「梨沙先輩、ちょっと」
「なにさ」

後輩の藤丸から呼び出されたと思えば目の前に変わった服を身に纏ったカルナが居た。

「じゃ、そういうことで」
「いやいや待て待て、まぁわかるよ。今の時期はクリスマスだもんね、今年のサンタはカルナかな」
「ああ、オレはサンタカルナだ」
「わかりやすい自己紹介をありがとう、藤丸。私に一任するのは地獄ではないですか?」
「だって立香と由理先輩は平安京行ったからパスって逃げられたんですもん」

脳裏には彼氏たちとこの冬を過ごすであろう2人が思い浮かべられる、はぁと小さくため息を吐いた。

「まぁカルナは私のサーヴァントだし、仕方ないよね」
「じゃあ!」
「ただし藤丸、お前も道連れだ」
「ご無体な!!!!」


***


それから藤丸とマシュと私でサンタカルナのプレゼント配りを見ているのだが……。

「ここまでカルナさんのお仕事に同行させてもらっているわけですが……。歴戦のクリプロである、先輩の目からみてどうでしょうか?」
「クリプロの藤丸さんどう思いますか」
「やめてよ!……うーん、ちょっと圧が強いかな……?」
「結構入ってみんなちょっと強張るしね」
「理解している。部屋に入ると緊張感を持って身構えられることが多い。……もしや、不審者と思われて……。やはり入った瞬間に名乗りをあげるのが礼儀だろうか」
「——『サンタクロースだ、そこを動くな』と」
「ふふっ」

笑ってしまった、サンタカルナには気づかれなかった様子だが藤丸とマシュはこちらをじっと見ていた。そんなに見るな。

「いや、なんていうか……大事なのは笑顔じゃない?」

そういった藤丸を横目に笑顔が得意だったサンタの子たちって割と少なくない?と思い出していた。最初のサンタオルタとか笑顔とは無縁でしたけど。

「笑顔か。……努力はしてみよう」
「笑顔のカルナちょっと怖いんだけど」
「先輩は黙ってて」
「つら……」
「自らの高められる部分は貪欲に高めていかねばなるまい。そのためならばどんな修行やトレーニングにも耐えてみせる。歯応えのある相手とのスパーリングもやはり必要だろうな」
「……なんかカルナ、ボクサーみたいだね」
「はい、梨沙先輩。先ほどのアシュヴァッターマンさんがおっしゃっていたことを思い出します……」

マシュが言った言葉で先ほど会ったアシュとカルナのやりとりを思い出す。
先ほど会ったアシュとカルナは男子高校生がやるような小突き合いをした後に話をした。

『一番修行していた時代に内面が寄っちまった、みてぇな話よ』
『ストイックな修行の形を現世風に突き詰めた結果があの拳闘スタイルなんじゃねぇのか?』
『普段よりトンチキなこと言うかもしれねえが、ま、カルナはカルナだ。あんま気にすんなよ、んじゃあな!』

そう言ったアシュは食堂でご飯を食べに行った。一連のセリフは藤丸に向けたもので私にはわかってるだろう、と言う様な目を向けていた。その通りでわかってたし、カルナはカルナだなぁと感じている。ただとてもストイックなだけだ。

「よし——次に行くぞ、マスター、藤丸、マシュ。ここからはプレゼント配り兼ロードワークだ。悪いがついてこれねば置いていく。辛ければトレーナー用の自転車を使え」
「とりあえず追いかけてみませんか、先輩?」
「えっ走るの私嫌だよ、自転車使うね」
「えっ!じゃあ俺走り?!……よし!」

「自転車使えばよかった……」
「カルナ早いんだから無理しないでよ」
「自転車速攻で乗ったくせに!」

マシュから渡された水をごくり、と飲んでいく藤丸。ちりんと自転車のベルをなんとなく鳴らしてみた。

「ではこの部屋にプレゼントを渡しに入るぞ」
「動くな!オレはこの通り笑顔だ!大人しくしていれば用事はすぐに済む!」

頭を抱えた、ちょっと嫌な予感はしたんだけど完全にそれは強盗のセリフだ。中で刑部姫が悲鳴を上げているのが聞こえた。

「おお、オタクって感じ」
「ちょっと梨沙ちゃんうるさいよ!」
「ごめんごめん」

刑部姫の部屋に入ってぽそりと呟けば刑部姫にすぐ拾われた、逆に親しみが持てる部屋で落ち着くぞ、刑部姫。
そしてふ、と視線を戻せばカルナが刑部姫にプレゼントを渡していた、が……見慣れない黒い、箱だった。

「わーい!ありがとー!…………。あれ?開かない……」
「む……ふむ。ではこう、……掲げて持っているといい」
「?こう?」

ちょっと嫌な予感がした。

「カルナ!」
「サンタパンチ!」

カルナの指が光った、と思えば刑部姫のプレゼントが壁まで吹き飛んでいた。あーもうそうなる!?

「プレゼント、開いてないね……」

ぽつり、と呟いた藤丸。その通りプレゼントは無事だった。


***


「普通のプレゼントも出てるのにたまにあの黒いのが混じっちゃう感じだね」

時たま黒い、開けられないプレゼントが混ざってしまっている。

「……ダヴィンチちゃんにちょっと聞こうか」
「そうですね、それが一番かと……!」

「うん、やはり異常が起きていると分かったよ」
「何者かがサンタパワーに遠隔的な干渉を加えているのデース!」
「黒いプレゼントはそのせいで起こっているバグのようなものだ」
「外部因子による医療物質汚染、決して見逃せません。速やかに対処すべきです」
「どうして開けられないのかわかったの?」

黒い箱、通称ブラックプレゼントを軽く小突いてダヴィンチちゃんに問う。

「うん、これは——言ってしまえば概念的に外の世界と隔絶されている。信じられない強度の概念結界自体がミニマムな箱の形を取っている様なものだ。そんじょそこらの魔術で作れる様なものじゃない。それこそ神の権化レベルの大それた干渉がほどこされている気がするよ、この箱には」

そんな話を聞いて口元に手を当てる、神レベルが関わっている、というのは何故だろう。
話を進めるうちにダヴィンチちゃんがとある場所の図を示した。

「……特異点?」
「いくつか微小特異点の発生が確認されてね。追っていった反応はその一つにあると判明した」
「つまり——元凶はそこにいる、ということか」
「可能性は高い、特異点の形状からしてみても無関係ではないだろうね」
「形状?」
「この特異点自体も隔絶されているのさ」

特異点、となるとこれから行うのはひとつ。

「だったら、行くしかないですね」
「そうこなくては。感謝しよう、マスター」

行くしかないと言ったのは藤丸で、カルナがみたのは私。え?まて?私もレイシフトするのか??

「もちろん、私もご一緒させていただきます!場所はええと、寒いところのようですね」
「いやあの私は」
「どうしても少数精鋭になってしまうよ、いいね」
「よし!行こう!梨沙先輩!」
「お前1人で行きたくないからって巻き込むんじゃない!!!!!!」
「カルナのマスターは梨沙先輩だろ!!!!!」
「いーーーーーーーーーーーん!」
「鳴かないでください!梨沙先輩!」
「行くぞ、マスター!」
「ああああ寒いんでしょうやだーーーー!!!」



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