「一也おかえりー」
「…………何食ってんの」
「ビーフジャーキー」
「おっさんかよ、父さんには」
「あがって良いって言われてるよ、大丈夫」
年末年始の休みに帰省したら幼なじみが家でビーフジャーキーを食べてた。冷蔵庫を見ればビールだけで買い出し行くかぁ、とため息を吐いた。
「買い物?ついてく」
「あ?なんで」
「お母さんに一也のところでご飯食べるって言ってきちゃった」
「なんで」
「一也のご飯久々に食べたくなったから」
ジャーキーをもぐもぐと食べる梨沙にため息、こいつ俺がどんな気持ちでお前と接してるのか分かってんのか。わかってねーよなぁ、梨沙だもんな。
「んじゃ、荷物持ちな」
「お金もちょっともらってるから安心してくれたまえ」
「何食いたい?」
「一也のご飯なんでも美味しいからなあ」
「…………お前、そういうのいうのやめろよ」
「あ、照れてる」
梨沙は至極当然だと言わんばかりにさらっと言った、不意打ちを突かれた俺はぶわ、っと顔が赤くなるのを感じた。
「父さん、買い出し行ってくる」
「ついてきまーす!」
「……」
まだ仕事を続けている父さんは軽く手をあげるだけ。時間的に買い物から帰ってきたら仕事は上がるだろう。
***
買い出しを終えて軽い方の袋を梨沙に持たせる、梨沙は頑なに持つよと言っていたが筋トレになるから。と言えば閉口した、こいつも野球バカだから選手第一なところあるんだよなぁ。
「た」
「ただいまー!あ、お疲れ様です!」
「……ん」
「お前なぁ、俺よりも先に言うなよ」
「言ったからいいの、結果論結果論」
そのまま梨沙は「注ぎますよ!」と父さんにビールの酌をしていた、小さい頃から一緒だけどこいつマジで俺の家に入り浸りすぎなんだよな。
「一也、手伝うよ」
「そしたら洗ってくんね?」
「はいはーい」
俺が料理をして梨沙が洗う、後ろからはテレビの音が聞こえてきた。
……なんか、今、すげえ……新婚みたいじゃね?と思ってしまった、横目で梨沙を見るとなんだか機嫌が良いように見える。
「一也」
「ん?」
「青道楽しい?」
「……楽しいよ、稲実は?」
「楽しい、鳴がうるさいけど」
「はっはっは、鳴だからな」
満足したように笑う梨沙、梨沙がこっちにくればもっと楽しかったけどな……という言葉は内に仕舞い込んだ。
***
「送ってく」
「え、いいのに」
「……遅くなるなよ」
「ん、行ってくる」
「私の意思無視?」
飯を食い終わった後、梨沙が1人で帰ろうとしていたから声をかけた。
父さんのセリフにちょっと笑った、やっぱり俺の父さんってとこだな……。
「ごめん一也、ありがと」
「近いからって1人で帰ろうとすんな、あぶねえから」
「うん、あ!公園寄ってこうよ、懐かしい」
「あんま走んなって」
よくシニアの時に立ち寄った公園、練習終わりにキャッチボールやら素振りやらをしたなぁと小走りで公園に入ってく梨沙を見ながら思い出した。
「まだ鳴の球捕ったりしてんのか」
「うん、正捕手の負担にさせたくないからね」
「お前……そういうところだよなぁ」
「なにがよ」
あんな小さな体で鳴の球を未だ受けてるという、あくまで正捕手への負担を考えているあたり野球バカなんだよ。
「……正月、予定あんの」
「正月?なんも」
「初詣いかね?」
「いいよ!おみくじ引きあいね」
「凶率高いだろーが」
「うーんなんでだろ」
内心ガッツポーズをした、今は告白するつもりもねーけどこういう幸せは噛み締めたっていいだろ?……すぐ練習始まるんだし