「ねえ!俺の投球見てたでしょ、どう思った?」
「すごいですねー」
「すっげえ他人行儀……いででで!」
「力抜いてねー」

大学卒業後、在学中に取った資格もあり球団トレーナーとして一歩を踏み出せた。……が、御幸の居る球団ではなく他球団、しかも成宮鳴がいる球団だった。

「梨沙がトレーナーになるとはなー、本当挨拶の時めちゃくちゃ笑ったわー」
「本当にね、こっちはガチガチに緊張して行ったのに出迎えが大爆笑って」

鳴の体を解しながら会話をする、やることは沢山あるが先輩トレーナーからはやれば慣れる!というありがたいお言葉を頂いてこうして初心者ながら実務をさせてもらってる。相手は鳴だけど。

「てかさー、梨沙に聞きたい事あったんだよねー」
「なに?」
「一也の彼女って本当?」

手が止まった、鳴がそう言うってことはほぼ確定事項を確認しているだけだ。鳴の顔を見ればにまー、っとうざい顔をしていた。

「あ、手止まってるよー」
「うるさいなぁ」
「ダメだよ手止めちゃ、認めてるようなもんじゃん」
「鳴だって分かってるじゃん」
「まぁ、そうねー」

解した肩を回して調子を確認している鳴を横目にトレーナーノートへと書き込む、行ったストレッチの方法からなにからかにまで記入するのだ。

「つーかさー、今日の相手。誰か分かってんでしょ」
「仕事は仕事なので」

そんなタイミングでブブ、と鳴る携帯。鳴はまたにんまりーと笑っていたため頭を抱えた。

「携帯見たら?俺怒らねえし、誰からなんだろーな?」
「……鳴、なんか話した?」
「話したかもしれねーししてねーかも」

携帯をチラリと見れば一也。『今どこ?』と簡素な連絡。

「ツーショ撮って送ってやろーか?」
「拗ねると長いからやめてよ」
「おもしろそ、俺の携帯から送ってやろ」

頭をガッ、と掴まれて写真を撮られた。
鳴がよし、と呟けば私の携帯がすごい鳴る。

「ちょっと鳴責任とって欲しいんだけど」
「え?プロポーズ?いいけど……」
「よかねーよ!ああ、ついに電話が……」
「梨沙も仕事これで終わりでしょ?構ってあげたら?」
「鳴が発破かけといて放置かい!」

ふんふーん、と鼻歌をしている鳴を睨みつけながら電話を取った。

『アレ、何?』
「鳴の悪戯……」
『まぁトレーナーだからな、近いのはわかるけど写真は撮らなくてよくない?なんで撮らせた訳?』
「鳴が……」
『本気で拒否れたよな?俺とは写真撮らねえくせに!』
「ごめん……って何?だって鳴は勝手に撮ったけど一也とは嫌、一也の顔の良さが目立つだけじゃん」
「ふっ」
『おい奥で鳴笑ったろ』
「鳴聞こえてるよ」

中学、高校とはあまりわからなかったけど御幸一也は割と拗ねる。そしてすぐ拗らせる。まぁそれの対処にも慣れたもんだが。

「うちは今回ホームだけど一也違うでしょ、時間大丈夫?」
『……会いたいんだけど』
「イケ捕我慢して」
『だー!もうめんどくせえ、なんでこっちの球団じゃねえんだよ……』
「いつかいけるよ多分ね」

隣でずっと鳴が笑いながら荷物をまとめていたがまとめおわったらしい、携帯を耳に当てながら出ようか、とジェスチャーをして扉を開けてびびった。

「補給!」
「うわっ!……わざわざ来たの?!」
「梨沙のこと大好きじゃん、キモ」
「次の試合でお前からホームランとってやるからな」
「へぇ言うじゃん」
「もういいからいいから、バレたら怒られるでしょ私が」
「メール!見ろよな!返事!」
「はいはい」
「はいは一回だっつの!」

バッ、と抱きしめられ何事!?と思っていたら相手は一也だった。わざわざこっちまで来たみたいだ。
適当にあしらって、時間もあるだろうしと急かせば拗ねながら小走りで帰っていった。

「愛されてんね」
「不安になるよ」
「いいなー!俺もそういう子欲しいー!」
「鳴はちょっと遊びすぎ、いつか文春されるよ」
「それはちょっとやだなぁ……」

首をコキ、と鳴らした鳴に続いて歩く。
携帯の微振動に気づき、画面を見れば『鳴からホームランとったらこっちこいよ』と書いてあり、そうもいかないんだよなぁ……と携帯を仕舞った。



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