「ねえ、俺たち付き合ってるんだよね」
「んー?」

急に家にやってきた鳴を無視して先日の試合のスコアブックを見る。3年の秋大後、プロ入りが確定している鳴はちょこちょこ時間が出来ているようで連絡も頻繁にしてきている、私は返せないことが多いが。

「梨沙の家じゃん、なんかこう、恋人みたいなことしないわけ!?」
「んー、ちょっと待って」
「ねー!!!」

ばふん、と私のベットに拗ねて顔を埋めてしまった鳴をチラリと見て走り書きでメモを取る。
マネージャーを引退した今でもちょくちょく顔を出している、今は少し気になったことを書き出しているだけだが。

「……梨沙の匂いがする」
「そりゃ私のベットだからね」
「なんか変な気分になる」
「退いて」
「やなこった」

せっかく整えた布団をぐしゃぐしゃにしていく鳴を見てため息を吐く、スコアブックを閉じて丸まってしまった鳴の横へと座る。

「ほら終わったよ鳴」
「……」
「めーいー」

そのまま体を鳴の横に倒れ込む、下敷きになった布団がぐいぐい引っ張られそのまま布団の中に包み込まれてしまった。

「なんかおいら今幸せって感じする」
「なにそれ」
「……プロ入りしたらさぁ、寮なわけじゃん。……こうやって梨沙に簡単に会えなくなるのやだなー!って」

首元に鳴の髪の毛が触れて少しくすぐったい。
そう、鳴はプロになる。私は大学生で全然違う生活をすることになる。

「だからって、別れるのは嫌だかんね!」
「分かってるって」
「いーや、分かってないね。どれだけ俺が梨沙のこと見てきたと思ってんの?」
「物心ついた時から?」
「正解!だけどさぁ!」

ぷぁ、と少し苦しくなってきたので布団から顔を出せば鳴と目が合う。

「め、……んぶ」
「……もうちょっとさぁ、色っぽい声みたいなの出せないわけ?」
「思いつかないんだけど」
「まーそうね、梨沙はそうだもんね」

触れるだけのキスが降りてきて変な声が出た、それに些かご不満だった鳴は唇を尖らせて文句を垂れていた。

「鳴」
「ん」
「私、鳴のヒーローインタビューを見るのが夢だからがんばってね」
「……なにそれ、絶対見せてやるから待っててよね!」

ぎゅーと力任せに抱きしめられて苦しい苦しい、と腕を叩いてアピールする。スポーツ選手の力はすごいんだからな。

「俺、今日夜には寮戻らなきゃなんだけどさ」
「うん」
「……えっちなこと、しちゃダメ?」

ビシリ、と私の体が固まるのがわかる。鳴と付き合って数ヶ月、鳴と知り合ってもう18年が経とうとするがキス以上のことはしていない。

「いや、あの」
「俺も健康な高校生なわけなんだけど」
「……うん」
「正直今の状況もキツイんだけど」

じゅくじゅく、と体全体が熱を持ってくるのがわかる。いや、そんな、覚悟しなかったわけではないが、いざ言われると、とても、恥ずかしい。

「ぷぷ、真っ赤」
「……誰のせいだと」

鳴が体を起こして私を見下ろす体勢になった、体格が夏よりも見ないうちに良くなって、男性と意識せざるえなかった。

「ゴムなら買ってあるんだけど」
「いつの間に」
「来る時」
「……あの、初めて、だし……色々と、恥ずかしいんだけど」
「初めてじゃなかったら怒るんだけど?!……俺だって初めてだから、ゆっくりやってこーよ」
「鳴からゆっくりって言葉が出てきたことにびっくりした」
「そこ?!」

ダメ?と囁くようにおねだりしてきた声に私は陥落した。鳴のおねだりに結局弱いんだよなぁ、くそう、悔しい。


***


「おーっす、ってなんか死んでねえか?」
「……倉持かぁ」
「なんで朝から死んでんだよ」
「ちょっと体動かしたら痛めたんだよ」
「体力足りねえんじゃねえの、ヒャハハ!」

案の定変な筋肉を使ったのか腹回りが痛い。あと鳴の体力がすごいことがわかった、現役高校野球男児はすごい。

「なー、網代。朝から鳴が上機嫌でめんどくせえんだけどなんかした?」
「え?なんで」
「めちゃくちゃメールが来る」
「無視しといていいよ」



TOP