◆今日の真田とみたらし
向こうをむいて座っている相手の背中に文字を書いてみる。あっ、こっち向いちゃだめ。なんて書いたか当ててみて。

***

授業中、なんだか意識がぼんやりとして集中できない。今日はそんな日か。ぼんやりと外を見ようとしても外が遠い席なので現実逃避も出来ず、教科書を眺め見る。……寝る、気も起きない。ふう、とため息を吐いて気づく、目の前にある背中に。

(……すごい筋肉だな)

つつつ、と指で背中をなぞる。ビクッ、と背筋を正す真田を見てふふっと笑い声が漏れる。

「おいっ」
「ほら前向いて」
「……くそっ」

後ろを向いてこようとする真田を制して前を向かせる。ひま、とかやきゅう、とか背中に書いていく。授業中だから話しかけれないのが辛いところか。

「……」

す、き……と書いて我に返った。今のなし!という意味で真田の背中をばちん!と叩いた。そして丁度チャイムが鳴る。

「次は45ページからなー」
「はーい」
「腹減ったー」
「眠くてやばかったわー」

がやがやと騒がしくなる教室、なんてタイミングで授業終わってくれたんだ。

「……網代」
「さっきの無し、ごめん」
「いやいや、無しにできねーから」

ギ、と体を横向きにしてこちらを見てくる真田。羞恥心から顔が見れず机に伏した。

「……そーいうことでいいわけ?」
「忘れて」
「手、貸して」
「取られた……」

掌に真田の指が這う、なんだかくすぐったいが今はそれどころじゃない。

「真田」
「……ん、なんて書いたか当ててみろ」

掌の上で動いた指は、おれも、と動いた気がした。顔をあげれば小さな声で「これ恥ずかしいな」と呟いた真田と目が合った。

「……うそぉ」
「嘘じゃねーよ」


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◆2人きりになり、不慣れな手つきで手を握られ、真剣な声で初めてのちゃんとした愛の告白をされて、パニックで逃げ出そうとして転んでしまう雷市とみたらし

***

「り、梨沙」
「んー?……ん?!!」

小さい頃から学校が終わるとここに2人で集まったなぁ、と久々に来た河川敷。名前を呼ばれたと思えばすごく緊張した顔でこちらと対面する雷市、ぎゅっと雷市の手が私の手を包む。雷市の掌は固くて、がっしりしている。

「あ、……えーと……」
「ど、どうしたの雷市」

握られた手と雷市の顔を交互に見る。口元をもごもごとしてとても緊張している雷市、試合前でもこんな雷市見ない、どうしたのだというのだ。

「梨沙!」
「はい!」
「……俺、梨沙が好きなんだ」

大きな声で名前を呼ばれ反射的に大きな声で返事をしてしまった。と思えば次に雷市が紡いだ言葉に頭が真っ白になった。

「っえ?」
「小学生の時は、よくわかってなかったけど。俺梨沙が居るから頑張れるんだ」
「……」
「えーっと、カハハハ!恥ずかしい!すげえ恥ずかしい!」
「そ、それ私のセリフなんだけど?!?!」

バッと手を離し頭を掻いている雷市の顔は耳まで真っ赤だった。そんな
雷市を見ている私の顔も真っ赤である。

「っあ!」

後退りした足が縺れた。見事な尻餅をしてしまって恥ずかしい、なんでこんなときにコケるんだよ!私!

「梨沙!」
「待って待って雷市!ストップ!ちょっと混乱している!恥ずかしい!整理時間をください!」

雷市は幼なじみで、世話が焼ける子で、一緒にいて楽しくて、ずっと側に居たくて……あれ、もしかしてもう私落ちてるのでは?
恐る恐る雷市を見ると本気でコケた私を心配している顔をしていた、だーっ!もしかして雷蔵さん、こうなることがわかってたのか?!


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◆今日の成宮とみたらし
喧嘩をして相手を泣かせた。泣き顔を見ることがほとんど無いのでうろたえる。慌てて袖口で顔を拭いてやったら小さい声で「ごめん」と言ってきた。許す。

***

「あーもううるさい!もう俺に構うなよ!」
「……そう、じゃあもう絶交ね」
「……は?」

言い争いになることは多々ある、鳴もああ言う性格だし謝らない。私もそんな鳴の性格がわかっていながら強く言うことが多い。そのたびに樹くんやらが間に入ってくれるけど、今は部室に鳴と私だけだ。
鳴が「そんなこといってねーじゃん」やら「ねえ」と言ってくるが無視。荷物を纏めて出入り口へと向かう。

「……成宮くんも早く帰った方がいいよ」
「ッ、おい!」

鳴の声を無視して部室を去る、すれ違いざまにカルロスが居たから部室の鍵を押し付けた、鳴なんて知るか。


***


「……網代さん、居ますか?」
「ん?樹くんじゃん、どうしたの?」
「あー、いや、ちょっと話が……」

珍しくクラスに顔を覗かせた樹くん。喧嘩して3日目、同じクラスの鳴からは視線を感じるも話しかけには来ない。クラスの出入り口のほうに居た樹くんのもとへ駆け寄れば後ろの方でワザとらしく大きな音が聞こえる、樹くんの顔からするに鳴だろう。

「ちょっと出ようか、なんか煩いし」
「あっ、はい……」

クラスから離れ階段の方へと歩いていく。樹くんはなんだか落ち着かない表情だ。

「話って?」
「……察してるかもしれないですけど、鳴さんのことで」
「私は謝らない、鳴が俺に構うな、って言ったから」

だよなぁー、とため息と共に非常に困った顔をする樹くん。

「どうせブルペンで荒れてるんでしょ」
「ええ、とても……」
「鳴、そういう点でも成長してくれたらいいんだけどね」
「……俺、個人的な意見ですけど……鳴さんと、網代さんが喧嘩してるの嫌っす。……仲良く、しててほしいっていうか……」
「樹くん……」

若干下を向いて呟く樹くんを撫でる、後輩にまで心配させてるようじゃダメでしょ、鳴。私が謝れば話は早い、でもそれじゃ鳴は変わらないのだ。

「無視、までいくのは初めてだから……どうなるかわからないけど、樹くんには損な役割させちゃってごめんね」
「いえ、俺が出しゃばっただけで……」
「樹」

不機嫌です、というオーラを隠さず樹くんの名前を言って近づいてくる鳴。バチ、と目が合ったが顔を背けた。

「樹くんまたね」
「あっ、はい!」
「……」

するり、と2人の横を抜けてクラスへ戻る、多分樹くん当たられるなと思ってフォローのメールを入れておいた。ほんとごめんよ。


***


「網代さんお願いです、鳴さんと話してください」
「なんで樹くんが言うの?」
「もう俺も限界で……あと今週末試合なのでこのままだと支障が……」
「んー……」

放課後、鳴が居ないブルペンのベンチでスコアブックをぱらり、と読んでいたら樹くんが目の前に正座して懇願してきた。
思わず手を止めて樹くんを見るとすごく疲れた顔をしていた。無視を始めて2週間は経つ、その間にも試合をやっていたが鳴の調子がよろしくないのはスコアブックからも分かる。

「わかった、練習終わったら鳴に部室に残ってるよう言ってくれない?私が行くって言わないで」
「!わかりました、ありがとうございます……!」
「……ちなみにやばいな、って思った時どんな感じだった?」
「まずサインを見てくれてません、あと投球してても何かずっと気になってるみたいで……」
「どんだけ支障を来してるのよ……」

練習終わり、樹くんがわざわざやってきて頭を下げて来た。いやー、でも鳴と仲直り、というか……私から謝るのは嫌だなぁ……。
部室の前に着いて息を整える、なんかこうして鳴と話すのは久々な気がする。

ガチャ

「ちょっと樹!遅……いん、だけ……ど」
「……成宮くん、話があるんだけどいい?」
「えっ、あ、うん……」

樹くんのつもりで怒鳴った鳴は私の顔を見るなり言葉の勢いが弱まっていった、明らかに今更謝るのもなぁ、みたいな感じになっているのが分かる。

「樹くんから頼まれてここに来ました、投球にも支障が出てると」
「ッ、それは!」
「でも成宮くんが言いましたよね?もう俺に構うなって」

スコアブックを仕舞う、ベンチに座っている鳴は居心地悪そうに下唇を噛んでいた。

「投手が精神的にきてたらチームとしても雰囲気が良くないと思うんですけど?」
「……」
「……成宮くん?」

いつも何か言ってくる鳴が静かだ。幼なじみに無視されてるくらいでそんなくるか?と鳴のほうを見てびっっっっっっくりした。
鳴が泣いてた。それも静かに、ぽろぽろ涙を溢してた。

「っちょ、何?!」

鳴の正面に駆け寄って指や掌、袖で涙を拭いてもぽろぽろとこぼれ落ちてくる。鳴が泣いてる姿なんて、試合で負けて悔しい時くらいしか見たことがないから、テンパる。

「……梨沙、ごめん」
「……え?」
「俺が悪かったから、無視はやめてほしい」

とすん、と鳴の頭が私の肩に置かれる。ずずっ、と鼻を啜る音が聞こえる。鳴の背中に手を伸ばしてぽん、と軽く触れた。

「許す!……っていうか、そんなにきた?」
「うん、俺には話しかけてこねーくせに、樹にはよく話してるしどんだけイラついたと思ってんの」
「樹くんクソ疲れてたんだからね、あとで謝ってよ」
「やだ」

あー、くそ、こんなので泣くなんて。と言いながら私の肩に思い切り顔を当ててくる鳴、これ涙でシミにならない?それだけが気になってた。

「鳴、帰ろ。樹くんにも言わなきゃ」
「目痛い」
「後で冷やして、腫れるよ。……鳴、彼女とか出来たら喧嘩しないでね、無視する方も嫌なんだからね」
「別に、梨沙が居ればいーよ」
「なにそれ」

部室を出たら酷く心配そうな樹くんが居て「迷惑かけてごめんね」と言えば安心したような表情を浮かべていた。
でも鳴が私の肩から顔を上げないから私は動きづらくてしょうがない。

「鳴」
「うっせ」
「はー困ったちゃんだな、都のプリンスは」
「鳴さんも網代さんには頭あがらないんすね」
「そうかなぁ」


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