※原作沿いで降谷寄り

「あれ、梨沙さんこんなところで会うの珍しいね」

コンビニの真前の喫煙所でタバコを吸っていると少年名探偵に声を掛けられた。
コナンくんを認識し、タバコを吸い殻入れへと捨てる。

「コナンくんこそ」
「……梨沙さんに言うのもあれだけど……ちょっと相談したいことがあるんだ」

おや珍しい、という表情を隠さずに出す。するとコナンくんは「ここじゃちょっと」と言うから近くに止めた自分の車へとコナンくんと向かった。

「何回見ても梨沙さんの車、ギャップあるよ」
「あんま乗ってあげてないんだけどね」
「……安室透さんって知ってる?」

安室透、なんか聞いたことあるような……と脳内を探し回る。

「なんか聞いた事あるような……外見は?」
「えーっと、金髪で少し褐色肌で青い目かな」
「うーん……そんな目立つ知り合い居たかな……」

と平然を装いながらめちゃくちゃ焦る。なぜピンポイントで私に聞くんだコナンくん。
安室透、そりゃ聞いた事のある名前だ。私の同期の降谷零の潜入の偽名なのだから。

「最近蘭の父さんに弟子入りしたみたいでよ」
「えっ、毛利さんが師匠なの」
「ハハ……」
「ごめん、続けて」
「ツッコミどころはすげーよな……んで、下のポアロでもバイトしてるんだよ」
「ふーん……久々にポアロ行ってみようかな、今日居る?安室さん?だっけ」
「わかんねえ、けど梨沙さんには1回見てもらいたいのはある」

じゃ行こっか、と車のエンジンを掛ける。ここからだったら数分だろう。

「コナンくんが怪しい、と思ったんでしょ?なら見る価値あるよね」
「……へーへー」
「あ、照れてる」
「照れてねーし!!」


***


「いらっしゃいませー!あ、コナンくん!」
「こんにちはー!」
「っと、テーブル席でよろしいですか?」
「はい」

ポアロに入って出迎えてくれたのは女性店員、もとい梓さん。私の顔をみてハッとなっていたから覚えてはくれていたみたいだ。
ちらりとカウンターの中に金髪が居ないかと探す、どうやら居ないみたいだ。

「ねーねー、安室さんはー?」
「安室さん今買い物に行ってるよ、そろそろ戻ってくるんじゃ無いかなぁ」
「あ、注文いいですか?」
「はい!」

買い物、ね。とコナンくんとアイコンタクトをする。飲み物を注文して梓さんを見送る。

「こういう観察慣れてないんだけど」
「梨沙さん裏方だもんね」
「年甲斐もなく緊張しちゃう、触る?」
「ばっ!バーロー!」
「ハハ」

「戻りました」

カラン、と扉の音が鳴る。帰還を告げるその声色は酷く耳馴染みが良い色で。

「おや、コナンくん来てたんだね」
「うん!」
「……そちらは……」

バチリ、と目が合う。正面から見ている私にしか分からないが確かに、瞳孔が伸縮した。

「初めまして、網代です」
「安室です、ポアロには……?」
「何回か。最近は来ていなかったんですけどね」
「そうなんですね、ごゆっくりしてくださいね」

流石降谷だ、顔にも声にも出ない。買い物した荷物を片付けにカウンターの中へと消えていく安室を見つめる。

「……どう?」
「あんな目立つイケメン、知り合いに居ないと思うな……」
「梨沙さん隠の者だもんね」
「どうせ隠キャですよ!安室さんは陽の者って感じだよね」
「ハハ……」
「否定しろよ」
「梨沙さんの知り合いじゃなかったら内部の人じゃないのかな……」
「でも私も顔合わせる部署少ないし……むしろ現場の方が分かるかもよ?」
「高木刑事とか?」
「そうそう、覚えてるかは別として」

先ほど梓さんが持って来てくれた紅茶を口に含む。降谷みたいな公安の中の公安の人間は顔を合わせている人物の方が少ない。多分コナンくんの欲しい言葉はくれないと思うなと考えた。


***


「あ、蘭姉ちゃん帰って来たみたい」
「奢ったげるから帰りな少年よ」
「ハハ、なんだよその言い方……」
「またねコナンくん」
「うん、またね梨沙さん」

カラン、とコナンくんが店を出る。
そういえば先ほど梓さんが「お疲れ様でしたー」と帰っていったので視界の中に見えるのは安室だけだ。
安室に目線をやる。またバチ、と目が合う。どうやら奥にマスターも居ないようだ。
はぁ、と軽いため息を吐いてジャケットの内側とある機械を取り出す。小型ジャミング装置だ、もし盗聴、盗撮されていたとしても見えないだろう。

「どうしてここに」
「小さな名探偵に誘われて」

机の上に置かれた機械を目視して安室が口を開いた、その声は安室ではなく降谷だったが。

「網代は、関わらなくて良い」
「……私だってもう同期を見殺しにしたくはない」
「……景は」
「降谷、景光は職務を全うした、そうでしょ」
「…………そうだ」
「私は知ろうと思えば知れる、だけど降谷の気持ちを尊重して踏み込んで無いよ」
「……」
「でもね、降谷。お互いが生き残るためにお互いが協力しても良いと思うよ。私は……現場は向いていないけど、裏方なら最強だよ」
「そうだな、僕も網代には頭が上がらないよ」

キュ、とグラスを拭く音がする。なんだか無性に目頭が熱くなる。それもそうだ、最後に降谷に会ったのは……何年前だったか。

「網代」
「ん」
「僕は今、公安と安室と……組織に居る」
「ちょ」
「お前の技術を信用して、信頼して言っているんだからな」
「嬉しくない!」
「だから公に連絡は取れない」
「……うん」
「……ポアロに、顔を出してくれないか」
「……はは、私が降谷を独り占めするとはね」
「それを言うなら僕が網代を独り占めしているんだが?」
「WOW」
「おい」

机の上の機械をオフにして仕舞う。そのまま流れで最後の紅茶を飲み込む。すっかりホットがアイスになってしまった。

「安室さん、お会計いいですか?」
「はい」
「……安室さんよくモテるでしょう?」
「え、そんなことは……あるかもしれません」
「はは、また来ますね」
「はい、お待ちしておりますね」

カランとベルを鳴らして扉を開ける。
私は気づかなかったが、扉が閉まっても安室は扉をじっと見つめていた。



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