!今!何故かもう1組あったんスよォーッ」 「絶対、同じのだった!」 仗助は引き出しの中に残されていた弓を一同に見せる。 「!!」 見覚えのあるそれに、承太郎はようやく仗助達の言葉が真実だと気付く。 「やばいッ!逃げられるッスよ!このままではやばいッ!吉良の父親がオレ達に見つけてほしくなかったのは…『弓と矢』だったんだッ!」 その時──… 「カアアアーッ」 屋根の上からカラスのとても苦しそうな鳴き声が聴こえた。 鳴き声を聴き、窓の外を見る一行。 「クエーッ」 窓の外…空の上では、どこかで絡まってしまったのか首を糸で絞められながらカラスが飛び立つ。 しかし、カラスの首を絞める糸の先を見て、九龍は叫ぶ。 「あーっ!!幽霊の写真!あんな所に!矢も持ってる!」 「何ィイ!?」 糸の先には、吉良の父親が入った写真があった。 手には仗助から奪い取った矢も持っている。 吉良の父親は糸を手綱の様に操り、どんどん家屋から離れていく。 最早、承太郎達のどのスタンドも射程範囲外だ。 『フハハハハハハハ──ッ!』 「や…野郎ォ…」 「ク…クソ〜、オ…オレのせいだ。オレが…写真のテープを開けたりしなければ!」 「いや…億泰。奴の方が『上手』だった…あの父親にしてあの『息子』あり、といったところだ。あの親子の決して諦めない、生き延びようとする執念にしてやられたんだ」 残された弓を手に、承太郎は吉良の時を思い出しながら語る。 「で…でもよぉ〜っ、何故!?何で弓と矢を吉良の父親が持ってんスかーーッ!?」 「『弓と矢』か…成程な…1組だけではないと思っていたぜ。嘗てDIOという男とエンヤという老婆は短い期間で30人近いスタンド使いを世界中から集めた」 「………」 その『30』という数字は、10年前に承太郎達が戦ったスタンド使いの数から出た数字なのだろう。 九龍の父はそれだけの数のスタンド使いを、承太郎達を殺す為に送り込んだ。 「何故、短期間にそんなに集められたのか不思議だったが…これで分かった。DIOは何組かある弓と矢で世界中に仲間を作っていたんだ。多分、吉良の父親はエンヤという老婆から手に入れた」 それは生前、大切な息子の為に。 「そして一方で億泰の兄、形兆も後に別の弓と矢を手に入れ、この町にやって来た。2組あるのは問題じゃあない…問題は、あの父親は息子を守る為、これから間違いなくあの矢を使う…という点だぜ。俺が恐怖を感じるのは…そこだ」 †††††††† 「もしもし、ホリィ。うん…え?……へえ」 今日も九龍が母と電話をしている。 承太郎は朝食のコーヒーを淹れながらその様子を眺めていた。 「は!?……ああ、確かにまだこっちに居るけどね…」 暫くして通話を終えると、九龍は承太郎にホリィから聞いた話を伝える。 「スージー、ジョセフがこっち来たまま帰って来ないの不安がってるんだって」 「…まあ、そうだろうな」 隠し子と浮気相手が住む所にもう1ヶ月以上も滞在しているのだ。 浮気相手とは一度も再会していない事実など、アメリカに残されたスージーQは知る由もないのだから。 「ホリィ、心配だからスージーの所に行くんだって。だから、僕とジョセフがまだこっちに居るのか訊いてきた」 承太郎がやれやれだぜ、と決まり文句を呟くと、九龍がジトッと冷ややかな目で見上げる。 「それ、承太郎は人の事、言えないって言うと思う」 >>4部の期間は3ヶ月以上なんですね。 |