「ここがワカバタウンだよ」

研究所の前に降り立つ、マサラタウンに似た落ち着いた雰囲気の町だ。プテラとオニドリル、研究員さんにお礼を言って見送った。

「こんにちはー」
「こんにちは、あら。初めて見る顔ね」
「あ、はい。カントーのマサラタウンから来ました。……あの、ウツギ博士はいらっしゃいますか?」
「博士なら奥に居るわよ、……もしかしてオーキド博士からのお使いの子かしら?」
「はい」
「よかった、ウツギ博士午後から出る予定だったのよ」

女性の研究員さんに促され奥のスペースへと向かえば優しそうな眼鏡の男性がパソコンに向かっていた。

「ウツギ博士ですか?」
「……!オーキド博士からの使いの子かな?」
「はい、リサといいます」
「僕はウツギ、……それ!ポケモンのたまごだよね?!もらったのかい?」
「あ、はい……幼馴染みのお姉さんから」
「へえ!なにが産まれるかは?」
「予想はついてますが、聞いてません……。と、ウツギ博士へオーキド博士からこれを預かってます」
「ああ、ありがとう!ちょっと待っててね……」

斜めがけにしていたたまごケースを見て目を輝かせるウツギ博士に封筒を渡し「座ってて」と言われたところへ腰掛ける。たまごはあまり揺れては居ない、まだ産まれるにはかかるんだろう。

「……ヒノ」

ぴくん、と体が動いた。なにかの鳴き声がした。きょろきょろと周りをみてもポケモンの姿は見当たらない。……すると足元にひし、となにかが抱きついて来た感触。

「……ヒノ、アラシ?」
「お待たせリサちゃん……って!ヒノアラシ!どこにいたんだ!」
「ヒノ……」

ヒノアラシが足元に居たので膝の上に抱き上げると丁度ウツギ博士が戻って来た。私の膝の上に居るヒノアラシを見て声を荒げた。

「この子、どうしたんですか?」
「とても人見知りで……ヒノアラシ、ワニノコ、チコリータはこれから旅にでる子向けのポケモンなんだけれどこの個体はどうにも表に出て来なくてね……」
「そうなんですか……」

あぐあぐと私の指を甘噛みするヒノアラシをみて(人見知り……?)と首を傾げた。その様子をみてウツギ博士も苦笑していた。

「もしリサちゃんが良ければ、ヒノアラシ連れて行くかい?」
「えっ!」
「オーキド博士からの手紙に書いてあったんだ。カントーのジムバッチは8つ、取ったんだろう?……でも、ジョウトを旅すると」
「……はい」
「よければポケモンを1匹共に選んでくれないか、と書いてあったんだ。ヒノアラシもリサちゃんに心を開いてる様だし……ね?」
「……ヒノアラシ、どうする?」
「ヒノ?」
「一緒に行く?」
「……ヒノ!」
「……だそうで」
「ハハ!よかったなぁ、ヒノアラシ!」

ヒノアラシに聞けば首を傾げた後に大きな声で鳴いた、するりと背中をなでればポッポッと小さな種火が出て来た。ちょっとびっくりする。

***

「あ!ヒノアラシ!」
「たまごもあるよ!」

研究所から出ると帽子を逆に被った活発そうな男の子とピョン、と跳ねた2つ結びをした女の子がこちらに駆け寄って来た。

「旅に出るの?」
「うん、旅に出るんだ」
「すっげー!いいなぁ!俺、ゴールド!」
「私コトネ!」
「私は、リサ。ゴールドくんとコトネちゃんは何歳なの?」
「8!……あと2年なんだ」
「そっかぁ……じゃあ……がんばって追いついて来て!待ってるから!」
「本当?!ゴールド!頑張ろう!」
「ああ!」

私よりも少し幼い2人にエールを送る、2人に見送られながらもワカバタウンを後にした。


***


「ヒノッヒノッ」
「あんまり先いかないでね」

前を意気揚々と歩くヒノアラシ、人見知りと聞いていたから自由にさせてあげようとしていたが人見知り……?という状態だ。ただ単に研究所が好きじゃなかったのでは?という考えも抱く。

「うーんと、この先はヨシノシティか」
「ヒノ」

ポケギアのタウンマップを見ながら見る、現在時刻はお昼になろうかという時間。少しお腹がすいた。

「ヒノアラシー、オレン食べる?」
「ヒノ!」

軽くぱくり、とオレンの実を食べヒノアラシにも渡す。はぐ、と手で持ちながらヒノアラシも食べていた。ヨシノシティでポケモンセンターについたらそのまま宿取ってしまおうかな。

「ホー!」
「ヒノ!!!!」

空腹もどうにかして草むらに足を踏み入れたらホーホーが目の前を羽ばたく、うおっとびっくりすればヒノアラシがホーホーにたいあたりを決めていた。

「……きみ、わりと野蛮だね……」
「ヒノ?」

くるくると目を回した野生のホーホーはすぐさま目を開き慌てて飛び去って行った。
しかしこれは指示を聞かないヒノアラシという括りになるのだろうか………まぁ、いいか。

***

「すみません、1室あいてますか?」
「空いてますよ、トレーナーカードを拝見しますね」

ポケモンセンターについてジョーイさんにトレーナーカードを差し出す。そういえばトレーナーカードには取ったバッチのデータとかかいてあるんだよなぁ。

「トレーナーカードお返ししますね、……ジョウトには旅を?」
「はい、心機一転で」
「そうですか、良い旅になることを願ってますね」
「ありがとうございます」
「ヒノアラシも元気になりましたよ」

ボールに入ったヒノアラシを受け取る、軽く投げれば「ヒノ!」と頭の上に乗って来た。

「ヒノアラシ、ちょっとおやつたべようか」
「ヒノ」

今の時間は14時、ご飯を食べるには過ぎているしちょっと小腹を満たそうと併設されている食堂へ。

「ボン、ドリンク?」
「なんだ、嬢ちゃん初めて見るんか?」
「あ、はい。カントーから来たんですけど」
「そーかそーか!こいつはぼんぐりというきのみをシェイクしたポケモン用のドリンクなんだ」

今日のボンドリンク、という看板をみていると隣から気の良いおじさんが声を掛けて来た。ポケモン用のドリンク、ぼんぐりというきのみはカントーには無かったなぁとふんふん頷きながら眺めていた。

「嬢ちゃんこれやるわ」
「……これは?」
「ぼんぐりケースっていうものでな、途中にここに来る途中にあったろ。みどりのきのみ」
「……あ、これですか?」

鞄からごそりと取り出す緑の丸いきのみ。普通のきのみかとおもって取ったが見た事無かったので仕舞っていたのだ。

「それはみどぼんぐりっていうもんだ。ぼんぐりはボンドリンク以外にもヒワダタウンにぼんぐりをモンスターボールに作り替える職人がいるんだが、まぁ俺はよくしらねえ!もし行ったら聞いてみるといいぞ」
「へぇ……いろいろとありがとうございます!」
「ぼんぐりは、いいぞ!」

おっちゃんは最後にいいぞ、と言って食堂を去って行った。ぼんぐりというきのみの文化はすごいなぁとヒノアラシにボンドリンクをあげ、私はおにぎりを頬張った。


***


おやつを食べ終え、再び29番道路へ戻った。ヒノアラシのレベル上げを兼ねてだ。たまごの様子を見るもたまーにカタリ、と動くレベル。孵化するのにはまだかかるだろう。

「ヒノ!」

ぼっ、と口から放たれるひのこ。もう29番道路のポケモンは1発で倒せる様になったヒノアラシ。

「ヒノアラシがんばったねぇ」
「ヒノ」

てってってっ、と近寄って来たヒノアラシの頭を撫でればヒノーと鳴き声をあげた。あふ、と欠伸をしながら体を伸ばす。こんなにのんびり急がずとするのが久々な気がする。

ピピピピピピ

するとポケギアが着信を知らせる。ヒノアラシが初めて聞く音にぴくんとしていたが撫でれば落ち着いた。
私はこれが誰からの電話か確認しなかったことを後に後悔するのだ。

『リサ!!!!!!!!!!!!お前!!!!!!!!』
「うわぁ!!!!」

ギン!と耳に響く声、咄嗟に耳から話せば表示されているのはグリーンと書かれている。ああ、マサラタウンに帰って来たのか。

『お前何勝手にまた旅に出てんだよ!』
「いや、だって……なんかお取り込み中だったじゃん……」
『だからって普通俺とレッドに挨拶無しで行くかァ?!』
「結果としてそうなりました」
『おま、お前なぁ……!……ハァ、もういい。レッドが、チャンピオンになったのは聞いたか?』
「聞いてないけどそうなんだ」
『お前なぁ!!!……それでだ、レッドはチャンピオンを辞退して修行すんだと』
「へぇ」

ヒノアラシの顎下をかりかりと掻きながら聞く。まぁレッドらしいなぁと思いながら笑う。

『俺は、トキワのジムリーダーになる』
「……トキワ?……サカキ、さんは」
『居なくなったらしい。……まぁ、ロケット団のボスだしな、ジムリーダーを続けられねえんだろ』
「そうかぁ」
『……お前、戻ってくるんだろうな』
「リーグ挑戦も、してないからね!ああでもホウエンもシンオウも行きたいなぁっておもうけど」
『そのまえにマサラに帰ってこい!』
「わかったわかった、グリーンもジムリーダー頑張ってよ」
『定期的に連絡しろよな!』
「お母さんじゃん……」
『おい!』
「じゃあまたねー」

ぷつん、と切る。なんかまだ言い足りなさそうな感じだったけどグリーンもグリーンでこれから忙しいだろう。

***

時刻をみれば18:30、そろそろポケモンセンターに戻って夜ご飯にしようかとヒノアラシに提案すればヒノ!とひと鳴き。

「すみません、カレーください」
「はいよー」

カレーを食堂のおばちゃんに頼み出て来たカレーを受け取る。ヒノアラシはポケモンフードをはぐはぐと頬張っていた。

ご飯を食べ終わり食器を返し、部屋に入る。ぼふんとベットに転がる。ああ、そうか。ゲンガーやフーディンのような御世話をしてくれる人がいないのだ。

「ヒノアラシー、ちょっとお風呂入ろうか」

ヒノアラシは炎タイプ、水が苦手だろうと思っていたが実際風呂に入ると割と気に入った様だ。ちゃぷちゃぷと遊んでいた。

「水気取ろうねー」
「ヒノ!」

タオルでヒノアラシの短い毛についた水気をポスポスと取って行く。くぁ……と欠伸をしてうとうとしているヒノアラシをベットに移動する。すると数秒もすればすぅすぅと寝息が聞こえて来た。
あったかそうなのでヒノアラシの側にたまごを置いて私も寝た、早寝だ。たまにはいいだろう。



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