※過保護気味
泣いた、外に居たときにとある事件に巻き込まれて腕を負傷した。しかも右腕。私は右利きだ、この意味がわかるか。
「いらっしゃいま……」
仕事も医者から良いよと出るまで軽い仕事しか回されなくなったおかげでしばらく在宅だ。いえーい!の気持ちでポアロに顔を覗かせれば出迎えた安室に絶句された。おいそれでいいのか。あ、包帯の腕丸出しだった。
「どうしたの安室さん」
「おやコナンくん元気?」
「うわ……どうしたのその腕」
「めちゃくちゃざっくりやられたんだよね……見る?」
絶句している安室を放置して店内のカウンターへ座る。左隣にコナンくんがひょい、と座って来たときに見る?と言えば引いたような顔をしていた。
「今日梓さん居ないんだね?」
「うん、安室さんとー……そこに沖矢さんが本読んでるよ」
「……オーナーは?」
「今出てますよ」
オーナーの所在を聞いたら復活した安室が返答をくれた。メニューを出してくれたがレモンティーと即答した。
「ホォー、珍しいこともあるんですね」
「うっわ、気配消して近づかないでください」
いつの間にか沖矢さんが右隣に腰掛けて来て肩が跳ねた。
「見ても?」
「えっ、趣味悪いですね沖矢さん」
「興味です」
手首から肘にかけての刃物傷、包帯を外せば傷が塞がったとはいえあんまり見たくはない状態のがあった。
「ひええええ、撫でないでくださいよ」
「ふむ、少し隆起しているな」
「跡残らねーよな?」
「とは言われたけどね。まぁ残っても別に……」
「ダメですよ、女性が跡を残しちゃ。……筋は大丈夫ですか?」
「うん、今ちょっと動きにくいけどしばらくすれば大丈夫だって。多分皮膚が突っ張ってるからだと思うけど」
沖矢さんに軽く撫でられた後に丁寧に巻かれる包帯をぼんやりと見ていたらほぼ素になっているコナンくんにレモンティーを置きながら少し声色が降谷になっている安室に声をかけられていた。
「大丈夫、仕事はするって」
「いや、そうでは……」
「ダメだよ安室さん、梨沙さんは分かんないよ」
「なんかコナンくんに言われるのむかつくな……っていうか沖矢さん撫でないでください」
「すみません、つい」
「つい、で触られるの何なんですか」
安室を見れば素人目にはわからない程度に水を沖矢さんに飛ばしてたし、沖矢さんはそれを避けるしコナンくんと私はそれを見て苦笑していた。まじで相性悪いな。
***
しばらく当たり障りのない談笑をしていたが私の携帯が鳴り静かになる。着信元を見れば……うーん、めんどくさそうだな。ちょっとごめん、の意を込めて手を上げる。
『今暇だろ』
「暇じゃないけど」
『出たってことは暇だろ?飲み行こうぜ、萩も居る』
「えー彼氏に聞こうかなー」
『は?』
「は?」
電話の主は松田、こいつ私が療養中なことわかってて電話したみたいだし萩原も萩原だろーが!
冗談で彼氏にーと言えば松田と安室の声が被る。
「昴さーん、今日夜飲みに行ってもいいですかー?」
「は??」
「ホォー、僕という人が居るのに男性と飲むんですか?」
瞬時にノリがわかったと思われる沖矢さんが少し耳元から話した携帯に聞こえる程度の声量で言う。
向こう側の松田と多分萩原が合流したのだろう、すごい煩くなってる。
「それとも僕と二人で飲みますか?」
「グッ」
耳に寄せられた沖矢さんのいい声に胸を押さえる、変声機使ってても貴方の声はずるいんです!やめてください!揶揄うな!笑ってるじゃねえか!
「って彼氏がー」
『殺されたくなければ正直に言え』
「ごめんなさい嘘です彼氏なんて居ません飲み行きます……」
松田のめっちゃドスの聞いた低い声、過去探っても聞いたことのない声が携帯から聞こえて来て軽く、泣いた。
『網代ちゃんさー言っていい冗談と良くない冗談あるって知ってる?お説教だからね』
「はい……」
『時間と場所送る』
ブツッ、と切られた携帯の画面を見る。そんなに……怒らなくても……よくない……?何がそんなにいけなかったの……と顔をあげれば何か言いたげなコナンくんと目が合った。
「梨沙さん……今のは網代さんも悪いし沖矢さんも悪いよ」
「ふむ、僕としては本当に二人で飲みに行っても良いんですよ?」
「この男の発言は聞かなかったことにしてくださいね、網代さん」
「案外君の周りは過保護が多いんですね?」
「今になって知りました……」
安室が沖矢さんの声を遮るかのようにメニュー表を私と沖矢さんの間にかなり勢いをつけて差し込む。それ人が負傷する速度だぞ。
「ああ、それと。僕もお説教したいくらいですね」
「ごめんなさい少し寒気がするので帰りますね」
「それは大変だ、これでも羽織ってください」
「沖矢さんやめてこれ以上すると網代さんが圧で死んじゃう!」
内心ケタケタ笑ってそうな沖矢さんとブチギレそうな安室さんとフォローに回ってくれているコナンくんを横目に白目をむきそうな私の携帯にはブブ、と連絡が入ったのだった。