高校に入学して驚いたこと、それは入学式の時隣に座っていたのが由理ちゃんだったことだ。
由理ちゃんとは前世、と言う言い方をしていいのか定かではないけれどカルデアの時からの縁だ。でも今初めて出会って、それが隣の席だったからひどく驚いた。

「しかも同じクラスでまた隣の席だとはね」
「改めてよろしくね、梨沙ちゃん」
「もちろんだよ、よろしくね」

ふ、と微笑んだ由理ちゃんと笑い合う。しかし、周りを見渡せば結構な人数が見覚えのある顔をしているのだ。

「……気のせいかな」
「……気のせいじゃ無いと思う……私もすごい、久しぶり!って感じの人多いし……」

由理ちゃんもそう言うということは前世で縁のある人が多い様だ、嬉しいがその反面すごい強い縁だなとしみじみ感じた。

「席に着け、余が担任のヴラド三世である」

ガラ、と入ってきた人物に息を飲んだ。あのヴラドさんであったのだ、霊基はバーサーカーであったが……今ではそれは無関係の様だ。

「ふむ、見知った顔もある……がここでは余は教職の立場にある、弁えよ」
「相変わらずですね」
「なんか安心しちゃった……」

由理ちゃんがへにゃ、と笑ってほっとした様な雰囲気を出していた。ヴラドさん……いや、ヴラド先生にそんな気持ちになれるの深く知ってる人じゃないと出来ないよね。


***


初日ともあって今日は挨拶だけで終了、あふとあくびをしながら時計を見る。まだ昼か。

「由理ちゃんは部活見学行く感じ?」
「うん、行ってみようかなって」
「そっかぁ、部活興味ないからなぁ……そうだ由理ちゃん連絡先教えて」
「あ、そうだね。なんかもう知ってるものだと」
「初対面だからね、一応」

連絡先を交換して部活見学に行った由理ちゃんを見送る、うーん素直に帰ろうかなぁ、とぼんやり窓の外を見てめちゃくちゃ、びっくりした。

「ら、ラーマくん?!?!?!?シータちゃんも居る!!!!!!!ま、まって、ああくそ!」

荷物も持たず、走る。息が切れる、体力は無いんだ!階段を飛び降りながら靴も履き替えずに出る。たしか、ここらへんに居たのに、どこに行った……?

「つ、つかれた、どこだ……」
「……マスターか?」

中腰になって息を整えていると声を掛けられた、緩やかに顔を上げればラーマくんとシータちゃん。

「ラーマくん!シータちゃん!おぼ、覚えてる?!」
「もちろん、もちろんだ!マスター、良かった、貴方も居たんだな」
「お会い出来て嬉しいです、マスター様!」
「泣きそうていうか泣いてる、ラーマくんとシータちゃんがこうして会えているなんて」
「ああ、夢の様だが現実なんだ。貴方にも会えて余は嬉しく思う」

べそべそと涙を流している私に対しても優しいラーマくんとシータちゃん。シータちゃんはハンカチを取り出して私の顔に当ててくれている、いい匂いします。

「……そういえば、ラーマくんとシータちゃんは、何年生なの」
「余とシータは2年だ。マスターは1年だろう?」
「えっ先輩じゃん……ラーマ先輩とシータ先輩だわ……」
「そう気にするな!」
「そうそう、ええと……梨沙、ちゃん?」
「めちゃくちゃ可愛いんじゃが」
「そうだろう、余のシータだ」
「存じ上げております」

そういえば上履きだ、と気づくとラーマくんとシータちゃんがついてきてくれることになった、1年の教室に向かわせてすまんね。

「梨沙よ、アルジュナ達もいるが会っていくか?」
「えっ!!!!!!いるの!!!!!」
「ええ、パールヴァティー先輩とカーマ先輩は3年ですがあとは私たちと同級生なんですよ」
「みんな先輩なんだ……」
「ふむ、まだ皆教室に居る様だぞ。行くか?」
「先輩の教室に行くの……ちょっと勇気居るよね」
「行きましょう、梨沙ちゃん!せっかくなんですから!」
「シータ先輩がいるからいきます」
「余もいるぞ」

階段を登るたびに心臓がバクバクする、こんなにも緊張したのは久々な気がする。
空気感が変わる、なぜか先輩の廊下って緊張するよね。なんでなんだろうね。

「アルジュナ、カルナ。まだ居たか」

先に教室に入って行ったラーマ先輩を見てめちゃくちゃ緊張がピーーークになっていく。無意識に手を握っていたらしくシータ先輩にそっと包まれた。

「梨沙ちゃん、安心してください。私たちはひと時も貴方を忘れたことはありませんでしたよ」
「……シータ、先輩」
「皆、貴方のことが好きなのですから」
「うん……」
「ほら、行きましょう。ね?」

シータ先輩と一緒に教室を覗けばバチリと目が合った。カルナと。

「!」
「……」
「アルジュナとカルナに会わせたい人がいてな」
「なんですか、告白などはお断りですよ」
「アルジュナ」
「なんですかカルナ…………!!!!!!!なぜ早く言わないのですか!」
「いや、俺も今目が合ったんだ」

カルナに声を掛けられてガタリと立ち上がるアルジュナ、周りにいたクラスメイトはなんだという顔をしながらアルジュナを見ていたがお構いなしにこちらにずんずん近づいてきていた。

「マスター!!!」
「いやもうマスターじゃ無いです……久しぶり、アルジュナ」
「マスター……!ああ、マスターなのですね」
「いややめてその行動やめて」
「久しいなマスター」
「カルナお願いアルジュナのこれやめさせて」
「無理だ」
「あっはい」

私の両手を包み花の咲くような笑みを浮かべるアルジュナに顔を向けられない。カルナに助けを求めたのに一蹴された。

「アルジュナ、カルナ。マスター……いや、梨沙は1年だ。余たちの後輩だぞ」
「なんと!守らねばなりませんね」
「いやなにを」
「ふふ、梨沙ちゃん。大丈夫だったでしょう?」
「……うん、ありがとうシータ先輩」

「おいここで溜まってんじゃねえ、邪魔だァ!!」

目を見開いた、その声は何度も聞いた彼の声。

「アシュヴァッターマン、そんなに大きな声を出しては驚きますよ」
「てめェはもう慣れただろう…………が」

目が合った、と思えばアルジュナの手の中からするりと私の手は抜けた。いや、手が抜けたというか抜けざる得なかった。気づいた頃にはアシュの腕の中に包まれていた。

「梨沙」
「…………あ、アシュ」
「本当にお前なんだよな、生きてるんだよな」
「死んでないよ」

アシュが、動かなくなった。顔を動かして近くのカルナに助けを求めてもゆるく微笑むだけだった。


***


「てことが昨日あったんだけど」
「出会いクエストクリアって感じ」
「笑っちゃった。なぜか朝カルナが家の前に居たんだよね、教えてないんだけど」
「…………こわぁ」
「登下校、共にするぞなんて言われた時には私って漫画のヒロインだったのかなって錯覚したんだよね。普通にやばいよね」
「やばインドに囲われたね」
「語呂がいい100点」
「ありがとう」

由理ちゃんとお昼を食べながらそんな話をしていた、そういえばアルジュナがチラリと「そういえば怪人の彼も居ますよ」と溢していたが私から由理ちゃんに言うことでも無いだろうと黙って置くことにした。

「……そういえば先輩呼びで安定したの?」
「いいや?違和感バリバリだったから他の人がいない場だったらいつも通り呼ぶことにした」
「だよねえ、私ヴラドさんの呼び方慣れなさそう……」
「それ、きついね……」

ふう、とため息を吐きながら頬杖をつく由理ちゃんを見ておにぎりの最後の一口を口の中に放り込んだ。



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