※激捏造

「樹ダラしないね」
「鳴。樹くん、足見せて」
「すいません……」
「監督ー!おいらの球受けれるキャッチャー居なくなったじゃん、どうすんの?」

体育で少し捻ったらしい樹くんの足にテーピングを巻く。明日練習試合が控えているがどうするのだろうか。

「成宮、明日の相手はどこだ」
「え?青道でしょ」
「そうだな、青道に物怖じせずお前の球を受けられる捕手は限られるな」
「…………え?まさか監督、マジ?」
「勝ちは譲る気はない、今からブルペンに入り調整しろ。網代」
「はい?」
「明日、お前が鳴の球を捕れ」
「……監督?何を言ってるのかさっぱりなんですけど」
「おいらの球慣れてるでしょ?そゆこと」
「いやあの」
「2軍でもまだおいらの球ちゃんと捕れないでしょ」
「いやいやいやいや、えっ?」

鳴に引きずられるようにブルペンに連れられた私は本当に何がなんだか分からなかった、捕手は居るのになんで私が明日鳴とバッテリーを組むんだ。

「サインはわかるでしょ」
「わかるけど、監督は気でも狂ったの?」
「おいらが前にちょこっと梨沙ってめちゃくちゃ投げやすいんだー、とか言ってたらあの自主練見てた見たいでさー」
「鳴のせいじゃん!」
「ぷぷぷー、焦ってんの?」
「キレてんの!」

明日、槍でも降って試合中止にならないかな、と願いながら私はその日寝た。


***


「降るわけないよね」
「なにが?」
「なんでもー」

とても綺麗な晴天、そして私が足を踏み入れた青道グラウンド。帽子を目深に被って大きなため息を吐いた。

「イレギュラーが起きまして、こちらの捕手は網代でお願いします」
「練習試合ですから、……しかし、大丈夫ですか」
「問題ありません、そちらの御幸と同じシニアで捕手やってた網代ですから」
「あら梨沙ちゃん?」

監督たちの会話が聞こえてきて身を縮める、なぜこんなに買ってくれているのだろうか。
一也をスカウトした高島さんも居てペコリとお辞儀をしておいた。

「ぷぷぷー、見た?一也の顔!」
「あとでなんか言われそうだから見てない」
「えーつまんねえの」
「鳴、一也はランナー居ると打つ確率高くなるから抑えるよ」
「……ん!」
「倉持くん、あれ走らせると面倒だから盗塁は阻止しよう。絶対塁に出たらすぐ盗塁すると思うから……私の肩がんばれって思っといて」
「笑うんだけど」

先攻は青道、整列してお辞儀をするもこちらに視線が集まっているのがわかる。チビだもんな!わかるよ!!!

「鳴」

マウンドに立った鳴の元へ走る、久々にグラウンドでキャッチャー装備全部載せをしているので気持ちがシャキッとする。

「やっぱ倉持くん最初で来たね、甘めダメだよ」
「分かってる」

ミットを足元に置いて両手で鳴の顔を抑える。

「勝つのは稲実だから、練習とは言え気を抜かないこと」
「うん」
「さっき投げた感触からは調子がいいから、インついてこう」
「はー、梨沙のこと心配してんのバカらしくなってきた。思いっきり投げてやる」
「心配ありがと、いくよ」

鳴から離れ、位置につく。すごいあの、倉持くんが見てるのがわかる。

「プレイボール!」

ストライクギリギリ、アウト側へミットを構える。サインを出せばこくん、と頷く鳴が見えた。
鳴が投げる、少し外れた。体の位置を動かしボールを捕る。

「ボール!」

力んでる、鳴にボールを投げ軽く手首を振れば深呼吸したのが見えた。樹くんじゃないから変に力が入るのだろう。


***


結果として倉持くんを塁に出してしまった、フォアボールで出してしまったので鳴が不快感を隠さず顔に出していたので笑ってしまった。

(多分、盗塁来る)

白河もわかっているらしく、セカンド寄りだ。
鳴もリードがでけえよ、という顔をしながらこちらを見ていた。
鳴が投げる、一塁から倉持くんが走る。

「セカンド!」

ボールを捕った瞬間に立ち上がり、思い切り投げる。白河が二塁に入り、白河のグローブに私の球が思い切り入る、も

「セーフ!」

ギリギリ倉持くんが早かった、あー、悔しい。
……しかしチームメイトたちが目をパチクリさせているのもなんか、ムカつく。私だってキャッチャーなんですけど!?
その後順当に2人アウトにし、倉持くんを二塁から動かさず四番の一也がやってきた。

「……お前、敵にしたくねえよ」
「褒め言葉ありがと」

ぼそり、と言われた言葉にふ、と笑う。鳴が唇を尖らせ不快です!みたいな顔になっていた。


***


勝敗はつかなかった、同点で試合終了となった。打者としては出なかったが私も思い切りキャッチャーの動きをさせられた、疲れた。

「監督疲れました」
「よくやってくれた、期待以上だ」
「自分であんなに動けるとは思ってませんでした」

ぐでん、とベンチに伸びながら帽子を顔に被せているとなんだか周りが騒がしい。このまま合同練習も少しするみたいで青道のマネージャーのお世話になろうかなぁと考えていた。

「梨沙ー!」
「むりー」
「ちょっとー!?」

青道側のベンチスタンドから鳴の声が聞こえてきたが手を軽く振って拒否の意を示すも鳴には無関係だ。

「ほら動くよ!」
「疲れたー」
「練習不足でしょ!」
「私を球児と同じにしないでくれる?」

思い切り引きずられているが関係なく引っ張っていく鳴に段々笑いが漏れる。本当俺様だな。

「はい!」
「いでっ、ごめん」
「折れたわ」
「……なんだ一也か、謝り損だわ」
「お前な……」

鳴にぽい、と投げられるように手首を離された。誰かにぶつかったので謝ったら相手が一也だったのでため息を吐いておいた。

「俺さ、梨沙に毎日受けてもらってんだよね、球」

容赦無く鳴の腕が肩に乗る。重たい。

「は?」
「ちょー投げやすいの、こんなに小さいのにね!」
「小さい余計でしょ、てかなんのマウント!」

ぐい、と肘で鳴の体を押すもさらに体重を上乗せされ肩を組まれる。はぁと小さくため息を吐いて一也を見る。

「ごめん一也、ちょっと鳴調子乗ってる」
「あー、分かる」
「ちょっと?!」
「てかマウント取るために呼んだの?ストレッチしてよ!ほら!手伝うから!一也またね!」
「え、ああ、おう」

どうやらストレッチはしていなかったようで文句を垂れながらも私に押されていった鳴、合同練習はこれからでしょ!


***

「ヒャハハ!すげー顔してんじゃん!」
「……めちゃくちゃ鳴にムカついた」
「網代か?すげーよな、ってアイツら仲良いな。付き合ってんじゃね?ヒャハハ!」
「倉持、冗談でも次言ったら蹴るからな」
「おーこわ、マジじゃん」
「あー!なんで青道来なかったんだよ、くそ……」



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