「喉やられたかも」

あふ、と大あくび。飛行機でガラルからカントーに戻ってきたはいいものの機内で大爆睡。口を開けて寝てしまっていたようで口の中がカラカラだ。口を開ける可能性を踏まえてマスクしておいてよかった。

「ロトム、マサラタウンまでの道案内お願い」
「了解したロト!空路で行くロト?」
「うん、ウォーグルお願いね」

ウォーグルをボールから出し、背中に乗る。ばさりと飛び立つその振動には慣れたものだ。
スマホロトムは便利だ、人間はもちろんロトムがポケモンだからポケモンに乗っている時の道案内も出来る。ぼんやりとカントー上空を改めて見て帰ってきたんだなぁという気持ちになる。いろいろ旅をしていてもやはり故郷はいいものだ。


***

「あと10分でマサラタウンロト!」
「ありがとうロトム、ウォーグル少し下がろうか」
「グルッ」

緩やかに高度を下げていくウォーグル、マサラタウンの姿が見えてきたあたりで気付く。あの赤いの、リザードンだ。

「マサラタウンに着いたロト!」

バサリ、と大きく羽ばたきをして降りるウォーグル。こちらに気づいたリザードンは一鳴きした。

「ありがとうロトム、ウォーグル。広場で休んでて良いよ」
「グル!」
「場所わかる?」
「分かるロト!」

ぬるっとスマホから抜け出してウォーグルと一緒に家の広場へと向かって行ったロトム。それとは対照的にのしのしとリザードンが近づいてきた。

「リザードン!久しぶり!」
「リザッ」
「圧!圧がすごい!」

ぐいぐいと顔を押し当ててくるリザードンのお顔を撫でる、久々に会ったリザードンはさらに鍛えられている気がした。

「レッドは?」

そう聞くとレッドの家の方へ顔を向ける、まだ家な様だ。そういえば今何時なんだろうかと腕時計を見れば8時、めちゃくちゃ朝じゃないか。博士には昼くらいに伺うと連絡をしているのでまだ時間はありまくりだ。

「一旦家帰るかー、一緒に来る?といってもすぐそこだけど」
「リザ!」
「レッド置いてくけどいいか、レッドだし」

スマホでレッドに『リザードン借りてるよ』と一言入れておいた。
家にリザードンを連れたまま「ただいまー」と帰ればリザードンを見て「レッドくんは?」と一言「まだ寝てるっぽい」と伝えると笑っていた私の母。
朝ごはんを食べている間にリザードンに何故外に居たのかと聞けば空を指さしたので飛んでいた様だ、日課かな。

「広場いくならご飯もやってきて頂戴ね、スキンシップ大事よ」
「はーい、リザードン手伝ってくれる?」

こくり、とうなづいたリザードン。良い子すぎなんだよなぁ、と広場に足を運び併設されている転送装置をぽちぽちと操作する。今までの手持ちの子をごろんごろん転送してもらうとあっという間に部屋がボールだらけになってしまった。

「よし、みんな出たね」

山の様にあったボールからポケモンを取り出すこと数分。広場もわりと埋まってしまった。大型のポケモンが多いからかね。


***


「ありがとうゲンガー、フーディン、カイリュー、リザードン。助かっちゃったー」
「ゲンゲン!」
「ディン」
「リューー」
「リザリザ」

ポケモンたちが率先してお手伝いをかって出る、本当に良い子に恵まれたよ……とほろりとしながら食べ終わった食器たちを桶に貯める。水タイプのポケモンたちがこれも率先して洗ってくれるものだから私の仕事が、ない。

「えーん仕事とられちゃったよー」
「キュウ?」
「お昼寝もとい仕事終わりの一寝入りしようかな……」

日向ぼっこをし始めたキュウコンの元へ駆け寄った。しっぽでおいでおいでしていたから甘えてキュウコンのお腹のところに寝そべった。
うとうとしはじめてきたあたりで同じ様に寝ようと近づいてきたポケモンがたくさんいるのに気づいた、リザードンもいるし。レッドが起きたら迎えにくるだろう、とまぶたを閉じた。


***


なんか頬を思い切り摘まれて意識が浮上する、どのポケモンがしたんだと薄く目を開いて吃驚した。

「……れ、っど」
「おはよう」
「吃驚した……今何時?」
「11時なる前くらい」

犯人はレッドだった、よいしょと言うかの様に隣に腰掛けてきたレッドを凝視する。前に電話した時はカメラ越しだったからあまり気にしてなかったが……。

「レッド……鍛えてるの?」
「何が」
「いや……なんか腕とかすごいしっかりしてるなって……」
「鍛えてない、けど山に居るからそれもあるかも」
「ああシロガネ山だもんね……」

あくびを1つ、しっかりと口を押さえてした。視界の端でなんかバチバチと光が瞬くなと思っていたら電気タイプたちが集まって交流を深めていた。そのなかにはレッドのピカチュウも。

「何時に帰ってきたの」
「8時くらい、早すぎちゃって」
「俺も寝ようかな」
「今寝たら博士との時間に寝過ごすと思う」
「……」

帽子をずらして目元を隠したが私がそう言うと少し口を尖らせ元に戻した。そんな姿が10歳の時とあまり変わらなくて思わず笑ってしまった。

「梨沙は、小さくなった?」
「小さくなってない!レッドが大きくなっただけ」
「ピカチュウくらいに縮んだ気がした」
「それはやばいよ」

他愛もない世間話をしながらぼんやりとポケモンたちを眺めていた。時間がのんびりと過ぎていくがこの時間はとても苦にはならなかった。

「そろそろ時間だ、レッド行こう」
「うん、ピカチュウどうする」
「ピカ!」

手をぴん!とあげてここにいる、という意思を見せるピカチュウ。まぁ博士のところにいくだけだし大丈夫だろう。


***


「こんにちはー」
「おお!梨沙!レッド!よくきたのう!」

レッドと博士のところへ赴けばお出迎え、ばしばしと背中を軽く叩かれ勢いにびっくりした。いつもこうだが慣れない。

「さて本題じゃが……奥の部屋で話すとするか」
「すごいVIP待遇って感じ……」
「今更」

オーキド博士に付いて奥の部屋に入る、レッドと隣に腰掛け対面には博士だ。

「レッドも梨沙も聞いてるかも知れんが、PWTは全世界のトレーナーが集まる。各地方にいる代表トレーナー最大3人が博士推薦枠で招待されるんじゃ」
「ふんふん」
「そうさな、隣のジョウトはヒビキ、コトネ、シルバーが招待されているそうじゃぞ」
「え!そうなの!楽しみになってきたー」
「……ヒビキ、山に来たことあるよ」
「えっヒビキもバトル狂になってるじゃん怖」

博士が持つ資料を3人で見ながら話を進める。参加一覧トレーナーを見て期待と楽しみと、懐かしさで早く会いたいなーという思いでいっぱいだった。

「いいか、くれぐれもトーナメントじゃからな、自由に戦えるわけではない。戦いたいのであればオフで誘うんじゃぞ、目と目があったら」
「勝負」
「みんな懐かしい……」
「ん?梨沙は、そうか、一通り旅をしとったな」
「カロスのチャンピオンのカルネさんはね女優さんもしてるんだよ……めちゃくちゃ美人だよ……」
「へえ」
「すごい興味がなさそうな返事で笑っちゃった」

PWTについての説明、注意点、書類を書きまとめ話をしていたらあっという間に日が落ちてしまった。

「博士また来まーす」
「しばらくはこっちにいるんかの?」
「うーん、どうしようかなって感じですね……」
「1週間は居たら」
「珍しくレッドがそう言うので居ます」
「幼なじみ再会も10年ぶりじゃろ?積もる話があるじゃろう」
「ある?」
「分からない」
「わしの孫ながら大変なんじゃな……グリーンよ……」


***


研究所から出た後にレッドを強制的に手伝いに巻き込んだ。広場に居た子達をボールに戻し終わる頃にはすっかり暗くなっていた。

「田舎故日が落ちると真っ暗だね……」
「暗い」
「山よりはいいでしょ」
「雪だから明るいよ」
「なんて?」
「明るい」
「なんて?」
「ピカチュウ、でんきショック」
「やめて私人だよ!!!!!」
「大丈夫」
「なんの自信?!」

すごく混乱したピカチュウが鳴いてこちらを見ていた、ごめんねピカチュウ。

「レッド明日暇?」
「俺はいつでも暇」
「割とお互いに自由に生きてるからニートみたいなもんだもんね」
「ニートって言うといろんな意味できついものがある」
「さすがにねわかるよ、じゃ明日朝家いくねあそぼ」
「……うん、また明日」

ふ、と微笑んだレッドにちょっと吃驚していると肩に乗っていたピカチュウが鳴きながら手を振ってきた。かわいい。



TOP