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×××追いかけないでね(ピーターマキシモフ)

完全に油断していた。
廊下の窓から校舎の出入り口付近でだるそうにドリンクを啜っている派手な銀髪を不幸にも視認してしまい、すぐロッカーの前に戻り、その場でうめき声を上げそうになるのを必死にこらえ、それから先生らが彼を不審者として対応、つまみ出してくれる時をただ待った。少しも経たずにクラスメイトどころか学年の子らがにわかにざわつき始めた頃、ようやく願いが通じたのか、学校内で1番の強面の先生がズンズンと彼に近づいて行った。拗れろ!拗れろ!頼む!
……。
…………なんか思ったよりまともに対応してるっぽい。先生の雰囲気が見るからに柔和になっていく。
……。
ついには先生が校舎に向かって大声でわたしの名前を叫び始め、廊下にたむろっていた連中の視線が一気にこちらへ集中して、思わずロッカーに頭突きをかましてしまった。

「なに!!!!!」
「デカい声出すなぁ。そんなに喜ぶなよ」
「そういうの良いから!!早く!要件!!」
大量の好奇心が乗った視線が痛い痛い痛い!この状況が恥ずかしくていたたまれなくって、1秒だって早くこの会話を終わらせたいのに、わたしがムキになって先を促そうとする様子を見てなんということか、ピーターは笑いを堪えていた。中身の入っていないドリンクカップをゴミ箱に放り投げて、茶色い紙袋をわたしに差し出してくる。
「あっ、そっか、今日お弁当の日だったっけ」
「そ。玄関に起きっぱなしだった。言っとくけど中身は無事だから。……じゃ」
言い終わるか否かのタイミングで、ぶぅん、と目の前で風が巻き起こり、ピーターは居なくなっていた。……忘れ物届けてくれるだけなら、わたし呼び出さなくて良くない?
感謝はすれども、なんだか腑に落ちない。もやもやしながら歩いて行くうちに、ピーターの事より次の時間割の事で頭がいっぱいになってしまうのだった。
(2021/02/18/BACK)