青道高校、勉強頑張った甲斐があったわ……とまだ肌寒い入学式に参加しながらぼんやりと考えた。
流石野球の名門、青道高校。クラスメイトの中にはシニアで見たことのある人も居た。
野球部にマネージャーとして入部届けを出し、新入生挨拶を迎えた。
「網代梨沙です、小中とシニアで投手をやっていました。マネージャーとして皆さんをサポートしていきたいと思っています。よろしくお願いします」
一緒に入った梅本さんと夏川さんで先輩マネージャーの藤原先輩の仕事を見ながら実際に補佐に入った。
「つかれたぁー!」
「仕事量多いですね……」
「こればかりは慣れだね」
みんなで着替えながらそんな話をする、正直マネージャーは悩んだ。どうしても、やりたくなってしまうだろうから。
「そういえば網代さん、投手だったんだね」
「うん、同じチームに強い投手いたから継投することが多かったけど、レギュラーはってた」
「ええ!すごいじゃん!」
「そういえば青心寮、食堂とかなら入れるからね」
「男子寮なんでしたっけ」
「そう、野球部寮みたいなものよ」
***
練習が終わり、マネージャーのみんなも解散した後に万が一残っていたらと思いグラウンドに拾い漏れた球が無いか探しに回った。
「なんだかんだあるなぁ」
縫い目が解れていないかも確認して倉庫へと戻す、扉を閉めたら人が立っていてびっくりした。
「オッ……」
「何その声」
「人が居るとは……」
「ははー、そう」
「倉庫に用?」
「いや?お前に」
スポーツサングラスからメガネに変えた御幸が外に居て変な声を出してしまった。
「私」
「なんで稲実に行かなかったんだ?」
「行きたくなかったから」
「へえへえ、投手は?なんで」
「肩をちょっとだけ」
「……悪い」
「謝んな、私がなんか悪いことしてるみたいじゃん!」
「……あー!お前の球、受けてみたかったわ」
「何それ照れる。暇な時あったらね」
「そんなのねえだろ……でもまぁ、いつかな」
ぐし、と髪の毛を無造作に掻き混ぜられる。これから私は帰り道歩かないといけないんだが?!と思いながら適当に直した。
***
「あれ、気づかなかった。御幸隣の席だったの」
「おま……まじか!?」
「何、お前ら顔見知りなわけ?」
「倉持くんも居たの」
「どんだけクラスメイトに興味がねえんだよ!俺も倉持も隣と斜め前だろ!」
「ごめんごめん、それと御幸とはシニアの時ライバルチームだったんだ。それで知り合いっていうか、そんな感じ」
クラスについて驚いた、昨日は全然気づかなかった。シニアでみたことある人いるなーとか思ってたのに真横に御幸が居たのか。
「なんだ、お前の彼女かと思ったぜ」
「ええ?こんな性格悪そうな男嫌なんだけど」
「ヒャハハハハ!!!」
「めちゃくちゃ笑ってんじゃねえ!!」
授業中、わからんでもないが斜め前の倉持くんが伏して寝ている。まぁ1年の練習量すごいもんなぁと眺めていたが気づいた、隣の御幸もあいつ頬杖ついたまま寝てやがる。
そんな私も過去の試合の映像を見ていたから夜更かししてしまった。あくびが漏れる。
「あー!寝たぜ!」
「気持ちいいくらい寝てたね」
「倉持お前なぁ」
「そういう御幸も寝てたの知ってるから」
「…………」
「ヒャハハ!言われてやんの」
「小腹空いた、食べる?」
「ん?なんだそれ」
「干し梅」
「めちゃくちゃ渋くて笑うんだけど、頂戴」
「倉持くんは?」
「あー、眠気覚ましにもらうわ」
すっぱ、という顔をした倉持くんにフッと笑いが漏れた。
昼休みに入った途端携帯が振動した、マナーモードにしといてよかった。
「は」
『聞いてないんだけど?!なんで他校行ったわけ?!』
「……」
ピッ、と電源ボタンを押す。それを見ていた倉持くんがよかったのか?っていう顔をしていたけどいいんだ。
「おい、また鳴ってんぞ」
「はー……」
間髪入れずにまた掛かってくる電話にため息を吐いた。
『なんで切るわけ??!?!?!?!』
「なんかうるさかった……」
『俺は言いたいことがあんの!!!!!』
「たまたま行った高校が青道だっただけ」
『そんなわけないでしょ!あー!もう!!!』
「……鳴か?」
「ほら鳴!声がでかいからバレたじゃん!」
『……ハァ?!一也と同クラスな訳?!』
「たまたま同じだっただけでしょーが、お昼食べるから切るよ」
『……ちょっと一也に変わって!!!』
「なんでよ……」
というわけで、と携帯を渡せば俺?と言いたげに見ていた。私でもそうなると思う。
「何、彼氏か」
「倉持くん……ああいや、倉持はそういう話が好きなの?」
「興味をそそられる年頃なんだよ」
「まぁそうね……幼なじみ。投手してるから多分これから戦うこともあるよ」
「へぇー、お前も大変だな」
「他人事だと思って」
「他人事だからな!ヒャハハ!」
持ってきたおにぎりを貪っているとげっそりとした御幸から携帯が返される、画面を見ればまだ通話中だ。
「御幸疲れてるんだけど何したの」
『べっつにぃー!』
「ああ、そう……んじゃまたね鳴」
『……あー!なんかもうムカつく!じゃあね!』
ブツッと切られた携帯を畳んで仕舞う。そのままおにぎりをもう二口。
「お前よくあの鳴の幼なじみやってられるな……」
「なんかごめんよ御幸くんよ」
「本当な!」
「干し梅あげるよ」
「さっきもらったわ……」