「うう……」
久々に、痛い生理。波があるとはいえ一瞬息を止めるほどの痛みが襲う。
授業中にも関わらず蹲る、後ろからの視線を浴びて気が散る。
「どうしたんですか」
流石に気になったのか千早が小声で声をかけてくれるも軽く手をあげるだけで必死。
あ、波が落ち着きそう。
「ごめん、生理で、死にそう」
「生理……す、すみません、聞いてしまって」
「お前いつも重いのか」
「はー、ううん全然軽い、んだけど3回に1回くらいやばいのが来る」
はた、と気づく。露骨に動揺する千早と比べて藤堂は落ち着いている、頭の中をほじくってそういえばお姉さんいたな、と合致。
「薬とかねーのかよ」
「いつも痛くならないから無い、大丈夫じっとしてれば収まるから……ててて」
と言いつつ波がまた来る、後ろで千早と藤堂が「詳しいんですね」「姉貴がな」「ああ」と会話してるのを頭の隅で聞く。
「保健室行った方がいいんじゃねえか」
「抜けたくない……」
「難儀ですね、ジャケット要りますか」
「要る……」
「俺のもやるよ」
「神に感謝……」
借りたものを腰に巻き付けるのもな、と思い自分のジャケットを前から腰に巻く。
千早のジャケットに袖を通してその上から藤堂のジャケットを掛ける、なんだかもこもこしている気もする。
「着膨れしましたね」
「お、喜べ次自習だってよ」
「このまま寝てた方がいいんじゃ無いですか」
「うん……ちょっと寝るわ……」
「俺も寝るわ」
「君はいつも寝てるでしょ」
机に頭を預け瞼を閉じる、こういう時の睡眠って失神に近くない?と内心思っている。
次は昼休みだから、少し前に起きたいな。
***
「……ん…………はー……寝た」
「身動きしねえから死んだかと思った」
「実際死んだように寝てましたからねえ」
「……昼休みに薬取りに行こうかな」
「要くんの家のお隣でしたっけ」
「そんならすぐ行けるわな」
「部活もあるしなぁ」
「1人で行けるんですか?」
「寝たから余裕、あと5分か……」
ぐぐぐ、と体を伸ばす。ほぼ睡眠時間に充てたのでちょっと腹部の調子は良くなってきた。
授業終了のチャイムがなる、鞄から家の鍵と財布、携帯だけを取り出して立ち上がる、が忘れてた。
「ごめん、藤堂と千早。ジャケットありがとう」
「おー」
「お気になさらず」
自分のジャケットを着直してポケットに荷物を突っ込む。
じゃ行ってくるわと千早と藤堂に手を挙げて扉に向かう、が人にぶつかってしまった。
「っ、すみません」
「梨沙」
「なんだ、葉流火か……どったの」
「ご飯、圭が一緒に屋上でって」
「ごめん、ちょっと一回家に帰ろうと思って」
「?どうして」
「薬取りに行こうと思って、先に屋上行ってていいよ」
「俺も行く」
「行かんでいい」
「行く」
「藤堂ー、千早ー助けて〜」
「頑張ってください」
「一緒に行ってくりゃいいだろ」
「育児放棄だ……」
千早と藤堂が扉付近にやってくる。とりあえず葉流火も含め圭たちのクラスに行けば圭が手を大ぶりしていた。
「ごめん圭、ヤマ。ちょっと一回家帰るから葉流火を連れて屋上行っててくんない?」
「え、何どったの」
「薬取り行く」
「え、大丈夫網代さん」
「うん、さっき自習だったから千早と藤堂のジャケット借りて爆睡してた」
「俺も行く」
「だから飯食えって」
「行く」
「強情だから早く連れてって!藤堂!千早!」
こうもしているうちに時間は経っていく、私は藤堂を無理矢理引っ張り葉流火を押し付け走って逃げた、ちょっと腹痛え〜!
***
往復10分、マジで助かる。薬だけを掻っ攫って飲み、再び出発。
ついでになんか買おうかな、とコンビニに寄った。
千早と藤堂にはちょっと迷惑かけたしな、スポドリとかでいいだろ。
「世話かけましたー」
「大丈夫かよ」
「薬飲んだ。藤堂と千早、ありがとね」
「そんなわざわざ、良いんですよ別に。ジャケット貸しただけですから」
「これからも世話かけます、ってことで」
「……しゃーねえな、前払いな」
みんなが集まる屋上へ、藤堂と千早にスポドリを押し付けた。最初は遠慮していたがこれからも、と告げると受け取ってくれた。
てかずっと、圭が見てくる。
「梨沙ちゃん」
「何」
「ほら!おいで!」
両手を思い切り開く、と同時に私の顔が歪む。多分同じように藤堂も千早も歪めている。
「行かないよ」
「なんで?!俺の腕の中暖かいよ!!」
「薬飲んだし、なんだったら藤堂と千早のジャケット借り放題なので」
「俺も貸せる」
「同じクラスじゃないから」
「……」
「ずるいずるい!なんで葵ちゃんと瞬ちゃんばっかり!」
「まぁ、同じクラスですし?後ろの席ですし?」
「ギー!!!!」
喚く、圭。ゴミを見つめるような目で見る私と藤堂と千早。
すすす、と移動してヤマと藤堂の間に座る。ここが一番落ち着くのだ。
「網代さん、ご飯は食べた?」
「食欲なくてウィダー飲む」
「ぶっ倒れんぞ」
「痩せるかも」
「不健康な痩せ方は良く無いよね」
「ヤマが言うなら食べる」
「ヤマ、頼むぜ。この幼馴染たちを握れるのはお前だ」
失礼な。