ところで、トキワのジムリーダーって誰だったっけ?長らく鍵が締まっていたようなイメージがある。
ピジョットでトキワに降り立つ、そのままジムの窓へと顔を覗かせる。ん、誰かバトルしてるみたいだ。

「すみません」
「はい、なんですか〜?」
「もし空いていれば明日、ジム戦御願いしたいのですが……」
「明日ですね〜ええと……13時から空いてますよ!どうしますか?」
「じゃあ13時で御願いします!」

ちらり、とバトルしている人を見れば見覚えのある茶色のツンツン、少し外で待って居ればでてくるであろうか?

「グリーン」
「うおっ、リサもいたのか」

完全に不意打ちを食らった顔をしたグリーンを見て笑いが漏れる。バッジは?と投げかければふふん、と掲げられたバッジ。これで8つ、揃ったのであろう。

「次は、リーグだね」
「おう。レッドよりも早くに俺がトップになってやる」
「……相変わらずだね、ほんと」

ぱし、と肩を叩く。まだ私の方が少し大きい。これがいつになったら逆転されるのやら。

「リサ、ジムいくのか?」
「ううん、明日」
「よし、じゃあ俺とバト」
「却下。ほら、グリーンとレッドとは強くなって、したいなって」
「俺とレッドなんて対面したらすぐバトルだぜ?」
「旅に出る前からそうじゃん」

近くの自販機でサイコソーダを買い、ベンチに腰掛ける。
旅に出てもう1年が経とうとしている、その間に私は成長出来たのだろうか。
視線を開けたばかりのプルタブへと落とす、炭酸がはじける音が響く。

「何不安になってんだよ」
「……グリーン」
「俺も、お前も。自分じゃわかんねーけどさ、旅に出てない同級生よりは大人だと、俺は思ってるぜ」
「うん、そうだね。少なくともこのカントーを見て来たから」
「大人からしたらまだまだクソガキなんだろーけどよ、特にじいちゃんとか……」
「オーキド博士は仕方ないよ、博士だから」

ごくり、と炭酸が喉を通る。ぱちぱちとはじける感覚に目を少し瞑る。いつのまにか出て来たフーディンがくれ、とジェスチャーして来る。すこしあげれば同じ様に炭酸に目をパシパシさせていた。

「……なにかあっても、私はグリーンの味方だからね」
「なんだよそれ」
「グリーンか、レッドかって言われたら私は選べないけど」
「そう言う時はな、どっちもって言うのが正解なんだよ!」

ぐしゃぐしゃ、と私の髪を掻き乱すグリーンに少し文句のまなざしを向けるも二ッ、と歯を見せて笑うその顔に何も言えなくなる。

「じゃ、俺はそろそろ行くわ。チャンピオンロードも長いみてーだし」
「うん、気をつけて。……すぐ、追いつくから待っててよね」
「ハッ、ゆっくり来いよな」

トキワはチャンピオンロードと隣接している。その前にバッジ等確認するゲートがあるが、グリーンはそこに向かって行った。
フーディンから手渡されたサイコソーダは空になっていた。


***


「お願いします」
「ああ、トキワジム、ジムリーダーサカキがお相手しよう」

なにか、既視感を覚える。良い意味ではない、あまり良くない意味で、私はこの人を知っている気がする、けれど思い出せない。

「ダグトリオ、すなじごく」
「ハクリュー、たつまきで飛ばして。そしてりゅうのまい」
「じならしだ」
「耐えて、もう一度りゅうのまい!」
「だいちのちからで動きを止めろ」
「今!げきりん!」

2回能力を上げたげきりんには耐えられず、ダグトリオは目を回して倒れた。サカキさんは静かにボールに戻し、二ドクインをフィールドに出した。

「えっ」

ハクリューは光に包まれ、次の瞬間にはカイリューへと姿を変えていた。今!?
闘志は消えていない、が申し訳ないが一旦戻ってもらおう。

「ピジョット!」
「まさかこの場で進化するとはな」
「それは、私も予想外でした」
「ふん……二ドクイン、どくばり」
「おいかぜ、からのフェザーダンス!」
「……二ドクイン、のしかかれ」
「避けて!エアスラッシュ!」
「……!」

ドシン、と二ドクインは尻餅をついてしまった。怯んだ。

「そのままぼうふう!」

二ドクインは目を回して地面へと倒れた。サカキさんは二ドクインをボールに戻し、ニドキングをフィールドへと出した。
ピジョットはそのまま戦っていたが、どくばりを喰らいニドキングに勝ったものの辛そうな顔をしていたので戻す。

「サイホーン」
「いくよ、カメックス!」

ボールから出てひと鳴き。ジムへとカメックスの鳴き声が響く。

「サイホーン、ストーンエッジ」
「みずのはどうで抑えて、そのままあまごい!」
「ッ、じならしだ」
「ハイドロポンプ!」

カメックスのハイドロポンプが、サイホーンの正面へと当たる。急所に当たったのかすぐに目を回して倒れた。
すぐにもう1体、サイホーンが出て来たがそのまま戦う意思バリバリのカメックスに倒された。

「見事、このグリーンバッジをあげよう」
「ありがとうございます」
「次はチャンピオンを目指すと良い」
「……あの、私。貴方の事知っている気がします、でも今はトキワのジムリーダーのサカキさん、なんですよね」
「……ふん、さてな」
「対戦、ありがとうございました!」

ぺこり、と一礼してジムを後にする。サカキさんは帽子を目深に被り、表情が見えなかった。
ポケモンセンターで回復させている間に体をぐぐぐ、と伸ばす。ついに、チャンピオンへと挑戦出来る。


***


チャンピオンロードも半分来たか、と言う所。時刻をみれば19時になりそうだ。ううん、しかしここはチャンピオンロード、入り口と出口にポケセンはあるものの、今からだと時間がかかる。今日は久しぶりのキャンプだ。
洞窟、とあって少し湿気がある。キュウコンに寄せ集めた木に火をつけてもらっているがなかなか火が付きづらかった。広く、途中で出会ったトレーナーさんたちもキャンプをしているのか火がパチ、とはじける音が聞こえた。

「あれ、リサ?」
「えっ?」

少し離れた所から声をかけられる。顔をそちらにむけるとリザードンと共に歩いていたと思わし気レッドが居た。

「レッド」
「ここでキャンプ?」
「うん、疲れたし」
「そう。俺も邪魔していい?」
「うん、レッドも……ええと、トキワのバッジもらったんだね」

よいしょ、と近場の岩場に腰掛けるレッド。ぽいぽい、とボールを投げて私の様に手持ちを自由にさせていた。私もそうだが、レッドも大型のポケモンが多い。
リザードンとキュウコンは同じ火起こし係ということもあってか、2人でしか分からない会話をしているのであろう。

「うん、……サカキから」
「……やっぱり、あの人良くない人だったんだね」
「ロケット団は潰したけどね……。でもジムリーダーとしては良い人だと思ったよ」
「組織として、やる事は良くないよね……」

ぱちり、と火が爆ぜる。2人で簡単に作ったサンドイッチをもしゃり、と食べながら飛んだ火花をゆっくり目で追うと対面に座るレッドと目が合う。レッドの赤い目が火にあてられオレンジにゆらゆらと揺れていた。

「グリーンはもう先に行ってるよ」
「知ってる、多分あいつは……ううん、なんでもない」
「なにそれ。でもまあ、ちょっと言いたい事分かるかも、グリーンはきっと私たちの先にいるよね」
「それでも、俺はグリーンに勝つ」

迷い無く言ったその言葉に笑いがこぼれる、本当この2人は昔からいつも張り合ってばかりだった。

「カメッ」
「リザ……」

ふと視線をずらせばカメックスとリザードンが昔話をするかの様に話していてやっぱり小さい頃から一緒だといろいろあるんだろうなぁ、と感じた。
キュウコンへとぽすり、と体を寄せればぽかぽかと暖かい体温が伝わって来る。

「キュウコン、もうひとり追加してもいい?」
「コン」
「レッド」
「ん?」

レッドを軽く手招きし、近寄って来たところを引っ張る。ぽすん、とキュウコンの尻尾に包まれるレッド。珍しく目がぱちくりしている。

「暖かいでしょ、たまにはモフモフに包まれるのもいいとおもうよ」
「……先に言ってよ」
「ピカチュウおいで〜」
「ピカッ!」

ととと、と駆け寄って来たピカチュウをハグ。ピカ〜!と鳴き声をあげるピカチュウを見て巷で話題になるのも頷けるわ……としみじみ。

「……ピカチュウ、俺よりもリサに懐いてない?」
「そんなことないよ、多分ほら年に1回会うか会わないかの従姉妹くらいの関係だよ」
「ちょっと想像つきやすい関係やめてくれる」

ハハ、と笑い声を漏らす。そしてお互いに他愛もない話をしながらゆっくりと、瞼が落ちて行った。



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