※付き合ってる
二徹明けの爆睡は、本気で起きない。たとえ誰かが家に入っていたとしても。
と不穏な導入をしたが全然不穏ではない、私のマンションは公安警察公認のセキュリティ万全、そして私も弄ってある部屋なわけでキーを持っている人や顔データが登録されている人しか入れない。
こんなことをなぜ言うのかと言うとふいに物音で目が覚めたからだ、時間を見れば寝ついてから10時間は経過している。
夜中3時過ぎに帰って来てばたーん、と倒れるように寝たから……今は昼過ぎだろう。耳を凝らせば水音、コンロをつける音、何かを切る音……これは。
「景光!」
「おわっ、びっくりしたぁ」
「びっくりしたの私だよ!連絡くれよ!」
「したけど返事ないから……来ちゃった」
「ギャッ、可愛い……ってほんとだ。爆睡してて気づかなかった」
部屋から飛び出れば肩を揺らした景光が居た、潜入捜査していた景光は半年ほど連絡が途絶えていたし、まさか景光だとは思わなかった。
「待って私風呂入らずに寝た、入ってくる!」
「ん、ご飯作って待ってるから」
「……嫁……」
シャワーをざっと浴びる、烏の行水と良く言われるが十分は掛からないだけだ。
浴びている間に景光の言葉を反芻する、えっあんなの嫁じゃん……?
「景光……」
「髪濡れたままじゃん、乾かさなかったの?」
「景光が居なくなったらヤダなって……」
「可愛いこと言うね、ほら乾かすからおいで」
「ママ光……」
「ママじゃないから」
火を消してソファーに手招きをされた。それに従う形で行けば景光の足の間に収められた、し、しぬ。
「髪傷んでるな、寝てなかったろ」
「うん……徹夜して寝ての繰り返し」
「ご飯は?食べてるか?」
「とりあえずスープとか胃に入れてるくらい……」
「うーん、誰かが世話してないと死にそうだなー」
髪を指で梳かれる、自分の手と違って少し骨太な手は何だか気持ち良くて沢山寝たばかりだと言うのに再び目蓋が重くなっていく。
「眠いか?」
「んー……でも景光がご飯作ってくれたから食べ……る」
声がした方に顔を向ければすぐ側に景光の顔、気にしてないのか「ん?」といった表情を見せる景光の顔に手を伸ばす。
「……無い」
「剃ったからな」
「結構髭の景光も好き」
つー、と指先で顎を撫でればなんだか物足りなさを感じた。目線を上にずらして景光を見ればすんごくデカいため息を吐かれた。
「梨沙さぁ」
「え、なに」
「いいや、なんでもない。明日も休みだろ?」
「うん、ってなんで知って」
「零から。んでオレも明日も休みなんだ」
「……へ、へえー。ご、ご飯食べよー」
何だか嫌な予感がして立ち上がろうとするとにんまりとした景光に腕を掴まれた。
「夜、一緒に過ごしたい訳だけど……用事ないだろ?」
「……うえーん!!!!」
「あ、泣いちゃった」
「もうどうにでもしろ!煮るなり焼くなり!好きにしろ!」
「言ったな?好きにするぞ、まずは……ご飯を食べような」
掴まれた腕を景光が立ち上がる際に手繋ぎへと変えられた。
私はこの男の顔面にすこぶる弱いので結局強く出れないのだ、くそ、データ上なら最強なのに、くそ。
***
「景光ハニトラとか強そう」
「……あー」
もぐもぐ、と景光が作ってくれた朝定食……もとい昼定食を二人で食べながらそう呟くと目線を逸らされた。え、何。
「強い、のか分からないが引っかからないな」
「えー、すごい」
「梨沙の方がいいな、って思うからかな」
ガンッ、と肘を椅子にぶつけた。景光を恨めしい目で見れば楽しそうな、嬉しそうな景光が居た。くそやろう。