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「やっと見つけた」

そう言うと、隣の赤毛の青年もすとんと腰を下ろした。こんなところまで追いかけてくるなんて。メグはもう諦めたように彼の方を向くと、得意げな笑みが見えたので振り向いた事を後悔してまた湖を見つめた。

「こんなところまで追いかけてきて何の用なの?」

意識せずともイラついた口調になってしまう。メグは目も合わせずに、どちらかもわからない彼に問いかけた。そんなメグの態度をまるで気にする事なく、彼はメグの顔見て答えた。

「ずっと探してたんだ」
「そんなことわかってるわよ」

そんな事を聞きたいんじゃない。メグはまた不満げな顔で彼の目を睨み返す。

「ずっと私の周りでうろちょろして、気にならないとでも?おかげでここ最近いつも気になって寝不足だし、毎日見つからないように気を張ってー」

メグが言いかけた途端、違う、という強い声が響いた。驚いてまた彼の方見ると、ばつの悪そうに視線をそらして、ごめん、とつぶやいた。そして、今度は彼も湖の方を見てもう一度続けた。

「違うんだ」

何か懐かしいものを見るような彼の目に一瞬引き込まれたが、何が違うのよ、と慌てて言葉を返した。すると、彼はまたメグの目を見て優しく答える。

「俺はずっと前から君を探してた、君に会いたかった」

メグは驚きで瞬きをぱちぱちと繰り返すしかなかった。ずっと前から?会いたかった?何を言っているのかさっぱりわからない。そもそも私が二人組と出会ったのはつい最近で、それまではほとんど関わる事がなかったというのに。それに、向こうはいたずら好きの有名人でもこっちはただのスリザリンの生徒だ。

「嘘ね」

メグが少し考えた果てに出した回答だっだ。大体この態度の変わり様はなんなのか誰も説明してくれそうにないし、二人組のことは信用できない。

「一週間前、あなたは私の事を指差して嘲笑ったわ。そんな人の言葉誰が信じると思う?」

そう返すと、彼は、だからあの時は気が付かなくてーという訳のわからない事を言い始め言葉を詰まらせたのでメグはまたイライラした。混乱とイラつきで頭の中がぐつぐつと煮えてきそうだ。

「適当な事を言ってまた私のことを指差して笑いにきたんでしょ。そんなのお断りよ」

もう関わらないで、そう一言吐き捨ててその場を立ち去ろうとした。しかし動く事が出来ない。何故だろう、彼の大きな手ががっしりとメグの腕を掴んで離さない。気まずい沈黙の中、身勝手な行動にかぁっと頭の中の熱が上がるのかわかった。

「いい加減にして!放っておいてよ!」

一週間前と同じようにメグのヒステリックな声が響く。それに怯む事なく、彼はメグの目を見て静かに言った。

「俺は君をずっと前から知ってるし、ずっと探してた。二年前ここで君を見てからね」

今度はメグが言葉に詰まる番だった。二年前、ここで、思い当たる事は一つしかない。なんでよりによってこの人が。もうメグの頭の中はぐちゃぐちゃだった。

「...見てたの?」

絞り出したような震えたメグの声に、青年はゆっくりと頷いた。



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