「おはようございます、梨沙」
「どうして」
会わないようにと早めに家を出たのに朝の挨拶をしてきたのはアルジュナだった。
「今日はカルナとアシュヴァッターマンは朝練で居ませんので私が」
「別にアルジュナも居なくて良いよ……」
「牽制も兼ねていますから」
「何への……」
へぇ……と気の抜けたため息を吐くが素知らぬ顔のアルジュナ。カルデアにいた時はもうちょっと何か抱えていたけど吹っ切れてるのか?まぁそれも初期の頃だけだったけど……ずっとそばにいてくれたけど……。
「そうそう、今世でもアシュヴァッターマンとは?」
「いきなり言葉を失わせるようなこと言わないで」
「失礼、気になりましたので」
「アルジュナ……君も随分現代に染みたね」
「おかげさまで」
「ちなみに質問はノーコメントでお願いしますね」
「流されませんか」
学校に着く頃には周りに生徒が多く登校していた、その中にファントム先輩と由理ちゃんを見つけてふふデートしてるデート、とにっこり笑っていたらアルジュナに「気持ちの悪い顔をしていますよ」と言われ小突いた。割と、強めに。
「ではまた昼に」
「いや来なくて良い」
「……??」
「どうして?という顔をするな!私は凡人なの!知ってる?!君たち顔がいいから人気なんですよ?!」
「そうですか、では昼に」
「聞いてくれます?!」
話を聞かずにアルジュナは2年のフロアへと消えていった。まぁインドたちも人気ではあるが英霊だった人たちは総じて人気なのだ、魔性か?
「おはよう由理ちゃん」
「おはよう、今日は誰と?」
「アルジュナ」
「お疲れ様」
「恒例行事よ」
少し遅れてやってきた由理ちゃんにため息吐く。苦笑している由理ちゃんはファントム先輩ととても、とても良い仲らしく見ていて微笑ましい。でもなんだかんだ恥ずかしがるからもっと見たいのに、という気持ちが芽生えている。
「HR始まる前にトイレいこー」
「いってらっしゃいー」
トイレから出てあふぁ、と間抜けなあくびをしていたら笑われた、めっちゃ笑われた。周りに誰が、とあくびを閉じたら前からアシュがやってきた。
「お前、あくびくらい手で隠せよ」
「あくびくらい見逃してよ」
「まぁ俺はいいけど。おはよう梨沙」
「お、おはよう、ございます」
「何急にぎこちなくなってるんだよ」
朝練を終えたらしいアシュは制汗剤か、シートの香りがした。すごいあの、男子高校生を感じる。つらい。
「梨沙」
「は、はい」
「俺らは純粋にお前が好きでやってんだ」
「……うん」
「本気で嫌なら言えよ」
「……照れ臭いの!なんか!」
わしゃわしゃと思い切り髪の毛を乱される。ちょ、と文句を言おうと顔を見上げるとアシュがひどく形容しがたいけど、照れたような、嬉しそうな顔を浮かべていた。
「梨沙」
「いいいいい……また!昼!ね!また!」
頭をぽん、と軽く撫でられた時にぶわりと熱が上がってきた感覚を覚えて逃げるように教室に逃げ帰ってきた。
「ひいいい」
「うわ、どうしたの?」
「己の耐性のなさに泣いてるところ」
「なにそれ」
「前の私はどうしてあの顔面の良さに耐えれていたのか」
「……慣れ、じゃないかなぁ」
「慣れ、かぁ……」
誰、とは言っていないのにわかった様子の由理ちゃん。それもそうだろう、前も今も私は落とされているのだから。
……まだ!今は!落とされてない!