カラン、と扉を開けば音が鳴る。

「いらっしゃいませ、いつもの席でよろしいでしょうか?」
「はい」

顔色を変えずに案内をする降谷、もとい安室はすごいなと見る。
おおっと……カウンターには新一じゃなかった、コナンくんもいるじゃないか。

「あれ!梨沙さん久しぶりだね!」
「ちょっとお仕事忙しくてねー、これからもお仕事するよ……」
「うわぁ……」
「そのかわいそうな目やめてくれるかなコナンくん」

お店の隅のテーブル席、それが私のいつもの席だ。たまに時間が空いた時には安室の様子見がてらポアロに来るようにしている。

「ご注文は?」
「あー、ハムサンドとレモンティーで」
「かしこまりました」

カバンからパソコンを取り出して仕事をし始める。実は今日は休日なのだが萩原から頼まれた仕事がある。

「梨沙さん」
「んー、どうしたコナンくん」
「隈すごいよ?大丈夫?」

よいしょ、と対面に座ったコナンくんに言われてまじか。と目の下を押さえる。一応隠して来たつもりだがそんなのは名探偵にとっては関係ないか。

「友達がさー、休みでも仕事振るからついしちゃうんだよね」
「アハハ、でも嫌な顔してないね」
「まぁ、大切な友達だからね」
「ふーん」
「お待たせしました、ハムサンドとレモンティーでございます」

なにか言いたげなコナンくんの顔を見た瞬間、安室が品物を届けに来た。これタイミング見てただろうな。

「コナンくん食べる?」
「ううん、いい!それに僕が食べたら安室さんが怒りそうだから」
「え、なんで」
「だって梨沙さんこれ一食目だよね?今お昼すぎだけどメニュー見てたときに重いものじゃないの探してたよね?」
「……あんまり目ざといのやめた方がいいよコナンくん」
「えへへ」
「褒めてないよ」

いやー、これ私サイバー局でよかったわ。としみじみ。こんなコナンくんの相手してたらボロ出しまくるわ。

「あ、僕ちょっと隣行ってくるね!」
「いってらっしゃいコナンくん」

カラン、とベルを鳴らして外に出たコナンくん。店内を見渡せば平日昼下がりだからか客は私だけで店員も安室だけだった、梓さんは確か休みだったかな……やっば、シフト把握してるのキモいな。

「今日は誰ので?」
「おはぎちゃんです」
「一声かけておきますか?」
「いんや、好きでやってるから大丈夫でーす」

コナンくんもいなくなったし、とパソコンに指を滑らせる。こんなに早くタイピングしていたらコナンくんが興味津々で見てくること間違いないだろう。
しばらく無音、とまでは行かないが私のタイピング音と安室が本をめくる音、そして小さめのボリュームでジャズが流れている空間になった。

「んんー」

頼まれていた仕事が終わった、腕をぐーと伸ばせば関節から良くない音がした。折れたか?折れてないや。

「はい」
「ん?」
「サービスのホットココアです、今夜は良く寝てくださいね」

珍しいこともあるもんだ、目をぱちぱちとしているとふっ、と安室から笑い声が漏れた。

「ありがとうございます、今夜は良く眠れそうです」

ココアを飲んでいるとコナンくんが戻ってきた声がした。「あれ?ココアって珍しいね!」と言われた。「愛の味がするよ」と答えれば安室が咽せていた。

「すみません、気管に」
「気をつけてね安室さん」

にんまり、と笑えば少し眉を顰めた安室さんと目が合った。してやったり。



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