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泣きながら寮へ戻ると、一目散に部屋を目指し自分のベットに突っ伏した。寮に入った途端何人かにどうしたの?と尋ねられたが、それはメグを心配して声をかけたというよりは、どの顔も好奇心と興味から話しかけているようにしか見えず全て無視した。他人の不幸は蜜の味、と言ったところか。正にスリザリン生という感じだ。皆獲物を狙う蛇のような顔をしている。メグはスリザリンが、この忌まわしい蛇のシンボルが嫌いだった。



メグがホグワーツに入学したのは四年前のことだった。両親ともに魔法使いであり、純血の家系に生まれたメグは、誰しもが才能溢れる、気品と誇りを持ったスリザリンに組み分けされた、と思っていた。

「まったくもってくだらないわ」

それがメグの口癖になった。蓋を開けてみれば、そんな物はどこにもないことを入学してすぐに思い知った。気品?誇り?私は何を勘違いしていたのだろうと頭を抱えた。純血主義の貴族が多いからとても優秀でーと近所の親戚に聞いていた話と現実は随分と違った。そういえば彼女も純血主義だった事に気付いた。偏った視点で語られた彼女の話が大いに私を勘違いさせたに違いない。確かに才能に富んだ者はいるが、それを上回る程の狡猾さをみな持ち合わせていた。誰も正しく自分の力を使うことが出来ないなんて。毎日飽きもせずマグル出身の生徒に絡んでいる同じスリザリン生を見てメグはそう思った。

「こんなくだらないことをするなんて、自分がスリザリン自体の価値を下げてることがわからないのかしら。」
「そう?中々に面白いわよ。ほら見て、あの新入生、今にも泣いちゃいそうだもの」

指をさして隣でくすくすと笑う同級生が楽しそうにしている理由が全くわからなかった。価値観が合わないメグは、当たり前のように周りから浮いていった。同室の子とは多少打ち解けたが、皆上辺だけの関係のように思えて孤独感が拭えたことはない。それでも、メグは一人でも別に構わないと思った。逆に一人でいれば、自分はあんな人の失敗を見て笑うような、人の不幸を喜ぶような人達とは違うという事の証明になっている気がしたから。

「それなのに、あの同じ顔をした2人!私になんて言ったと思う!?君も同じだって私をあんな奴らと一括りにして指をさしたのよ!?信じられる?」

行き場のない怒りを一人、突っ伏したベッドのクッションにぶつけていると、愚痴の一つや二つ言える友人も居ないのだとまたメグを一段と虚しくさせた。

もう二度と忌まわしい赤毛を見る事がないようにあの時間に廊下を通るのはやめよう、と決心したメグは、明日はどうか平穏でありますように、と心の中で強く祈りながら眠りについた。

しかし、そんな決心や、ささやかな願いは、またしてもあの赤毛の2人組によって台無しにされるということをメグはまだ知らない。




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