※ゼロの執行人の後日談

サイバー捜査課では事後処理に追われていた。情報統制からセキュリティからなにからかにまでだ。
それとは別に降谷から頼まれている仕事もある、私を過労死させるつもりなのだろうか。

「お前、何徹?」
「三、これ終わったら寝ないと本当に仕事出来なくなる」
「俺は昨日仮眠したしな……仕事はまだまだあるから早めに寝ろよ」
「シャワーもしたい……」

隣の席の同僚とそんな会話を画面から目を離さずにする。側には吸わずに火がついたまま灰皿に置かれたタバコが燃え尽きている。


***


「終わった……」
「早く行ってこい、お前が抜けるとデカいんだからな」
「勘弁してよ……公安からも頼まれごとあるんだよ」
「うっわ本気か?死ぬぞ?」
「公安恨みそう、公安にいたのにねワハハ」
「早く寝ろ、頭が沸くぞ」

ギッ、と椅子が軋む。最近変えたばかりのはずだがずっと座っていればガタがくるか。
スマホとタバコ、を掴み部屋から出た。先にシャワー浴びてから寝よう、寝てからだと動きたくなくなる。

「網代」
「4時間後に来てください今無理マジで人権保ててない」

スマホのアラームをセットしながら歩いていると壁にもたれている人物から声を掛けられた、見なくてもわかる。グレーのスーツにながーい足を持て余す人物なんて。

「仕事なら同時進行してるから待って」
「ああ、急いでいない。にしても疲労が凄いぞ」
「事件が事件だったからサイバー課死んでるよ、私三徹だから今から仮眠」
「……あとで連絡する」
「そうして」

足を止めずに平行して歩く降谷に言う、降谷も仕事に追われているようで顔を少し見ればやつれていた、安室さんがそれでいいんでしょうか。


***


少し早めに設定したアラームが鳴る。薄目で画面を見れば少し前に降谷からの着信がある。今日は連絡する暇があるのか。
着替えたYシャツのまま寝たからシワシワだ、まぁみんなシワシワだからわからないさ。

「何?」
『起きたか』
「欲望を言えば一日寝たいくらいだね」
『終わってからだな、少し聴きたいことがあるんだがいいか』
「ん、どうぞー」
『網代、ずっと傍受していただろう』
「……んー?梨沙ちゃんわかんないなー」
『気持ち悪いことを言うな』
「おい」

確かに傍受していた、でも傍受していただけだ。何を言うでもなく手を出すでもなく後にもそれだけだ。

「作業用BGM的なそれだよ、気にしないで」
『お前が傍受していてもわからないのが怖いところだな』
「褒めてる?ありがと」
『ポジティブに捉えるな。……網代から見てボウヤはどう思った?』
「私?うーん、使えるよ」
『使える、か』
「まぁでもね、未成年ですから。あんまり危ないことに巻き込んじゃいけませんよー」
『相手から首を突っ込んできた時には無効だろ?』
「そんなこと言ったらほぼ無効じゃない」

カチッ、とタバコに火を付ける。通話をイヤホンマイクへと切り替えるために二回タップした。

『また僕は彼に頼むことがあると思う』
「うん」
『その時は君も、補助してほしい』
「もちろん、言われなくても。彼はいいお友達だからね」
『……何歳差だ?』
「今ここに降谷が居たら殴っていた」

うるせえこちとらアラサーと高校生じゃ一回りくらい違うだろう。現実が辛い。
体を伸ばしながら話を続ける、仕事の話はほぼ出なかった。降谷も気遣って連絡をくれただけなのだろう。

「さて、そろそろ仕事に戻りますよ」
『ああ、程々にな』
「ひと段落したらハムサンドでも食べに行くよ」
『ふっ、サービスさせてもらいますよ』

プツ、と通話を切る。体を伸ばせばバキ、と凄まじい音が聞こえた気がした。気のせいだ。

「はぁ、いくか」

足取りは 少し軽かった。



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