ある朝、目覚めた時から私にはえもいわれぬ違和感があった。この部屋に見覚えはあった。だけど実際に自分の目ではみていないと思ったし、畳や部屋干しの洗濯物の匂いは嗅いだことがなかった。私は重い冬用の厚い掛け布団を退けると、自分の足で立ち上がった。私、いつ布団敷いたんだっけ。

季節が関係ないこの地下の秘密基地。だけど実際に肌で感じたのは、底から上がってくる冷気だった。こんなに、ここって寒かったんだ。寝間着のままだった私はそっと二の腕をさすった。肌を刺す寒さも、畳の匂いも、夢じゃない。夢じゃないはずなのに。何かがおかしい。とりあえず動こう、と部屋から出ようとするとずっと聞きたかった、ひどく懐かしい、いつも聞いていた、声が聞こえた。


「おはようございます、天花」
「……、」

咄嗟に応えることができなかった。
彼はその生活の大半を共にしていた車椅子には乗らず、ちゃぶ台の前で正座をして座っていた。その髪はいつもの黒髪ではなく、力を使うときのように白髪。顔色も良かった。彼は返事をしない私を見上げると首を傾げた。

「おは、よう」
「どうかしましたか?」
「…ううん、なんでもない」

ひどく彼に、流に会いたかった気がした。