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他人に成り代わった吉良吉影を探す為、駅を利用する人々の姿を撮影し、その身元を洗っていた岸辺露伴から気になる情報が入った。
1人の小学生男子が、通勤中の自分の父親をまるで盗撮するかの様に隠れてビデオカメラで撮影している姿が、写真に写っていたのだという。

少年の名は、川尻早人。
そして父親の名前は、川尻浩作。

露伴は川尻早人に接触する為、明日の朝に彼らが住む場所に集まる事を承太郎達に提案した。


「よく分からないけど、子供が父親を盗撮するのって変な事なんだよね?」
「そうだな。余程の理由が無きゃ、やらないだろうぜ」

夜、グランドホテルに泊まる面々は1つの部屋に集まっていた。

「余程の理由…」

露伴から渡された焼き増しした写真を眺めながら、九龍は『理由』を考える。

「…父親の浮気調査?」
「九龍、ワシの方を見ながら言うんじゃあない!」

父親と息子、目の前の人物から真っ先に思い浮かんだのは、それだった。

「ジョセフ、帰ったらスージーにちゃんと謝った方がいいよ。ジョセフがこっちに来てるの、凄く気にしてるらしいから」
「うーむ、そうじゃのう…」


とにかく手掛かりが無い以上、不審な行動の原因がただの家庭間の問題だろうと、吉良吉影に繋がる可能性が1%でもあるなら調べなければならない。



††††††††


8時30分、川尻早人の自宅近く
で承太郎、九龍、康一は露伴と合流した。

「やあ、久しぶりだね」
「!」

「…?どうした、九龍?」

九龍と露伴の間に何が起きたか知らない承太郎は、自身の後ろに隠れる弟の様子に首を傾げる。


「川尻早人は、学校か」

時刻を確認しながら、承太郎が呟く。

今日は平日…
一般的な子供なら学校に通っている。
康一と、彼らが到着を待つ仗助達も学校にいなければならない時間なのだが、サボりだ。

「学校…」

ふと、九龍は小雨が降る雲に覆われた暗い空を見上げた。


その時──…

「!」

承太郎と九龍は同時に後ろを振り返る。

「どうかしましたか、承太郎さん?」
「九龍君?」

康一と露伴には何も聴こえなかった様だ。

「いや…なんでもない。…雨の音が仗助の声に聴こえたと思っただけだ」
「これが、空耳!…って言うのかなぁ?あれー?」

仗助、という単語に露伴は苛立ちながら反応する。

「どうせアイツ、寝坊でもこいてんだろう…あと5分待って来なかったら、僕は仗助どもを置いて川尻早人の小学校へ行かせてもらいますよ」

いつまで経っても現れない待ち人…
元々露伴には、彼らを待つ義理など無いのだ。


やがて雨が上がり、承太郎達は川尻早人が通う学校へと歩き出した。

グオオオオン

──すると、耳をつんざく爆音が閑静な住宅街一帯に響く。

「な、何!?今、凄い音した!」


今度は空耳などではない。
近くの民家の住人達も何事かと、窓やドアを開けて顔を出す。

「何があったんだろう?ガス爆発かな…」

康一の言葉に、九龍が視線を上に向けると、つい先程まで承太郎達が集まっていた場所の近くから煙が上がっていた。
元来た道を引き返すと──…

「ほら!承太郎さん、きっと今の大きな音はあの家からですよ」

やはり火元と思われる場所は先程通り過ぎた民家の1つだった。
タイミングが悪ければ、承太郎達も巻き込まれていたかも知れない。

「こういうの、間一髪って言うんだよね…危ないなあ」
「そんな事よりも僕はくそったれ仗助達なんかもう待てん!川尻早人を探しに行くからな!」

痺れを切らした露伴が歩き出す。
しかし、すぐに立ち止まる。
承太郎達が居る道路の向かい側に酷い怪我を負ったサラリーマンが現れたからだ。

「み…見て下さいッ!あの人、怪我している!」

爆発音と民家からの煙に、野次馬や通報を受けた消防車、救急車が続々やって来る。
民家は煙だけでなく、外観も窓ガラスが割れて酷い有様だ。

「あ…!誰か居る!」

煙の中に見える複数の人影が、外に出る為にこちらに向かって近付いて来る。
民家の中から出て来た人物の姿に承太郎達は驚いた。

「仗助君と億泰君もいるぞ!」
「仗助!」

仗助と億泰、そして小学生くらいの少年。
サラリーマンと同じ様に仗助も怪我を負っている。
初めて会った相手だが、少年には見覚えがあった。

「あの小僧は写真の『川尻早人』…」

露伴は所持していた写真と見比べながら呟く。
いや、川尻早人だけではない。
目の前に居る、怪我をしたサラリーマンも…

「そして、あの男は『川尻浩作』だ。どうやら…話が見えてきたようだ」

いち早く承太郎は状況を察する。
仗助と共に出て来た川尻早人は、まるで親子とは思えない他人行儀で敵意ある言葉を川尻浩作にぶつけていた。
仗助と億泰もまた、川尻浩作に敵意を剥き出しにしている。


「ゆ、夢だ…これは夢だ。この私が追い詰められてしまうなんて、きっと…これは夢なんだ…」

承太郎達と仗助達に囲まれ、道路のど真ん中で川尻浩作は力無く呟く。

「もう、お前には…どこにもよォ〜」
「逃げ道は無い様だなぁ」

川尻浩作を取り巻くのは、承太郎達や仗助達だけでは無い。
救急車や消防車から出てきた職員達が野次馬の侵入を防ぐ為、民家の周りをテープで囲い、救助活動や消火活動を始めようとしている。
彼らや野次馬は、本当にこれがガス爆発事故だと思っている様だ。

『"キラークイーン"!この指先はどんな物質だろうと、爆弾に変えられる…そして、それに触れたモノは爆破される』

九龍は『吉良吉影』の言葉を思い出す…

「じょ、仗助君のあの負傷…」
「僕らが待ってる間、既に闘いは始まっていたのか…という事は」

自分達は『彼』を探す為に手掛かりを求め、此処にいる。
彼は己のスタンド能力をこう語っていた。
今、この場所で、仗助達が戦う相手。

それは──…


「コイツが『吉良吉影』!」


>>主人公はジョセフをからかって遊んでます。

 



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