※智将(ちょっと重い)

あれから何ごとも無く練習の日々、流石智将様。今までの練習はお遊びでした、と言わんばかりの練習量。
ま、慣れてるメンツも多いが、先輩方はそうは行かない。……けど土屋先輩は圭様と崇めてるし、まぁ良いんだろう。
もう、私も慣れた。クラスでは千早と藤堂が構ってくれるし……私は赤子か何かか?

「じゃ、また明日」
「おう、気をつけて帰れよ」
「また明日、ですね」
「……一緒に帰れば良いだろ?」

圭の言葉に 時間が止まった。と思った。
絶対千早と藤堂と私の脳内は、お前が言うか?!の一色だったと思う。

「ちょっと先生に聞くことあるから」
「そうか」
「葉流火もヤマも圭もまた明日」
「ん、また明日」
「えっと……また明日ね!網代さん」

ひらり、と後ろ姿で手を振る圭。と今の、何?と言わんばかりの目をこちらに向けつつ歩く藤堂といいから、と藤堂を押す千早に冷や汗が収まらない。今の、何???

『今の何?』

藤堂から入ったラインに『私が知りてえよ!』と返事しておいた。
先生に聞くことがある、なんて嘘だ。本当は帰るだけ、だけど片道5分の家は近すぎる。
グラウンドのベンチに座り、大きなため息を吐く。
なんだよ、お前から言っておいて、決意をぐちゃぐちゃにするような行動、なんなんだよ、本当に。
ワイヤレスイヤホンを片耳だけ嵌めて鞄からグローブを取り出す、こう言う時は壁打ちだ。良かった下に短パン履いてて。


***


汗が垂れる、みんなが解散した時間はまだ日が落ちてなかったのにもう半分は落ちて暗くなっていた。
帰ろう、そして風呂に入ってご飯食べて、ストレッチして寝よう。そうしたら明日もまた練習だ。

「お前は嫌なことがあるとすぐ壁打ちするな」
「……圭、忘れ物でもしたの」
「梨沙が帰って来なかったからな、話がしたい」
「練習のこと?明日でもいい?」

鞄からタオルを出そうと探っていると傍からタオルが差し出される、と同時に聞き覚えのある声がした。
お礼はありがと、と言いタオルを借りた。圭ママに託しておけばいいし。
圭は着替えてトレーニングに行くのかランニングウェアに身を包んでいた。

「梨沙、明日練習試合を組みに行くからついてきてくれ」
「なんで私?」
「一番俺のこと分かってるだろ」
「……分かってたらこうはなってないと思うんだけど」

じと、と圭を見る。ばつが悪そうな顔をして私から目を逸らす圭を見て、無性に腹が立った。

「あんたの言葉を守って私は練習以外は最低限にしてる、葉流火がしょぼくれても気にしないようにしてる。何が文句あるの?無いでしょ」
「悪かった」
「……は?」
「あの時の俺は、色々思い詰めててな。半分梨沙に当たった」
「そう」
「ありきたりだけどな、離れて気づくものってあるだろ」

圭が色々考えてたのは分かる、その時期スカウトやらで色々あったからだ。葉流火も。
でも圭も葉流火もあまり弱音をこぼさない、当たられるくらいどうでもいいのだ。
圭を見れば少し悲しそうな、顔をしていた。

「……圭の家、行こうか」
「……それは、ちょっと」
「は?この流れで?」
「いや、ちょっと、梨沙が俺の部屋に居るのがちょっと」
「何、汗くさいなら風呂入ってから行くから」
「梨沙はくさくない、それは断言できる」
「なんなの?!調子狂う!」

結局そのまま圭の家に行くことにした、圭ママにはお風呂入ってく?と言われたけどちょっと顔出しただけだから!と遠慮した。
というか圭が、なんか変。自分の家なのに変にソワソワしている。

「んで?圭は前言撤回するわけ?」
「……」
「なんでそこで悩んでんの……?別に私はこのままでもいいよ、藤堂と千早とヤマいるし」
「それがダメなんだ」
「はぁ?」
「中学の時は俺と葉流火くらいだったろ、周りに居た男子が。それが今、千早と藤堂と山田が居る」
「そりゃあね」
「梨沙を奪われたくない」

ちょっと鳥肌、多分私は本を見るプーさんのような顔をして圭を見ていただろう。

「俺と葉流火が、一区切りつくまで梨沙は誰のものにもなってほしくない、ずっと俺たちを見ていて欲しい」
「重」
「千早と藤堂、山田と付き合うのもダメだ、仲良くするのはしょうがねえから良い」
「……その、言い方、圭が、私のこと好きみたいじゃん」
「好きだよ、だからだよ。近すぎるとずっと側に置きたくなる」
「重い重い!」
「俺だって思春期なんだ、そういうことに現を抜かさないようにしているけどな。だから部屋を渋ったんだ」

多分私は顔が赤いだろう、告白などとは無縁だったのだ。仕方ない。

「現に俺の部屋には梨沙との写真が飾られてる」
「うわ、ほんとだ……気づかなかった」
「お前が他クラスで何をしているのかも気になる、千早に聞き出そうとしてもな、あいつはお前の味方だから……ムカつくな」
「チームメイトにキレるな!千早ありがとう」
「千早に感謝を述べるな」
「めんどくさいよ!何!?」
「今日一日あった事を毎晩報告してくれ」
「激重彼氏かよ!やだよ!」
「そっけなくされるのはな、案外くるんだ。明日8時、家の前で集合な」
「だー!分かった、分かった、とりあえず明日8時ね」

パチン、と圭の両頬を包む。圭が智将になってから初めてやったかも。
目をぱちくりさせてる圭を見てふ、と笑いが漏れる、アホっぽい。

「私はね、圭と葉流火ならどんだけ弱音の吐口にされようが当たられようが構わない。だけど距離を置かれるのが、辛い」
「……」
「話すことで軽くなるなら何回でも聞く、特に圭なんて隣なんだから」
「……ああ」
「とりあえず、今まで通り接します。それ以外は聞かなかったことにします」
「そうか」

圭の頬に添えた手に圭の手が重なる。そのまま圭の顔が横を向き、手のひらに唇が当たる。
咄嗟に両手をあげて、何もしてませんアピール。今のむしろ圭がしたけど。

「圭!おやすみ!また!明日!」
「ふ、くく……ああ、また明日な」

半ば言い逃げ。圭ママにはタオル明日返すね!と言い逃げをして帰った。
近寄るな、って言ったのに?!好きだから?!調子狂うから?!近寄んなって言った?!お前?!何様!?
色んな感情が溢れて筋トレしてたら、めちゃくちゃ汗かいた。

私が調子、狂う!



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