◆亡き光景
「マスター」
「……アルジュナ」
なんとなく、見ていたくて夜の廊下で猛吹雪の外を眺めていたら霊体化を解いたアルジュナが声を掛けてきた。
「体が冷えますよ」
「うん、でも見ていたくて」
「暖かい飲み物でもお持ちしましょうか?」
「ううん、大丈夫。アルジュナも座る?」
「……では遠慮なく」
とす、と隣に腰掛けるアルジュナ。藤丸も立香も由理ちゃんも寝静まった夜中、廊下に響くのは私たちの声だけだった。
「眠れないのですか?」
「うーん……そうかも、漠然とした不安に襲われてる」
「……というと」
「このまま人理修復して、はい終わりってならない気がするんだよね……でもそれはそれで、そうなったらどうするべきなのかって……」
「マスターお忘れですか?」
「え、なに」
息を吐きながら外を見て呟く、するとアルジュナがとても神妙な面持ちでこちらを見ていた。
「私が居るではありませんか」
「何を言うかと思えば」
「なにがあっても、私はマスターの味方です」
「そうだね、召喚されて早々敵になった自分と戦ったもんね」
「今思えば鬼の所業ですね」
ふっ、と笑ったアルジュナを見て笑いが漏れた。
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◆魔力の質(捏造有り)
素材を集めにユガに来た、はぁと一息吐けば外気と馴染む。
「マスター、良かったのですか私だけで」
「うん。アシュは出ずっぱりだったからお留守番。カルナと沐浴でもしてるでしょ」
「まぁ私だけでも戦えますが……。土地柄というのもあるのでしょう、この土地は魔力が馴染む」
「やっぱりそうなの?私もここの土地の魔力が合ってるのかなぁ、結構ユガ来ると体動かしやすいんだよね」
ぐっぱ、と手を動かす。何か言いたげにアルジュナがこちらを見ていたが「いえ、何も」と前を向いてしまった。
***
「これで目標個数はクリアでしょうか」
「うん、ありがとう」
「……気になることがあります、マスターからの支援を頂いていた最中も感じておりましたが」
「え、何。なんかした?」
「いいえ、マスター。魔力の質が、変わりましたね」
「……え?変わるものなのそれって」
腕を組み「ええ」と答えるアルジュナにポカン、とする。魔力の質、なんてものは私は知覚出来ない。魔力で顕現しているサーヴァントはそれを感じ取るのは容易いのだろう。
「以前のマスターの魔力の質などと比べるとはるかに、私たち寄りになっています」
「アルジュナたち……?」
「出身地で区分けするのであればそう、このインドと呼ばれる地ですね」
「インド寄りの魔力の質」
「私たちにとってはとても心地いいですが、体に異常はありませんか」
「うん、なんともない」
自分の魔力というのを感じ取れないので首を傾げるしかない、インドの血なんて入っていないのに。
「心当たりは無くも無いですが」
「………………待って、聞いていい?それってさぁ……最近になって顕著に現れた?」
「おや、気づかれましたか」
愉快、と言わんばかりの笑み。話の中でちょっとそうかも、と思っていたのが確信に変わった。
「とは言っても彼はともかく私にとっても心地の良い魔力であることは確かです。誇ってください」
「誇れない……」
ぐったりとした私を横目に砂埃を払っているアルジュナ。最初は良いお兄さんだったのになぜこうも若干意地悪なお兄さんに変貌したのか……。ひとつため息を吐いた。
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◆睡眠
野営、レイシフトでの定番である。ぱちぱちと爆ぜる焚き火を見ながらぼんやりと思う。眠いな、と。
「マスター、眠ければ睡眠を取られた方が」
「うん…………顔が暖かくてここが気持ちいいんだよね……」
「クリスティーヌも夢の中へと旅立った」
ファントムさんの膝で丸まって寝る由理ちゃん。息を吐いて前屈みに頭を倒すとアルジュナに頭を押さえられた。
「焼けます」
「……ハゲたく無い……」
「……マスター、私の膝で良ければどうぞ。敵襲があった際には落としますが」
「愛があるのか無いのかどっちかにして……」
言葉に甘えてあぐらをかいているアルジュナの太ももに頭を乗せる。硬い、けどちょうど暖かくて、良い。
「マスターは人間なのですから眠い時は眠られてください」
「……うん……寝る……落とす時優しく落として……」
「冗談ですよ」
あふ、とあくびをすれば肩まで簡易毛布を掛けられる。結局優しいよね、アルジュナ。
***
「おはようございますマスター」
「……なぜ、わかる……」
「わかってしまうのですから仕方ありません」
意識が浮上した途端に声をかけられ目が覚めた。
どうやら敵襲もなく、一晩を明かせた様だ。寝返りを打ってアルジュナの足に顔を埋めて睡眠の余韻に浸っていると「起きてください」と頬を摘まれた、痛い。
「今日は都市部に向かうんですから、しっかりなさってください」
「うん……立香たちとも合流しないとね」
ふああ、とあくびをしながら立ち上がる。まずは顔を洗いますか。