※詰め合わせ※くっついたあと多め
「おい、リサは居ないのか」
ワイワイガヤガヤ。食堂はありとあらゆる食べ物、飲み物、主にお酒だが。の匂いが充満している。
んぐ、と口に含んだフライドポテトを咀嚼して、飲み込む。
「リサさんですか?まだ仕事されてると思いますけど……だよね?立香」
「うん、私がここに来る前まだモニターに向かってたよ」
「声はかけたのだろうな」
「もっちろん!でもリサさん、仕事メインな所あるしねえ……インドラ様、寂しいの?」
「たわけ。……ふん、酌でもさせようと思ったがな」
くぴり、と杯を口元に寄せるインドラ様。
でも俺は知っているのだ!インドラ様がリサさんのことが好きなことを!
……と口が裂けても言えない。息子のアルジュナにそれとなーく聞いたら「あぁ、存じ上げてますよ」とサラッと言われて父親の好きな人って複雑じゃないのかな、とは思ったが神話の規模だと些事なのかもしれない。
「……おい、席を外す。酒は自由にしろ」
スタスタと去っていくインドラ様を横目に立香と目を合わせる。
「ぜーったい、インドラ様ってリサさんのこと好きだよね!」
「なんていうんだろう?友達以上恋人未満的なやつ?」
「もどかしい〜!けど……体の関係だけ、とかになったらなんかやだなって……」
「リサさんには幸せになってもらいたい……」
「いくら神であろうとも!リサさんは渡さない!」
「あれ、そっち?!」
***
仕事がひと段落して体を伸ばす。時間を見れば立香から「終わったら食堂来てくださいね!」と言われてから2時間は経っていた。
終わっては無さそうだが今食堂覗いたら帰れなさそうだな……と悩む。
「……まだ終わらんのか」
「ッ!……吃驚した……どうしたのインドラ」
「どうしたもあるか。酌をさせようと思えばまだ仕事だと宣うではないか!」
「しょうがないでしょ、仕事なんだから」
椅子にドカッ、と座り長い足をデスクに引っ掛けるインドラ。行儀悪いですよ、と思いながらもここにはインドラと私しかいないからこうしているのだろうけれど。
隣に出来た橋のような足に上半身を凭れかけさせる。インドラは自分で足を置いたにもかかわらず目が点になっていたが。
「……一区切りついたし、行こうかな」
「お、おお……」
「何?呼んできたんじゃないの?」
「いや……その、なんだ……胸が当たってるぞ」
「……はァ〜?!気にするなよ!そんなの気にしてたら動けないって!……じゃあ離れ」
「離れずとも良い、うん、そうだ」
妙なところで初心になるインドラ。これは対私にしか出ないようで時たまやりずらくなる。
今だって足に体をもたれ掛けさせていただけなのに足に当たる胸が気になる、なんてほざく。
なんなんだこいつ!
───────
※出られない部屋(くっつく前)
「こういうのに巻き込まないでいただきたい」
「俺は知らんぞ」
「大体ヴリトラとか関わってんじゃないの?」
「俺は知らんと言っているだろうが!」
「うるさ……」
「おい」
謎の部屋に閉じ込められてから暫く経った頃。素直にこの命令に従うしかないのか、とインドラの手元にある紙を睨みつけた。
噂では聞いていた〜をしないと出れない部屋。その被害者になるなんて。
紙には『キスをしないと出れない部屋(なお口に限る)』と懇切丁寧に書かれていて下らない……と心から出かけた。言葉が。
「私には仕事があります」
「お、おお……」
「さっさとこの部屋から出たい訳なんですよ」
「出るにはキスをせねばなぁ……?」
「屈んで。届かないから」
「…………………………本気なのか?」
「早く」
何故か躊躇い始めたインドラにイライラしてくる。
慣れてるのはそっちだろうがよ!と手を伸ばしてインドラの襟元を引き寄せる。
そのまま口に触れるだけのキスをすればどこかからカチャン、と音がした。
「お、扉でてきた」
先程まで何も無かった壁に突如現れる扉。
近づけば自動で開く、その先はいつもの自室へと繋がっているようだった。
「……?インドラ、帰るよ」
「…………その、……なんだ…………少し待て……」
「なんでだよ!考え事するならここから出てからにして。ほら」
無理矢理インドラの手を引っ張るとなんだか静電気が凄い。ふい、とインドラの顔を見れば耳が赤く染っていて、私も固まった。
「な、んで……照れてんの……」
「うるせえ!……見んな、クソ……!」
───────
潰れた、リサが。
「藤丸〜立香〜可愛いねえ〜」
「いやっ、あの?!リサさん?!」
「もみくちゃです!」
藤丸と立香を両腕で抱き抱え、よしよしと撫でる様を横目で見る。
2人はそうは言いつつも、嬉しいのか満更でも無い顔をしている。
「2人が健康であれば嬉しいよ」
「リサさん……」
すり、とリサが2人の頬を撫でる。手に持った杯に力が入りピシ、と微かな音が鳴った。
「わきゃあ!」
「ちょ!ちょ!リサさんストップ!」
「インドラ様〜、いいんですか?」
「……」
「ただいま葛藤しておられます」
リサが無遠慮に立香にキスをする。頬ではあるが。
続けて藤丸にもしようとするからか、藤丸は必死の抵抗。しなかったら殺していたやもしれぬ。ハハハ。
「本当は大人が頑張るところなのにね」
「リサさん……」
「こんなに可愛い子を戦わせてね」
「だーッ!ダメだ!立香!酔っ払ってるリサさんの所にいるとダメになる!行くよ!」
藤丸が立ち上がり立香を引っ張り出す。ふん、やるではないか。
2人が不在となってしまったリサはこちらに顔を向け、笑ったかと思えば。
「ヴァジュラ〜!」
「………………」
何故!俺に来ない!
ヴァジュラは遠慮しているもののリサが好きだ。だからか逃げる素振りはみせない。誰が実体を持たせてやったと思っている……!
「リサ様ってお酒弱いの?」
「弱くはないよ〜?でもこれ、神酒でしょ〜?無理無理〜」
「あぁ、これは日本の神酒でしたね。わっ」
「わはは〜リサ様眠たいの?」
ヴァジュラを抱き抱えるようにして頭を下げたリサは静かになってしまった。
ヴァジュラ、とひと声掛ければリサの所から居なくなる。
「リサ」
「……ちょっと、がちでねたい」
「起き上がれんのか」
「うーん…………」
「…………仕方ねえな」
リサを抱き上げて片腕に収める、そのままリサの自室へと向かった。途中目が合った藤丸にはヴァジュラが説明しているだろう。
「……インドラ、ごめんね」
「何を謝る」
「……迷惑、かけて」
「…………」
すり、と額を俺の肩に当ててぽそり、と呟くリサ。
クソッ……可愛すぎんだろが!そこいらに居る女であれば喰っていた。が、相手はリサだ。
いや、何、リサであれば食指がなどと言う問題では無い。むしろ逆だ。だからこそ、離れていかぬよう慎重にせねばなるまい。
リサの自室に着いてベッドへと腰掛ける。そのままリサの背中を叩いて「寝るなら寝ろ、俺は忙しいんだ」と言う方便を使って寝かしつけようとした。
「インドラ」
「な、ん」
ふに、と押し付けられるだけの接吻。
今何が起きた?と固まっていればくすくすと笑うリサが目に入った。
「…………お前なァ!」
「ギャー!」
「犯されたいのか?!あぁ、クソッ!」
リサの手を覆い隠しベッドに縫い付ける。そのまま仕返しと言わんばかりにキスをすれば濃い酒の味。ふん、慣れてなければ悪酔いするわな。
そのまま少し開かれた制服のファスナーを下ろし、シャツ越しに肌に触れれば普段よりも格段に熱くなった体温を感じた。
「酔っ払いに手出すの、最悪」
「ふん、知ったことか」
───────
寝苦しい。重たい。
ふ、と意識を浮上させると目の前には灰がかった色彩。そして私の身体に伸し掛る腕。
インドラだ。
(重い……)
えいや、と腕を退けるもまた戻ってくる腕。
なんならそのまま引き寄せられ苦しさが悪化した。
(サーヴァントは睡眠を必要としないだろうが……ッ!……重い……!)
はふ、と少し身体を動かして上へと移動する。
顔が開けた場所に出て断然こちらの方が快適だ。……ただ、目の前にはインドラの顔。ちょっと、困る。
のでインドラに背を向けて寝るか、とモゾモゾ動いて定位置を探した。
「…………どうした」
「苦しくて」
「……ふん、気にするでない……」
耳元で少し掠れ気味のインドラの声。
んん、ゾワゾワするな……と身をキュッと固めてバレないように軽く息を吐いた。
先程までは気づかなかったが、インドラはまた寝に入ったようで寝息が聞こえる。
規則正しい呼吸音、インドラの手首に触れれば脈のような動きも感じとれる。
……背を向けていたが、インドラの身体の方に顔を向けて首より少し下に耳を当てる。とくん、と心臓が動く音が聞こえる。生きている。
***
起きた。目を開く、また灰がかった色彩が目の前。
というか今更だが隣に人がいるのに半裸で寝るなよ。
んんん、と起きたくない気持ちでインドラの方に顔を丸め込めば頭上から耐える様な笑い声が聞こえてきた。
「……インドラ、起きてたなら起こしてよ」
「その、なんだ。……随分よく寝ていた様だったからな」
顔を見上げれば楽しそうな顔をしたインドラと目が合う。ジト、とした目で見ても彼にはノーダメージなのだろう。
手を伸ばして目にかかっている前髪を取り払うと冷ややかな印象とは裏腹にしっかりとした眉毛が出てくる。
「……やっぱインドラの顔好きだなぁ」
「……なッ!お、おい!……そ、それは、本当なのか?」
「え、なに。カッコイイ顔じゃないの?」
「当たり前だろう。俺なのだからな………………」
そう言ったあと顔を手で覆って動かなくなってしまった。なんだ、こいつ。
そんなインドラを無視して私は腕の中から抜け出したのであった。