「あ」
ふと思い立った、そして即行動。全て現地調達で大丈夫だろう、夏だし。
『今暇?』
『何、暇だけど?!』
鳴にそんな連絡をすればなぜかちょっとキレ気味の返事が返って来た、文面なのにキレ気味ってわかるの面白いな。
稲実の最寄りの駅に着く、駅近のスーパーやらなんやらが入っている商業施設に足を進めバケツやらマッチやら手に取る、おっと忘れちゃいけないのがこれ
手持ち花火だ。
視界は稲実の寮を見ながら電話をかける、2コールくらいしたあたりで『何?』と声がした。
『鳴、外出て来て』
『は?なん……まさか外にいんの?!』
『はっはっはー、専用グラウンドの土手ね』
ピッ、と電話を切る。今さっきまで夕日がギリギリ照っていたが辺りは薄暗くなっている、街頭だけが煌々と輝いている。
「おま、バカじゃないの!?」
「早いね鳴」
「急いだの!!あー、もう疲れた!!!」
専用グラウンドの脇にあるベンチに腰掛けて待っているとダッシュで悪態をつきながら鳴がやってきた、そして全体重をかけるように私の隣へと腰掛けた。
「で?なに、バケツなんかもっちゃってさ」
「花火やろ、鳴」
「急じゃない?!」
「思い立ったの」
「いいけどさー」
「でもここグラウンド近いから火気厳禁じゃない?」
「んー、多分こっちならいける。来て」
少し離れた裏側、すぐ近くに蛇口もあり鳴がバケツに水を入れてくれた。
「……なんで俺の所来たの」
「ん?……鳴と花火したかったからかなぁ」
蝋燭に火を灯す、バチバチと色んな色を出しながら瞬く手持ち花火を見ながら呟く。「ふーん」と言ったっきり何も言わなくなった鳴の顔を見る。……小学、中学と毎日見ていた鳴の顔は、いつの間にか男の人の顔つきになっていて、見慣れない。
「ま、野球漬けで男ばっかの高校生活じゃなくなったね、これで」
「それ自分で言うの?」
「毎日見る姿がカルロスの半裸なのキツイよ!」
「まぁ、それは、そう……」
苦笑しながら他の花火を手に取る。緩やかに、他愛もない話をしながら時間が過ぎていく。
***
「あとこれだけじゃん」
「私これ大好き」
「そ?静かじゃんこれ」
「それがいいのよ」
線香花火に手を伸ばす。パチパチとゆっくりと爆ぜる線香花火が実は大好きだ。
「梨沙」
「んー?」
「……」
「いやなに、なんで何も言わ……」
むにゅり、と頬を抓まれた。目をぱちくりとすればなんだかバツが悪そうな顔をした鳴と目が合った。
「もうちょっと待っててくれない?」
「え?なにが」
「いいから!待っててよね!」
「よくわかんないけどうん……」
月明かりに照らされた鳴の顔はちょっと不満げに唇を尖らせていた。
花火が終わった後も鳴と話してたら遅くなってしまい、親に怒られたのは内緒の話。