喫煙者も肩身が狭くなった、世の風潮は喫煙者が悪なのだから。
そんなことを思いながら喫煙所で紫煙を吐く。
「お」
「……」
珍しい人物が目に入った。しかも1人らしい、思わず声を漏らせば向こうには聞こえないはずなのに眉を寄せられた。
「禁煙してるんじゃなかったのか?」
「3日で辞めたよ」
「意志弱いな……元気だったか」
「めずら、そういう降谷こそ元気?隈凄いよ」
「人のこと言えないと思うが?」
「イエーイ二徹目そろそろ死ぬ、年だし」
「一緒に仮眠するか」
「刺されそうで嫌だな」
喫煙所に顔を覗かせて来た彼、降谷はその身を喫煙所に滑り込ませて来た。非喫煙者なのに喫煙所にわざわざ入って来てくれるのに笑いが漏れる。
「そろそろとある喫茶店の紅茶が飲みたいな」
「一週間後位なら、お待ちしておりますよ」
「うふふ」
「気持ち悪い笑い方をするな」
「ここでそれ出されると笑っちゃうわ」
タバコを吸い殻入れにポイ、と投げ入れる。中には水が溜まっているためジュッ、と火が消えた音がした。
「網代」
「んー?」
喫煙所を出て他愛もない話をしているとふと呼びかけられる。スマホを眺めながら(これも仕事だ)返事をする。生返事じゃないよ、聞いてるよ。
「いつも、悪いな」
「……どうした?熱でもある?」
「お前な……」
「むしろ私に見られてるような状態でごめんね、常には見てないけどちゃんと見返してるから」
安室さん、として生活しているポアロあたりの監視カメラはいつでも私は見れる状態だ。これは公に出来ない仕事だ、一日の終わりにその日の監視カメラを早送りで見て怪しい人が居たら降谷に報告している。
「いや、助かっている。見られてやましいことはないからな」
「ああそう……」
どや、と言わんばかりの顔をしている降谷を横目で見て苦笑する。
普通は自分の動きを見られていて気持ちいいものではないだろうに、まぁ頼んだ本人だけどさ。
「今度みんなで飯でも行きたいね」
「ああ、そうだな。だが班長は既婚だしな……」
「班長の家の近くとかで良いのあればいいね、ここって言ってくれたら調べるよ」
「話しておく、無理はするなよ」
「それお互い様ね」
腕同士を軽くトン、とぶつけて行動を別にする。降谷はあちらのフロア、私はこちらのフロアだからだ。
もう何年もみんなで飯なんて行ってないなぁ、と思いながら出た言葉は割と本気に捉えられたらしく、あの降谷がちょっと乗り気だったのが意外だった。
「よし、頑張ろ」
今の捜査も大詰め、軽く気合を入れて小走りで捜査室へと向かった。