「そうだ、カントー戻ろっか」

ぽつりと呟いた言葉にため息が聞こえる。隣をのしのしと歩いていたカメックスからだった。ポケモンもため息を吐くんだぞ。

「何か言いたげだね?」
「ガメ……」
「その諦めた目やめない?」

思い立ったが吉日、すぐさま飛行機のチケットを取り準備をした。乗ってしまえばこっちのもの、寝ている間にあっという間にカントー地方である。

「何年ぶり?まぁいいや」

ゴキ、とずっと寝ていた体をほぐすべく首を鳴らすと盛大な音がしてちょっとビビった。

「ウォーグル、カントー初めてでしょ?ちょっとお散歩しない?」


***


空港からウォーグルを出し背に乗ってカントー地方を巡る。ウォーグルと他の手持ちの子に「あそこはねー、クチバ。港よ」と雑に説明しながら漂った。

「あ、ウォーグル。あそこ降りてくれる?そう、トキワシティ」

軽く相槌を打ち徐々に降下していくウォーグル。トキワの人が豆粒から見える程度になった頃にはカントーに生息していないウォーグルが降ってきたことに少しびっくりしているようだ。

「こんちわー!」
「こんにちは、挑戦者の方ですか?」
「あー、違うとも言うしそうともいう……」
「??バッチを確認しても?」
「あー、全部あるんですよ、ほら」

久々に出したバッチケースはちょっと色あせていた。ガパッ、とあければ磨いていないにもかかわらず煌めいていた。すごいすごい。

「えっ!他地方もあるじゃないですか!」
「え?ああそうなんですよ」
「他地方?!見たい見たい!」

わらわらとジムトレーナーが集まってきて笑った。カントーの最後のジムのトキワは割と暇とグリーンが電話で漏らしていたけどほんとなのだろうな。

「外のウォーグルも……?」
「私の子ですねー」
「え!すごい!……もしかしてグリーンさんのお知り合いだったりします?」
「あ、はいそうですねー」
「お名前伺っても?」
「梨沙です」
「ちょっとグリーンさん呼びますね!」

アポなしでもバッチみせればいけるのか?という気持ちになった。外に出て行ったジムトレーナーはウォーグルを見て声を上げていた。「触れても……?」とおそるおそる聞いてきたので中でなら、と答えた。

「グリーンさん今出てて速攻で戻るそうです。……ひどく驚いてましたけど」
「ああ、アポなしできたので」
「そうなんですね、今日は予約も入ってませんし中へどうぞ」

中で手持ちの子を出してトレーナーたちに観察されている様を席で見てるとドタドタ音がしてきた、戻ってきたか。

「梨沙!」
「よっすグリーン」
「お前!!!!まじで連絡しろよ!!!!!!!戻ってくるの何年ぶりだと思ってんだよ!!!!!!!!!」
「うるさいんですけど……」
「お前なぁ!!!!!!!!!!」

ずかずかと歩み寄ってきて目の前で喚くグリーンをみてしかめっ面を晒すとさらに怒られた。ぴえん。

「ぐ、グリーンさん?」
「……はぁ、こいつは俺とレッドの幼なじみで全然カントーに帰ってこなかったやつなんだよ」
「説明ひどない?」
「あたってんだろ」

苦笑して立ち上がる。そしてふと気づく

「グリーン……大きくなったねえ」
「あたりまえだっっっっっつの!!!お前が小さく感じるわ!!!」
「かっこよくなったねえ……女の子にモテそう」
「親戚のババアかよ」

同じくらいの背丈だったグリーンはいつの間にか私の頭をゆうに超えて軽く見上げないといけないレベルだった。

「久しぶり、グリーン」
「……ーー!!」
「ぐえ」

勢い任せの抱擁、鼻をすする音が聞こえたのでグリーンも泣くんだなぁとぼんやり思ったし同時に連絡しなくて悪かったと思った。

「レッドも……シロガネ山に籠もってるし……連絡しねえし……お前も……どこにいるかわからねえし……むしろレッドよりひでえんだよ……」
「ごめんごめん」
「……飲みに行くぞ!レッドも連れ出す!」
「昼だけど」
「ジム閉めだ!お前ら早上がりでいいぞ!」
「え?!いいんですかグリーンさん!ワタルさんに怒られるのでは……?」
「そのときは梨沙の名前出せ、なんとかなるだろ」
「責任をなすりつけている」

手持ちをボールに仕舞い、あれよあれよと飲みに行く手筈を勧めるグリーンを見て手が早いとぼんやり思った。そして徐に私はスマホロトムを取り出し、電話をかけた。

『……』
「あ、レッド?」
『?!……梨沙?』
「おひさー今グリーンのところなんだけどさ、なんか飲みにいこって話になってるんだけどレッド降りてこれる?」
『行く。どこに行けばいい』
「即返答で草。グリーンどこにいくのー?」
「タマムシ!……と思ったけど家飲みとどっちが良い?」
『家、むしろこっちくる?』
「吹雪やんけ」
「酒の手配がめんどくせえよ、俺ん家な。じいさんにも顔見せとけ」
「だってー、とりあえずトキワ集合ね」
『わかった』

久々にレッドに電話したが声が低くなっていた。おお……とスマホロトムに声を出してしまった。

「ところでグリーンは実家?」
「いや、トキワに家借りてる」
「えっやば……グリーンが一人暮らし……一人?」
「一人だよ!」
「恋人は?」
「ンなもん作ったらグリーンくん忙しくて構ってくれないーとかで振られるわ」
「ジムリーダー忙しそうだもんね……」

30分もすればバッサバッサと翼をはためかせているリザードンが降りてきた。

「梨沙」
「久しぶりー大きくなったねえ!」
「親戚のおばちゃんみたいなこと言わないで」
「グリーンにも同じこと言われた」
「よっしゃお前ら、買い出し行くぞ」
「わーいジムリーダーの財布だー!」
「お前らも金出せよ!」



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