「梨沙ちゃん」
「……葉流馬くん、久しぶり!」
「久しぶり、梨沙ちゃんも小手指だったね」
「相変わらず野球に関わってるけどね……」

寄ってく?と声かけてくれた葉流馬くんにうーん、と悩む。どうせ葉流ちゃんは毎日学校で会ってるしなぁ。

「今日はカレーだよ」
「お邪魔します」
「梨沙ちゃんも葉流火並みに食欲に素直だよなぁ」
「清峰家のご飯、美味しい」
「連絡入れとこうか?」
「ううん、連絡する。まだ帰ってきてないと思うし」

携帯を取り出して親に『葉流ちゃんの家でご飯食べる』とLINEすればスタンプが返ってくる、今日はちょっと遅くなると言っていたし丁度良いでしょ。

「お荷物持ちましょうか、お兄さん!」
「やめろよ、舎弟みたいだよ」
「死ぬ、こんな顔の良いアニキ怖いよ」

私も行く、と連絡してくれていた見たいで家にお邪魔すると葉流ちゃんママが出迎えてくれた、お久しぶり〜!
葉流ちゃんパパはまだお仕事らしく、帰宅していなかった。

「梨沙ちゃんも見ないうちに大きくなったわねー!」
「いやいや、葉流火に比べるとどんくりでして」
「梨沙はどんくりじゃない」
「話進まないから黙ってて」
「男兄弟しかいないから女の子居ると気持ちが違うわー、たまに遊びにおいでね?」
「えー、遊びきちゃおうかなー」
「葉流火の勉強見るついでとかでいいから」
「一番重荷の任務だよ、葉流馬くん……」

こんくらい?と葉流火がご飯を盛り付けてくれるが葉流火の胃の量のご飯で食い切れるわけないだろ!と軽くパンチした。
半分に減らすと「梨沙、体調悪いのか」と言われて男女の胃の差、ましてや葉流火と私の差を感じ取れよとジト目をしておいた。


***


「ごちそうさまでした!美味しかったです!ご飯頂いたのでお皿洗います」
「あら、良いのに!」
「その間に葉流火か葉流馬くんお風呂に入れちゃった方がいいかと」
「そうね、あの子たちすぐ寝るから……。葉流馬、お風呂入っちゃいなさい」
「ん、ごめんありがとうね梨沙ちゃん」
「いいえー!ご飯美味しかったし、葉流馬くんにも葉流ちゃんママにも久々に会えたしね」
「梨沙ちゃん、お嫁に来ない?葉流火もらってやって」
「葉流火は女子アナ捕まえると思ってるんで」
「?なんで」
「プロ野球選手の結婚ルート」
「えっ、嫌だ」
「えっ、なんでよ。美人だよ」
「……」
「返事がない、拗ねてるな」

お皿を洗っているため葉流火の表情が見えない、が黙っていると言うことはあの不満な顔をしてるに違いない。
隣にいる葉流ちゃんママがふふ、と笑ってるので多分正解。

「そろそろお暇しようかな」
「え、泊まって行ったら良いのに」
「明日体操着必要だもん」
「貸す」
「でかいからやだ」
「……」
「また不満顔」

む、と言いたげな葉流火の頬をぽにぽに、と触れる。なんだかわからないけれど葉流火はこれをするとちょっと落ち着く。

「今度はお泊まりとかしてくれて良いからね」
「はーい!葉流馬くんもまたね、ビデオ渡すのほどほどにね」
「おい葉流火ァ!梨沙ちゃんに見せてんのか!」
「み、見せてない!」
「私が勝手に見てるだけなんで葉流ちゃん怒らないであげて……」

葉流火の胸ぐらを掴むお風呂上がりたてホカホカ葉流馬くん、本当にこの兄弟の力関係は顕著だ。
葉流ちゃんパパにもよろしくしたってくださいー!と葉流ちゃんママに伝える。

「送る」
「良いのに」
「ついでに走る」
「そっか」
「気をつけてね」
「圭くんにもよろしくね」
「はーい!また!」

葉流火の家から私の家まではそう離れていない。お腹も満たされて丁度良い眠気が来てあくびをする。

「眠いの」
「眠くなってきた、血糖値上がってるかも」
「やっぱり泊まっていけば良かったのに」
「そうは言うけどね葉流ちゃん、高校生の男女がお泊まりは外面がちょっと悪いよ」
「なんで」
「うーん、説明が難しい」

キュ、と葉流ちゃんの手に包まれる、手。小学校の頃は私の方が大きかった手もとうに越され包まれてしまうくらいに差が出来た。

「普通お泊まりは同性の友人か、恋人とかだからね」
「別に、変なことしない。から」
「葉流ちゃんがしないのはわかってるよ」
「ん」
「……でも葉流ちゃん、恋人出来たら教えてね」
「なんで」
「あんまりくっつきすぎるのも良くないから」
「梨沙が居るから良い」
「話が進まねえ!」

隣の葉流ちゃんを見ると緩く笑んでいて私、葉流ちゃんのこの笑みに弱いんだよなぁ。と頭を抱えた。
そんな話をしながら歩いているともう見慣れた道、まっすぐ行けばすぐ家だ。

「葉流ちゃんありがとうね」
「ん」
「気をつけてね、走ったあとはちゃんとマッサージするんだよ」
「する」
「早く寝るんだよ」
「うん」
「また明日ね」
「うん、また明日」

名残惜しそうに離れた指先、気にしないふりをして葉流ちゃんを見送った。
……くそう、葉流ちゃんに彼女が出来たらショックでかいかも、と思ったり、しちゃったり。



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