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「低俗で最低な人」
「ヒステリックなスリザリン生」

お互いの第一印象は大体そんな感じ。
出会った日は最低で最悪な1日だった。



"最悪な1日"、それは朝起きた瞬間から始まった。目が覚めて、支度をしているとふと友人のアニーが申し訳なさそうな顔をしてメグの部屋へと入ってきた。どうしたの?と尋ねると、彼女の大きな緑色の瞳はやがて涙でうるうると滲み出した。

「メグ、あの、ごめんなさい。こんなつもりじゃなかったの...本当よ」

そう言って差し出された彼女の手には、メグがいつも身につけていたお気に入りのブローチが見るも無惨な形で彼女の掌の上にあった。ある日気がついたら胸元から消えてしまったそれは、母親から入学祝いに贈られたものだった。落としてしまった、とショックを受けていたメグは、完全に形を変えたそれが、自分の持っていた物だとはとても信じられなかった。

「アニー、何故あなたが私の落とした物を持っているの?」

泣きながら必死に謝る彼女を出来るだけ責めたくは無かったが、自然と声色が冷たくなる。

「談話室に落ちていたのを見つけたの。メグは毎日つけてたでしょ?だからすぐに返さなきゃって思ったんだけど、綺麗だったから一度つけてみたくて...でも誤って落としてしまってそしたら向かいからベスの猫が来て、それでね?くわえて行っちゃって...」

はぁ、とうなだれるしかなかった。こんなの朝から聞いていられない。謝罪を続けているアニーの声はもうメグの耳には入ってこなかった。スリザリン生にしては純粋だが、どこか抜けすぎている彼女のことがメグは少し苦手だった。こんなに目の前でわんわんと泣かれたら、まるで自分が悪い事をしているようで気分が悪い。もういいわ、大丈夫よと言ってブローチだったものを受け取ると部屋を出た。最悪な1日のはじまりである。

その後メグに起きた出来事の数々を知れば誰もが彼女に同情しただろう。朝の出来事でむしゃくしゃしていたメグは部屋を出てすぐゴーストには突っ込むし、階段で新入生でもないのに迷子になった。ようやく大広間に着いたころには今日提出だったレポートの存在を思い出して愕然とした上に、アニーだったかコニ―だったか誰かに貸した薬草学の本を返してもらっていないことも同時に思い出してまたイライラした。しかも今日はお昼の後に苦手な古代ルーン文字学の小テストもある。そんな憂鬱さを抱えながら受けていた魔法薬学の授業はもちろん集中できるはずがなく、危うく鍋ごと爆発させてしまいそうになった。スリザリン生のため多少贔屓はしてくれたのかもしれないが、スネイプ先生のお説教はネチネチと嫌味ったらしかった。そのことを引きずって受けた古代ルーン文字学のテストの出来は言うまでもない、酷い1日だ。

さらに極めつけは1日の終わりに起こった。

「今だ!相棒!」

疲労困憊のメグが、もう今日は早く寮へ戻ろうと廊下の曲がり角を曲がった瞬間、短いかけ声と共に、バン!という音がして目の前で何かが弾けた。何が起こったのかわけがわからなかったが、鼻につく酷い匂いとドロドロとしたものがメグのローブを汚していることに気づいた。いきなりのことであ然として身動きがとれないメグの前に現れた2人組は勝手に話はじめた。

「おい相棒、俺らが狙ってたのはスリザリンの"生徒”だったか?」
「いいや違うぜ相棒。俺らのターゲットはスリザリンの寮監だったろう」
「じゃあなんで彼女がこんなことに」
「おかしいな、この時間はスネイプ大先生しか通らなかったはず」

糞爆弾を投げつけられた本人を放っておいて勝手に話を続ける彼らに、今日1日の出来事が重なったメグはもう限界だった。なんて低俗な人達なの!?というメグのヒステリックな声が廊下に響く。怒りで肩をふるわせるメグを見て、まあまあ、とまるで他人事のように一人がメグをなだめた。

「そんなに目を見開いて怒ることないだろう、ちょっとしたいたずらのつもりだったんだ」

そう言うと、まあ君に投げるつもりはなかったんだけど、と隣のもう一人が一言添え、呪文でローブについた汚れを取り払った。しかし、元通りの綺麗なローブをを見てもメグの怒りは収まらなかった。キッと2人の目を睨むと、あなたたち、本当に最低ねと吐き捨てた。そのメグの言葉に、相手も少しむっとなり、メグの胸元のシンボルを指差しながら言い返す。

「君だって、同じ様なものだろう?」
「そうそう、俺、今日も見たぜ。マグル生まれの奴にくだらないちょっかいをかける君らをさ」

君だって、君らだって、その言葉を聞いた途端、メグの中の糸がぷつんと切れた気がした。

「一緒にしないで!」

怒りが頂点に達しているのに、何故だか涙が出そうだった。もう怒っているのか泣いているのかわからなくなったメグは、目の前の2人を怒鳴りつけると寮へと続く廊下をひたすら走った。

本当に最悪な日だった。




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