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メグが変化に気づいたのは、あの最悪な日からすぐのことである。

「いい加減にして!放っておいてよ!」

またもやヒステリックになり叫ぶ羽目になった訳は一週間前から始まったある"変化"のせいだった。



はじめは気のせいだと思った。今まで騒ぎを嫌って避けていたせいか、それとも意識していなかったからかもしれないが、メグはこれまで校内であの双子を見かけることはあまりなかったはずだった。しかしー

「どういうつもりなの?」

最近はメグが行く先々にあの双子がいた。次の授業へ向かう時も、大広間へ向かう時も、あの2人組が楽しそうに騒ぎ立てているのが目に付くのだ。あろうことか、毎回メグを探しているような素振りを見せるため、見つからないように必死で隠れたり、人混みに紛れたり、避け続けた。ただでさえ浮いている自分だ、せめて静かで平穏な学生生活を送れたら、と願っていた。自分があの2人と変に知り合いだと噂されたらーメグは考えただけでぞっとした。

「メグ!」

そんなメグの努力も虚しく、ある日いつものように2人の目を掻い潜ろうとしたところ、不意に名前を呼ばれた。別段自分の名前は珍しいものではない。他の誰かを呼んだのかもしれない。色々な思考の逃げ道を考えたが、あの双子の目がメグを捉えていることは確かだった。周りの生徒が一斉にメグの方を振り向く。沢山の視線に耐えられなくなったメグは自分の名前を呼ぶ声を無視して寮へと続く廊下を駆け抜けた。

「最悪、最悪、最悪!」

何故私だけこんな目に合わなければいけないのか。小走りになりながらメグは自分の運のなさを呪った。あの時あの2人に変に言い返さなければ、こんなことにならなかったかもしれないのに。今更考えても仕方のない事ばかりが頭の中を巡った。最初は寮に戻ろうと思っていたが、なんだか気分が重く適当に湖の辺りをぶらぶらする事にした。今は誰にも会いたくないし、戻りたくない。きっと他の学生たちが、何故あの2人と自分が知り合いなのか疑問に思っているだろうから。むしろこっちが聞きたいくらいだった。何故私の名前を知っているの?

「私って本当...どうしようもないくらい馬鹿なのかしら。」

ふらふらと湖の周りを散歩しながらメグは一人つぶやいた。なんでよりによってこんな時に、こんな場所に来てしまったんだろう。思い出すのは嫌なことだけじゃないか。メグはしゃがみこんで深いため息をついた。なんとなく湖を見つめるとあの時の事を思い出してしまう。今日のようによく晴れた日だった。太陽の光を受けた湖の水がきらきらと反射して、今日は絶好のー

「散歩日和だな」

不意に後ろから投げかけられた声に、メグはびくっと肩を震わせた。声の主はメグの返事など最初から聞く気もないのか、そのままサクサクと地面を踏みしめてメグの隣に並んだ。

「やっと見つけた」

その言葉と同時に、メグは顔を覗き込まれた。声の主は言うまでもない。メグの視界の片隅には、あの燃えるような赤い髪がちらりと映った。



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