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「なんなのそれ!?意味がわからないわ!」
部屋で響くケイトの声に苦笑いする他のルームメイトがちらほらとメグの方を見た。メグは慌ててケイトをなだめると、ケイトもしぶしぶとベットに腰を下ろしたがまだ気持ちは抑えられていないようだ。
「大体言ってることが支離滅裂なのよ!先に声をかけてきたのはそっちだし、メグは気を利かせただけじゃない!そもそも自分が聞かれても答えなかったんじゃないの!?」
一気にまくし立てたケイトは、満足したのか呼吸を整えると、でしょ?と最後にメグに尋ねた。確かにそうだ。先に話しかけてくれたのはバーティだし、メグも最初は彼自身について尋ねてみたりしていたが答えてくれなかったのも彼だ。ならどうすれば良かったのだろう。無理矢理にでも聞き出せば良かったんだろうか。でもそれは一番してはいけないことなのだとメグ自身はなんとなく気づいていた。彼の心の奥の傷に、彼の許可なく触れてはいけない。
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「ケイト、話を聞いてくれてありがとう。遅くまで付き合ってもらっちゃった」
「そんなの今更でしょ?お安いご御用よ。いつでもまた話は聞いてあげるから、メグもちゃんと寝るのよ。おやすみ」
「おやすみなさい」
そう言ったケイトからはすぐ気持ち良さそうな寝息が聞こえてきた。彼女と夢中になって話していて、数時間は経っていた。気がつけば時計の針は12時を少し過ぎ、日付が変わったことを示している。メグはベッドに入った後も眠れずにじっと天井を見つめていた。明かりは消され、真っ暗な部屋にも段々と目が慣れてきた。ますます眠れなくなった頃、メグはぐるぐるとまとまらない考えを巡らす。
「本当の友達になりたかった」
バーティの言葉がまた頭の中で響いた。本当の友達ってなんだろう。お互い全部をさらけ出すこと?なんだかそれも違う気がする。ケイトにだって、多分、秘密はある。私にもある。でも私とケイトは間違いなく本当の友達だと言える。 私とケイトは親友だ。確証はないけれど、そもそも本当の友達だったら「私たち本当の友達だよね」なんて、確認をする必要はないのだから。ただ気がついたらそばに居てくれた、ずっと一緒にいただけだ。
バーティだってそうだ。きっかけは違えども、図書館で毎日一緒に過ごしていた。楽しくおしゃべりもして、気づいたらお菓子の交換が始まって。私は毎日楽しかった。でもバーティは?楽しい振りをしているだけだったら?ずっと我慢していたら?よくよく考えたら、ただ慣れ行きで一緒に過ごすことになっただけかもしれない。バーティは優しいから私のために我慢して、無理をしてくれていたのかもしれない。離れなきゃ。バーティが嫌なら、私と一緒にいるのが辛いなら。バーティが辛そうに笑う姿なんてもう二度と見たくない。
でも、その前にもう一度だけ話がしたいの。
このまま、何もわからないまま終わりたくない。もしかしたらもうこのまま会えないかもしれない、話せないかもしれない。今度こそ本当に貴方が何処かへ行ってしまう気がして、今すぐにでも駆け出したい。
だから、最後にもう一度だけ会いに行こう。会って手を取って、あの瞳を見つめて、気持ちを伝えるの。本当の友達の証明なんて、そんなもの何処にもない。今、私の言葉なんて届かないかもしれない。信じてもらえないかもしれない。それでも、今のままじゃダメなんだって。私も私の気持ちに正直でいたい。
決意した頃には窓の外がぼんやりと明るくなっていた。今度はゆっくりと目を閉じる。すると瞼の裏に浮かぶ彼の笑顔が懐かしくて、思わず泣きそうになった。けれど、今は泣いている場合ではない。自分自身を奮い立たせるようにメグはゆっくりと深呼吸をして布団を深く被った。