◆黒羽少年

「よう少年、ちょっと乗っていきなよ」
「あんた誘い方もうちょっとあるだろ!」

とある高校の前で出待ちしていた、学生ばかりのこのあたりに横付けしてある車なんてあまりない。はっきり言えば目立っている。
声をかけた快斗は少し声を荒げながら車に乗り込んできた。

「で?なんかあったわけ?」
「ないよ」
「はっ?」
「若者を捕まえて連れ回そうと思って」

そう言えば快斗が呆気に取られた顔をした後に大笑いをした。

「ハハッ!あんたって、そういうところあるよなぁ!」
「なんかそれコナンくんにも言われた気がするな」
「名探偵に?あー、じゃあ共通認識なんじゃね?」

はー、笑った。といいながらシートベルトを締める快斗を横目で見て車を動かす。どこに行きたい?と聞けば梨沙お姉さんのおすすめのとこ!とイタズラな目を向けられた、くっそーこの目に弱いんだよなぁ。

「珍しいチョイスじゃん」
「パソコンに向き合いすぎて自然が恋しくなった」

着いたのはテレビ局が近くにある埋立地の海浜公園、パソコンばかり見ているこの目には夕方の太陽でさえ眩しい。

「なんかやばい奴みたいになってるんだけど」
「え?そう?」
「サングラスにタバコで柄シャツはやべーだろ」
「黒羽くんのお友達ですーって職質されたら言うわ」
「警察が職質は流石にやべえって」

うわっ、冷え!と言いながら制服のズボンを捲り海に足を入れる快斗を見て笑む。

「梨沙さんも入ったらどーよ!」
「ちょっと塩気無理」
「弱!」
「楽しそうな快斗の笑顔でお腹いっぱい」
「ナッ…………それいう相手俺なの?!」
「ワハハ」
「その笑いしてる時逃げてる時だよな……」


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◆協力作業

「助けてくれ梨沙さん!」
「ええ〜!」

快斗に指定された店に入るとカウンターで項垂れていた快斗がこちらを見て両手を合わせて来た、なんだというのか。

「おや、貴方は」
「えっ?」
「俺の協力人!」
「存じ上げておりますよ、どうぞこちらに」

初老の男性はどうやら彼がキッド、ということも知っているのだろう。ふむ、簡単に考えるとキッドとしての活動に協力している男性……といったところだろう。
男性に案内され快斗が先に歩く、その後ろに続いて歩くが……これ協力させられるんじゃないだろうな。

「セキュリティが硬すぎてどうにもできねえんだけど」
「…………あのねえ、仮にも警察なんだけど?」
「わーってる!直接手出さなくていいから!さ!な!」
「分かった!話聞くだけ!」

快斗のこの顔に弱いのは自覚している。が弱いものは弱い、無理だろ!
ふふ、と後ろで男性が笑っているところを見ると気難しい関係ではないのだろう。

「まずこれ、次に侵入するところなんだけどさ」
「……また鈴木財閥ー?飽きないね」
「あのジイさんが見せびらかすから行かなきゃいけねーだろ!」
「そうねー、探し物かもしれないからねー」
「んで!全館全部屋に防犯システム入ってんだ。消灯後はセンサー付き、温感センサーもある」
「すっげ金かけたね」
「大元の防犯システムがここで初めて導入された奴だから実態がわかんねーんだ」
「ふうん……説明してる音声とか、映像ある?」
「あった……けか?ジイちゃん!」
「ここに」
「WOW」

ジイちゃん、と脳内で反芻する。でも顔つきは似てなさそうだし……と思っていると「私、寺井と申します」と言われて笑っちゃった。ジイさんなわけだ。
寺井さんが出してくれたパソコンから映像が流れる、嬉々として説明をしている園子ちゃんのおじいさんに苦笑が漏れる、あんまり言うとよくないぞー。

「な?ジイちゃん言ったろ?」
「ぼっちゃん……」
「イデッ!ちょっと梨沙さん!」
「なんか嵌められている気がした」

くしゃくしゃに丸めたレシートゴミを快斗のおでこへ指を弾き当てる。
説明の映像が終わった、寺井さんに「ありがとうございます」と伝え自分のパソコンを開く。

「ここ禁煙?」
「禁煙?」
「少しならいいですよ」
「だってよ!」
「ありがとうございます、さて快斗」

ん?と言いたげな快斗に火をまだつけてないタバコを向ける。

「警備室、行けるね?」
「……たりめーだろ!」
「よし、そしたら話は速いわ。待ってて」

パソコンに空のUSBを差す。タバコに火をつけて息を吸う。
ここからは私の仕事だ。


***


「ほらよ」
「うわっ、早!」

ぽいっ、と快斗にUSBを投げ渡す。急に投げたから少し手の上で踊らせていた。

「警備室の機械にこれ差せば五秒でシステムダウン、USBは自爆機能つけといたから抜かなくてよし。ああ、でもUSBを壊す程度の爆破だから安心して」
「……俺、あんたが恐ろしいよ」
「警備室まで行くのは快斗、あんただからね。差し込めればオッケ」
「最高。やっぱ梨沙さんこっちこない?だめ?」
「だめ。中森警部に協力しちゃおうかなー警備の強化とか頼もうかなー」
「バッ!わーった!わーったって!」

めちゃくちゃ焦る快斗を横目に笑う、こんなのがバレたら懲戒どころじゃないんですけどね、わかってます?なーんて思いながら協力してしまうことにため息が漏れた。


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◆やらかし ※キッド視点

やべえやべえ、やらかした。名探偵とここに閉じ込められてんのやべえって!警備とか落としちまったし、名探偵も俺も通信媒体持ってきてねえ!

「おい名探偵……」
「うるせえ!今考えてんだよ!」
「イッ……このまんまだと俺ら復旧まで待たなきゃいけねーぞー!」

発信器とかつけられてねえの?と名探偵に零せばハッとした顔でこちらを見てきた。

「な、なんだよ」
「キッド!お前梨沙さんと連絡取れるか?」
「梨沙さん?いや……携帯ねえし」
「……クソッ、梨沙さんが気づいてくれれば!」

と名探偵が握り拳を作った途端、扉のロックが解除された。
俺と名探偵は顔を見合わせて恐る恐る出た。……警戒しながら部屋の外に出たはいいけどぶっ倒れてる警備以外に人の姿もない。

「これは……」
「おいキッド、警備室行くぞ」
「エッ?!」
「こんなの簡単に出来るの、一人だろ」

走って名探偵と警備室に行く、その間すれ違う人はいない。なんだこれ、と思いながら警備室の前にたどり着いた。

「……開けるぞ」
「ああ」

ガチャ、と開ければ空の椅子が転がっていた。と思えば真ん中の椅子に誰かが……って

「ありがとう、梨沙さん」
「感謝してよね、公安の権力翳してここの人掃けさせたんだから」
「国家権力じゃねーか!」

タバコを咥えながら手元はずっと動いている、あの名探偵でさえちょっと引いてる目してんぞ!

「り、梨沙さん今何してるの?」
「んー、情報抜いてる。記念にね」
「それ犯罪じゃねえの?」
「んー?ちょっと僕よくわからないなぁ」
「それ俺のセリフ……」

ワハハと笑った梨沙さん見てやべー大人だ……と名探偵を見れば同じことを思っていたらしく目が合った。



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